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December 2, 2017


やぁ、諸君。私がプッシー大尉だ。

トミーと雪の日光白根山へ。まともな登山は剱岳以来だから一年と二ヵ月ぶりだ。


もともとは磐梯山への山行を予定していたが、気象予報が芳しくないため二日前に計画変更。白根山は、以前から一度は登ってみたいと思っていた山だが、正規ルートとされる前白根経由のルートを辿った場合、無雪期であってもコースタイムが一〇時間は見込まれる手ごわい山だ。

日が短い時期だけに一七〇〇時には登山口まで戻って来たい。とは言っても、〇二〇〇時に起きてまで雪山に出かけるほど、私は(トミーと違って)ハイキングを生き甲斐としているわけでもない。私はコースタイムが五、六時間と見込まれる菅沼側から登頂するルートを辿る計画をトミーに通告した。


〇五三〇時に私の自宅前に駆け付けたトミーのRV車は、〇八三〇時には菅沼の登山口に到着。噂によると、この駐車場の利用料金は一日一,〇〇〇円で、ハイカーたちが下山して来るところを狙いすましたように、夕方になると徴収員が現れるらしい。

既に雪で覆われている駐車場でアイゼンを含む装備を整えたうえで、〇九〇〇時には行動を開始する。


トミーがチョイスした駐車場から五分ほど歩いたところに何台も止められているハイカーたちの車を見て、何だか損をした気分になる。





斜面に取っ付いてからしばらくは、明瞭なトレースがつけられた樹林帯歩きだ。





思えば雪が積もり始める時期の登山は、私にとって初めての経験だ。うっすらと雪に覆われた木々の佇まいが何とも言えず神々しい。





座禅山東面のトラバースに取り掛かる頃には青空も見えて来た。





一一〇〇時、弥陀ヶ池に到着。





記念撮影など済ませて一五分後に行動を再開する。


そこで現れた(運命の)案内板。





この案内板によれば、ここから山頂までは一時間だ。下山に二時間ばかりかかるとして、一時間の休憩を挟んだとしても一五〇〇時過ぎにはハイキングが終了してしまう。少し早くないか?

もともとトミーは、五色沼に向かう周回ルートに興味を示していた。事前に収集した情報によれば五色沼周辺は雪が沈むとやらで、私にスノーシューを持参するように言いつけたのもトミーだ。そして案内板に書かれている情報に従えば、周回ルートを辿ることで上手い具合に一時間ほど時間が上乗せできる。

二人の意見が一致するのは火を見るより明らかだった。私たちは分岐に差し掛かると、意気揚々と左手のルートに進入した。


弥陀ヶ池から五色沼へと向かう場合、前方に前白根を望みながら、まずはなだらかな斜面を下っていくことになる。その展望が実に素晴らしい。





その後、急な斜面を下ると眼前に五色沼。





急斜面を下り終えたところで、トミーが事前に収集した情報に執着してワカンに履き替えたいなどと言い出す。私はアイゼンを外してスノーシューに履き替えたところで、いずれまたアイゼンに履き替えなければならないのだが、トミーのワカンはアイゼンを履いたまま使える優れものらしい。

正直なところ、膝上まで沈んでしまうような事でもない限り、私にとってラッセルそのものは大した障害でもない。私はワカンを着けるためにその場に留まるトミーを置き去りにして先に沼まで下り、避難小屋を探すことにした。


気象予報によれば、気温は摂氏マイナス一〇度前後、風は高度二〇〇〇米地点で五〜一〇米/秒だが、三〇〇〇米地点では二〇米/秒とある。山頂でランチをとるのは少しばかりリスキーだ。そんなわけで、避難小屋でランチにしようと斜面の上から沼が見えて来たあたりからずっと探してはいたのだが、小屋は一向に見つからない。

沼に下り立つと、何人かのハイカーが思い思いのポイントで荷物を降ろして休憩している。私は一人のハイカーに近づいて避難小屋の在り処を聞き出すことにした。


私がチョイスしたハイカーは、三〇代かそこらと思しきよく日焼けした青年のハイカーだった。遠くから見ているうちは気づかなかったが、近づいて行って私が話しかけると振りむいたそのハイカーの左の鼻の穴からは大量の鼻水が垂れていた。何かの拍子に彼が空でも見上げることになったら、私はそのイモムシ大のジェル状の鼻水が、青年ハイカー氏の鼻の穴から下顎にかけてベッチョリと付着するシーンを目撃する羽目になっていただろう。

その鼻水がどんな末路を辿ることになるのか気が気でない私の様子などお構いなしに、青年ハイカーは爽やかな笑顔で避難小屋の在り処など「知らない」と答えた。だが青年ハイカー氏の意見によれば、どうやら避難小屋は沼の周辺ではなく、沼から山頂方面へと樹林帯を暫く歩いた先に建っているらしかった。

既に正午を過ぎている。私はどこにあるとも分からない小屋でのランチを諦め、沼の周囲で風が避けられる場所を適当に見つけてランチをとることにした。


結局、私が惨事に至る前に手ぬぐいで鼻水を拭き取った青年ハイカー氏に礼を言って別れ、風よけにちょうどいいちょっとした岩場を見つけて荷物を降ろした頃に、トミーは私が辿って来た道をてくてくと歩いて沼まで下りて来た。ワカンを着けるために、私よりもずいぶん遅れて沼に下りて来たトミーの足に着けられているのはアイゼンだけだった。

私がその事について問い質したときのトミーの回答に私は唖然とした。「いやぁ、ワカンの着け方を忘れちゃいました」


いつだったか、これから白馬大雪渓を登ろうというのに、登山口に着いてから「アイゼンを家に置いて来ちゃいました」などとトミーに言われて茫然とした事もあったが、とにかくわざわざ事前に収集した情報を真摯に受け止めて行動に移したトミーも、ついでにそんなトミーのご親切なアドバイスを愚かにも真に受けてスノーシューを持って来てしまった私も、結果的には一日じゅう無駄な荷物を運ばされただけだった。


さて、私のランチはもちろん、いつもの「熊本ラーメン」。





一二四五時には行動を開始する。


さて、例の案内板によれば、ここから一時間ほどで山頂に着くはずだ。まぁ、一四〇〇時に山頂に着いて、休憩時間を入れて三時間ほどで下山すればちょうどいい具合だろう。

後から振り返ってみれば、私の想定は全く甘かった。


一三〇〇時に避難小屋に到着。





この先の急登に備えてここでも休憩。


抜けるような青空と雪を被った木々のコントラストは、どれだけ眺めていても飽きない。





一三二〇時、行動再開。

ルートは南西方向へ伸びており、途中で直角に折れて北西へと向かう。樹林帯に入ると、やがて急斜面が姿を現す。


この辺りで六〇代かそこらの男女で構成されるパーティーとすれ違う。前を歩いていた私は不愛想に挨拶を交わしただけだったが、少し離れて歩いていた物好きなトミーは彼らに何か話しかけたらしい。

後で聞いたところでは、こんな時間に登り始めるなんて自殺行為だとか何とか、トミーはパーティーの爺さんにお小言を言われたとか。

実際、遅くとも一四三〇時には山頂に辿り着かないと下山完了前に日が暮れてしまいそうだ。例の案内板が正しければ、あと一時間で山頂に着けるはずなんだが・・・。


結論から言えば、例の案内板に書かれていたコースタイムは嘘だった。と言うよりも、所詮は夏山のコースタイムなんだから当てにした私たちがマヌケだったということか・・・。


この急斜面、見た目こそ今までに登って来た山々の斜面とそれほど違いがあるように思えなかったんだが、とにかくハードな斜面だった。私たちは変わり者だったと見えて、トレースは基本的に下りのものしか付いていないため歩幅が合わない。前を行く私は見当をつけてアイゼンで踏み込むのだが、結構な頻度でステップが崩れてズルズル滑る。

そうした悪条件のなか、途中、何も掴むものがない急斜面で右足のアイゼンが外れるトラブルにも見舞われながら、日没までのタイムリミットに急き立てられるようにひたすら登る。


一四四五時。おぉ、あそこまで登りきれば山頂か!?





登りきった後もさらに続く尾根道。





この状況で偽ピークは正直キツい・・・。


一五〇〇時。あそこに何か建ってるぜ。今度こそ山頂か!?





これはただの神社。





一五一五時、ようやく山頂に到着。





避難小屋から二時間(も)かけて辿り着いた山頂からの景色は絶景だった。

もちろん、最も目を引くのは中禅寺湖と男体山。





燧ヶ岳も見える。





五分ほど遅れて到着したトミーを急かして記念撮影などを手早く済ませたら、さっさと下山にとりかかる。


南側から山頂にアプローチしたわけだが、帰りは北へ向かって菅沼へと直接下るルートを辿らなければならない。問題は、一目見ただけでは、そのルートがどこにあるのか皆目分からないことだった・・・。

トミーがご自慢のGPSを取り出して何やら調べた挙句に「こっちです!」と自信満々に私を招き入れたルートは、岩場伝いに両手両足を駆使して下って行く事を強いられるなかなかの難ルートだったが、しばらく行ったところでトレースがぷっつり途絶えて偽ルートであることが判明した。最終的に、それとは反対側の谷を隔てた向こう側に正規ルートがあると気づいた私が、半ば強引に岩場を谷へと下って正規ルートに復帰するまで、優に三〇分は時間を浪費する羽目に。

いやぁ、ヘッドライトを持って来ていて本当によかった。人間、諦めが肝心だ。


一六四五時。大慌てで斜面を下る私たちを静かに見守る月。





一六五〇時、弥陀ヶ池に到着。各自ヘッドライトを装着して暗闇の山行に備える。


結論から言えば、むしろ雪山に関しては夏山よりもはっきりとトレースが認識できるので、ヘッドライトさえあれば、さほど苦労せずに山行を続けられることが分かった。今回に関しては「月明り」も私たちを救ったひとつの要素ではあった。


一八二〇時、夜陰に紛れるかのように駐車場に無事到着。さすがにこの時間まで一,〇〇〇円ぽっきりの駐車料金を徴収するために粘っている徴収員はいなかった。


何か質問は? OK。諸君の健闘を祈る。

以上だ。



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