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August 24, 2013 やぁ、諸君。私がプッシー大尉だ。 私は基本的に、子どもと接する場合であっても、大人に対してそうするのと同様に、ひとりの人間としてその人格を尊重しつつ接するように心がけるタイプの人間だ。 その代わり、大人に対する敬意に欠けていたり公共マナーを身につけてないやつは、たとえ子どもでも容赦はしない。 その結果、その場ではその子どもが恐怖に怯えて心に傷を負うことになっても、彼(あるいは彼女)にとってその経験は必ずや生きていくうえでの財産となるだろう。もしそうならなかったら?別にそれでも構わない。そいつがなぜそんなひどい目に合わされたのかをその場で理解できなかった場合、その後のそいつの人生は概ねろくなものにならないだろうが、私には関わりのない事だ。 子どもの人格を尊重するという事と、子どもを傷つけまいとして公共の場での無作法もただ見守る事しか出来ないような幼稚な親のやっている事とは根本的に質の異なるものだ。 私は「なまはげ館」を訪問してそのような事を考えた。 「なまはげ」のコンセプトは実にシンプルだ。 夜中に突然、我が家を訪れた異様な風体の妖怪が、周囲の大人や自然に対する敬意に欠ける子どもは有無を言わせず裏山に連れ去るぞ、と子どもたちに恐怖を植え付ける事で、子どもたちはそれから謙虚に生きる事を覚え、宿題をちゃんとやったり出された食事を残さず食べようと努力する。 実際にその伝統行事の様子を撮影した映像は実に愉快だ。妖怪役の村人の迫真の演技を前に、子どもたちは本気で恐れおののき逃げ惑い、妖怪役の村人に許しを請う。本当に裏山に連れ去られんばかりに妖怪役の村人に抱え上げられた少年が、ただ硬直した表情で必死に柱に掴まって渾身の抵抗を試みるシーンを見た私は、周りでそれを見ていた他の観光客と一緒に大笑いした。 とらえ方によっては実に暴力的な手段による「教育」にほかならないが、どこかの人権団体の代表がそんなたわ言を主張しても誰も耳を貸さないだろうし、また貸すべきでない。子どもの分際で調子に乗るなよ、というその種の警告は「その子どもたちのために」誰かによって為されなければならないし、私たちもまたそのようにして育てられたはずだ。 一通り「なまはげ館」を見て回り、古き良き伝統行事に関する私なりの考察を加えたところで、隣接する「男鹿真山伝承館」に移動する。そこでは概ね三〇分単位で、実際にその地域で現在も行われている「なまはげ」の様子を再現するショーが催されている。 まずスタッフによるショーの概要の説明があり、次に家の主人役の初老の男性が場を和ませるトークをする。 それから実際にその伝統行事が執り行われるときと同様、まず「なまはげ」グループの男(人間)が挨拶に訪問し、家の主人の許しが出たところで、いよいよヤツらが登場する。 浪曲師顔負けのハスキーな節回しには、真摯な稽古の痕跡が伺える。 その後、家の主に酒を勧められて落ち着きを取り戻した「なまはげ」と家の主との間でコントのようなやり取りが繰り広げられる。つまり「なまはげ」が持ち歩いている謎の「台帳」には、その家の子どもや嫁の悪行の全てがしたためてあり、「なまはげ」がそれを読み上げるごとに家の主が釈明をしながら酒を勧めるというシナリオだ。 彼らの会話はその界隈の訛りのまま行われるので、私は字幕なしで洋画を見ているような気分になったが、周りの観光客は大喜びだった。 ショーが終わったので、私はそこから歩いて五分ほどの距離にある「真山神社」を訪問することにする。 「真山神社」は「なまはげ」の黒幕とも言うべき神が祀られているとされる歴史的宗教施設だ。駐車場にあった案内図によれば、村の家々を荒らし回った「なまはげ」たちが最後に帰って行くとされる「本殿」まで 2.3KM とある。 ほう、私の足なら三〇分もかからずに着きそうじゃないか。 明日は鳥海山のハイキングが控えている。まぁその足馴らしにすらならないだろうが、毎年のように人里に乗り込んで来る「なまはげ」の住処にこちらから乗り込んでやるというのも面白い。 一時間後には戻って来る事になるだろうと踏んだ私は、水分すら持たずに手ぶらで本殿を目指して歩き始めた。 まず「拝殿」横の石段からスタートだ。 一般の観光客がそう思うかどうかはともかく、参道はよく手入れがされている。 前日の雨で所々ぬかるんでいて、サンダル履きの私を少々苛つかせたが、少なくとも道迷いの心配は皆無だ。 だが歩いても歩いても本殿らしきものは見えて来ない。 三〇分ほど歩いた頃に現れた標柱。 あれ!?まだ半分しか歩いてないって事か? 補給用の水分が全くないのは少々気になるが、そうは言っても、ここまで来ておいて引き返したりしたら、かなりマヌケだ。 どうやら街で 2km 歩くのと山道を 2km 歩くのとではわけが違うらしいという事実を学習してまたひとつ賢くなった私は、結局さらにニ〇分歩いて「本殿」に到着。 「本殿」二階からの展望。 「回転展望室」が特徴的な寒風山(中央)を見下ろす。 行けるものならその先にあると言う「本山」まで足を延ばそうかと思っていたが、「本殿」から先の道は草に覆われていてサンダル履きで行く気にはならずさっさと下山。 私がそれを見て思いつきで「本殿」まで乗り込む事にした案内図のもとに戻って来たのは、そこを出発してから一時間と四〇分後の事だった。 何か質問は? OK。諸君の健闘を祈る。 以上だ。 |
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