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June 1, 2015


やぁ、諸君。私がプッシー大尉だ。

魚影の濃さは折り紙つきと噂の南伊豆へ。今回は日曜日の夕方と月曜日の朝方のダブルヘッダーだ。


本命のポイントは下田港の犬走島堤防だが、休日は混んでるにちがいない。そんなわけでもともと初日は大瀬港まで足を延ばすプランを組んでいた私だったが、日曜日の予報は雨。

意外と根性のない釣り人が多くて犬走島堤防も空いてるかもしれないと考えた私は、現地の様子を見て何事も臨機応変に判断することにする。


お供はもう何度も共に釣行している男が一名、以前、三崎港(花暮岸壁)でいきなりメバルを四尾連続で釣り上げた功績に敬意を表し、まぁここでは「メバルマン」とでもよぶことにしよう。

東京から三時間ほどで下田入りし、まずは二人して「上の山亭」で腹ごしらえ。


私のオーダーは「刺身定食(一,七六〇円)」。





値段は少々はるが、そんなことはすぐに忘れてしまうくらい弾力のある風味豊かな地魚の刺身を楽しめる逸品だ。


一緒に運ばれて来た貝汁からはおよそ食用とは思えない貝がぞろぞろ顔を出す。





まぁ地元でしかお目にかかれないレアーな郷土料理ってことにしておこう。


ついでに通り向かいの、東京側から見て一〇〇米かそこら手前には終日営業の釣具屋まであって、本当に釣り人にとってはいたれり尽くせりな食堂だ。


その釣具屋は昼間の二時間ほどは店を閉めるらしいので二四時間営業というわけではないが、まぁその時間帯に何かを調達する必要に迫られたとしても、近隣のほかの釣具屋は開いてるだろうから何の問題もない。

アオイソメを1パック(六〇〇円)だけ購入して、まずは犬走島堤防の偵察へと向かう。


一四〇〇時頃に現地に着いてみると、駐車場こそ一台分しか空きがなかったが(もちろん私が占有した)、釣り人は一〇組もいないようで、好きな釣り座で釣りが出来そうだ。そしてありがたいことに雨も降ってない。

大瀬港はまたの機会ということにして、私たちは二試合とも犬走島堤防で勝負することにした。


荷物を車のトランクから降ろしてキャリーカートに手際よく積みかえ、堤防入口へと向かう。入口へは貸竿屋の敷地らしきところを通り抜けて行かなければならないが、そこには人相の悪いとは言わないまでも、一見したところ決して友好的には見えない地元の釣り人らしき人々がたむろしているので、初めてそこを訪問したよそ者の釣り人は少々近寄りがたい雰囲気を感じずにはいられないかもしれない。

だが、そこにたむろしていた人々はたぶん毎朝、堤防の清掃に取り組んでいる有志の人々だ。翌朝、私たちが釣りをしているときにも掃除がてら気さくに声をかけて来てくれた。釣り場の環境保全のための具体的な行動に取り組む彼らに対して感謝の念を抱きこそすれ、恐れる理由などどこにもない。


ところでこの堤防の手前側の舗装状態はまったくひどいものだった。凸凹どころか、先が鋭利にとがった石がむき出しになったまま敷き詰められている一帯があって、普通に歩いていく分には何も問題はないが、その一帯にカートを引いて足を踏み入れるにはそれなりの覚悟が必要だ。

カートを引いて行くのが大変だ、というだけでなくて、カートの車輪がボロボロになってしまう、という意味で。


私が鋭意収集した情報によれば、中央付近の「くの字」に曲がる角のあたりが小メジナの宝庫らしい。私の数少ない経験から導き出されるセオリーのひとつに、小メジナがたむろする層のすぐ下の層には中メジナがいる、というものがある。

どうせ堤防釣りなんだから大メジナまで狙うのは現実的ではない。それにこういう地形のポイントは、アジやサバが回遊して来た場合、彼らだって通過せずにはいられないはずだ(そんなものは最後まで一匹たりとも現れなかったが)。


残念ながら角には先客がいたので、私たちはいったんそのすぐ手前側に釣り座を陣取ることにした。


ゴング前ののどかな風景。





サビキ仕掛けやチョイ投げで数々の小魚を仕留めて来た「メバルマン」だったが、今回はウキ釣りをやりたいので教えてくれ、と言う。私だって新米の釣り人なんだから、私が彼にそれを教えたところで小学校の二年生が一年生に算数の勉強を教えるようなものだと思うが、まぁウキ釣りにせよ、そもそも魚釣りという遊び自体にせよ、いざ初めて取り組むとなると少々ハードルが高く感じられるのは間違いない。

身近に経験者がいれば「教えてくれ」と申し出る気持ちはよくわかるってもんだ。


さて、そんな「メバルマン」にはしばらくシロギス狙いでチョイ投げでもやっててもらうことにして、私は特製のスペシャルブレンドコマセの製造に取り掛かる。


私が現地に持ち込んだのは解凍済みのオキアミブロックのLサイズが1ブロック、同じくアミエビ1ブロック、そして網代港で大活躍したグレ(メジナ)用集魚剤だ。

私のような大物狙いの釣り人にはLサイズのオキアミこそふさわしい。こいつは付けエサにも使用する。アミエビと集魚剤の放つ耐え難い悪臭は、魚たちにとってはその欲望を刺激する魅惑の香りとなって彼らを引き寄せる。どんな大物も、この私のブレンドしたスペシャルコマセの誘惑に抗うことなんてできはしないってわけだ。そうだろ?


ところでひょんな事から容量35リットルの「トランク大将」を所有する羽目になった私は今回も冷蔵設備係だったわけだが、あろうことか自宅を出発するときに冷凍庫でキンキンに凍らせておいた水入りペットボトルを「トランク大将」に詰め忘れるという初歩的なミスをしでかしてしまった事が現場で発覚したので、私は釣り場から最も近いローソンで氷を調達するために往復三〇分も歩かされる羽目になってしまった。何で車で行かないのかって?私が空けた駐車場のスペースに他の車が入ってしまったら私の車を置く場所がなくなって釣りどころではなくなってしまうからだ!


ローソンから汗だくになって釣り座に戻った私がようやく仕掛けまで完成させ、いつも愛用する一.五号の磯竿を片手に水辺に佇むことが出来たころには、もう一六〇〇時を少し過ぎていた。満潮まであとわずか三〇分。かなり時間を無駄にしちまったようだ。

ところで「メバルマン」は未だに小ハゼ一匹釣り上げてない。角にいた青年は帰ってしまったので、私たちはそそくさと移動し、当初の計画通り、とても潮通しのよさげな一級ポイントを確保した。


早速「スペシャルブレンド」を海中に投じてみるが、たちどころに魚という魚が先を争うように集まって来るにちがいない、という私の予想とは裏腹に何も起こらない。

うーむ、何かいやな予感がするな・・・。


堤防先端の方で釣っていた、いかにも釣りばかりして生きて来たようなオーラを漂わせる初老の釣り人が、私たちの隣に移動して来て私たちに声をかけながら釣り座をかまえた。

彼はカゴ釣りをやるようだ。私たちの撒いたコマセと彼がカゴから振り出すコマセの相乗効果で場をつくろうとでも思ったのだろうか。


まぁ新米釣り師の私としては偉大なる大ベテラン師の考え付いた戦略をいちいち詮索するよりも、ひとつの事実だけをシンプルに聞いてみたい。今日は何か釣れてるんだろうか?

私がその質問を投げかけると、ベテラン氏は「何も釣れない」とぼやいた。彼は本当に心からそう思ってる様子で私に言った。「本当に参ったよ」

げー、やっぱりだ。その答えを聞いただけで私もまったく同じ気分だぜ!


とりあえず私は「メバルマン」にふかせ釣りのセオリーを一通りレクチャーし、あとはやりながら覚えてくれ、と言って自分の釣りにとりかかることにする。

ウキは5B、ハリス1.5号に7号のグレ針付き、サルカンのあたりに2Bのガン玉をひとつだけ打って竿1本分ほどにタナをとる。ウキと錘がアンバランスなのは、仕掛けの馴染みに何か問題があった場合は、いちいちウキをいじらずにガン玉を付け足すだけで解決するためだ。

金をケチってブロックのオキアミを付けエサにも回すことにした私だったが、どうも今回入手したブロックのオキアミは身がドロドロしていて、細心の注意を払って針につけてもすぐに身が崩れてしまう。


釣り始めて一〇分も経ってなかったと思うが、何度か海中に投じてアタリのないまま引き上げてみるとオキアミが姿を消しているのを見て、やっぱり付けエサ用のオキアミを別に買うべきだったか、と反省をしていた頃に、突然私の竿がぐにゃりと曲がった!

率直に言って、これまでのつたないキャリアで味わったもののなかでは最強の引きだ。このポイントは小メジナのメッカとは聞いていたが、底の方に中メジナどころかジャンボメジナが潜んでやがったってことか!?

大洗の釣侍で「一番安い」という理由でチョイスして以来、苦楽を共にして来た1.5号の磯竿に絶対的な信頼を寄せながら、私は冷静に竿を立てて引きに耐えつつ、相手が力を抜いた瞬間に手早くリールを巻き上げる。

海中で暴れ回る魚の影が見えて来た。メジナじゃないな。背びれの特徴といい全体的なシルエットといい、どうもクロダイのような気がする。 いつの間にか現れて私の竿のしなり具合に興味を持った観光客らしき数人も私のすぐ後ろで固唾をのんでこの勝負の行方を見守っている。くっくっくっ、こいつは何があっても頂くしかないぜ。

私はちょっと出来る釣り人のふりをして、「見ろよ!クロダイがかかってるぜ!」なんて歓声をあげるようなみっともない真似をすることなく、つとめて冷静に振る舞いながら(まぁ周りの人々にそう見えていたのかどうかは私の知るところではないが)、セオリー通りの手順でリールを巻き上げた。


そしてこの勝負に決着をつける最終段階へと入るときが来るまでに、そう時間はかからなかった。さぁ、とっとと諦めて大人しく海面から姿を現すんだ。そしてその神々しい銀鱗をまとった王者の風格すら漂う魚体をこの目で拝ませてもらおうか。

こんなに早く結果が出るとは思わなかったが、ポイントの選定、タックルの選定、用意したエサと戦略、すべてが私の計算通りだったってわけだ。ついに海面から姿を現したのが四〇センチはあろうかという無駄に巨大な「アイゴ」だったこと以外は・・・。


その失望感は釣り人でなければ分からないだろう。例えて言うならば、壇蜜似の美女とようやくベッドインできて下着を脱がせてみたらペニスがついていたようなものだ。一気に気分のしらけた私は舌打ちをしてからそのアイゴをどう処理するかを考える。

そのまま力まかせに抜きあげるのが最もシンプルな解決法だが、下手をすると仕掛けをダメにするか、最悪の場合、空中から落下して来たヤツの毒針がこの世で最も不運なギャラリーのひとりの目にでも突き刺さっちまうかもしれない。


仕方がないので抜きあげられたヤツが観念して海面すれすれで大人しく宙ぶらりんになっているのを確認してから、左手で竿を保持したまま少し離れたところに放置してあったタモ網を拾おうとそっちに移動して右手をのばしながら私がしゃがんだとき、ヤツの高度も一緒に下がって一瞬ヤツが水の中に戻っちまった。すると待ってましたとばかりに息を吹き返したヤツが最後の力を振り絞って逃亡を試みてくれたおかげでハリスがプツンと切れて、人騒がせなアイゴ氏はあたふたと我が家へ帰って行った。


後で恥をかかないためにも、その目で確かめるまでは「クロダイだ!」などとはしゃいではならない、という事以外にもこの一件からは様々な教訓を得ることができる。たまたま相手が「アイゴ」だったからよかったようなものの、今後は不測の事態に備えてタモ網は常に迅速に出動させられる状態にしておかなければならないこと、一度海面から抜きあげた獲物は二度と海中に戻してはならない、ということ、そして私のタックルなら、あのサイズ、あの強さの獲物相手でも十分に渡り合えるということも。


そんな出来事があって一〇分も経たないうちに、今度は「メバルマン」が仕掛けを全部盗まれた、と騒ぎ出した。見てみると「メバルマン」の竿には道糸しか残ってなくて、海中に目をやると海面下一米くらいを「メバルマン」のオレンジ色のウキが気持ちよさそうにすいすい泳いでいる。「メバルマン」は初めて経験するウキ釣りのために、道糸に直接結び付けるだけで仕掛けが完成する「ウキ釣りセット」を使っていたが、そいつにかかった(「メバルマン」いわく)「大物」が、結び目から引きちぎって仕掛けを全部持って行ってしまったらしい。

はじめは何が起こったのかよく分かってなかった「メバルマン」だったが、次第に事態を飲み込んで、ウキ釣りの面白さに目覚めてしまったようだ。彼はそれとなくウキ釣りの仕掛けを−しかも彼が持参した「初心者セット」よりもっと頑丈なやつを−私に作り直してもらいたそうにしていたが、それは私に結構な時間を浪費させる要求なので、私は様々な理由をつけてそいつを諦めるように言い含め、今日のところは私の釣りが終わるまで「チョイ投げ」にでも興じてもらうことにした。


結局、私にも「メバルマン」にも、ついでに隣の大ベテランにも、それ以来、小魚一匹釣れない状況に業を煮やした私は、エギング用の仕掛けを手早く用意して、堤防中を練り歩いてみることにした。

私が手にしたのは上州屋でエギング入門者用として売り出されていたセットに含まれていた七フィートほどのロッドと、ナイロン3号ラインを巻いたダイワの2500番の組み合わせだ。入門者用セットはもともとPEラインを巻いたリールとのセットだったが、一度試してみたときに糸がらみばかり起こって釣りにならなかったのでPEラインはクビにした。


エギはクリアな緑色をチョイスした。オレンジやピンクが定番と言われているので、その裏を行こうってわけだ。ついでにしゃくりでアピールする釣法も、ナイロンラインではさほど効果を得られないであろうことも織り込み済みだ。

私のようなひよっ子が今までにこの釣り場を訪れた何十、何百という猛者たちと同じ戦略で臨んだところで、まず獲物を手にすることは出来ないだろう。そう考えた私は、あえてエビの形をした小魚を演出して、スローリトリーブ(って言うんだろ?)で、イカがいるなら多分そこに隠れているであろう海底に生い茂る海藻すれすれにそいつを泳がせる作戦に出た。新米は新米なりに頭を使わなければ。


もっとも私だっていきなり今の自分のスキルでイカが釣れると思い込むほど図々しい入門者ではない。今日のところはナイロンラインなら何度キャストしても糸がらみしないことや、私の採用したスタイルでエギをどれくらい飛ばせるのか、あるいは私の操作に連動するエギのアクションを実地確認できればそれでいい、と思っていた私は、ひととおり検証結果を手にして目的を果たし、それから足元をネンブツダイらしき群れが泳いでいるのを見つけて、ボートから海中に足を垂らしてぶらぶらさせている無防備な人間に不気味に近づくジョーズよろしく私のエギをこっそりそのネンブツダイの群れに近づけてみたら何が起こるだろう、と、暇潰しに五〇米ほど沖合から泳いできた私のエギを操作してそーっと群れの方へと寄せてみた。

そしてまさに彼らの下方から私のエギがネンブツダイたちに襲いかかろうとしたその瞬間、何者かが私のエギに襲いかかってロッドをぐにゃりと曲げたので私は思わず罵り声をあげた!


くそっ!アイゴといい「メバルマン」の仕掛けを持って行っちまったやつと言い、やけに大物ばかり掛かりやがる釣り場だな。そして今度のやつもさっきのアイゴに負けず劣らず強烈な引きだ。しかし今度ばかりは相手の正体がまるで分からない。何だってイカを釣るために流通してるエギにこんな屈強な怪物が飛びかかって来やがったんだ?

わけも分からず混乱したまま、とは言え釣り人としての本能にまかせて竿を立てつつ引きに耐え、それから相手の隙をついてリールを巻きにかかる。やがてやや濁った海面から腹が白くて平べったい「何者か」が姿を現した。何だ?エイか?だとしたらまた毒針持ちの嫌われ者じゃないか。

海面でのたうち回って最後の抵抗を試みるそいつのサイズは、ぱっと見たところ三〇センチかそこらのようだ。さっきのアイゴよりもやや小ぶりだが、何だかこいつの方がよりパワフルに感じられる。そもそもさっきとはタックルのポテンシャルがまるで違うこともあって、こちとら防戦一方だ。いやいや、そんなことより、このままだとマジでロッドが折れちまいそうだ。


そんなときはどうするんだ?あぁ、一旦ドラグを緩めて長期戦に持ち込むんだっけ?聞きかじった程度の中途半端な知識をもとに一番バカなチョイスをした私の手元がすっと軽くなった。ラインが緩んで獲物に掛かっていた針が抜けてしまったようだ。

エギを回収してみるとカンナの針が一本ひん曲がっていた。くそっ!しっかり針掛かりしてやがったんだ。海面までは巻き上げたんだから、うまくやってれば勝てた勝負だったに違いない。


すぐ後ろで釣っていた別のベテラン師に「今のは何だったんだ?」と聞かれて正直に分からないと答えながら、両翼をパタパタさせるのではなく全身でもんどり打って抵抗していたその姿、長いしっぽが見えなかったこと、そしてエギに襲いかかったその食性から、あれは沖から海底近くを私がゆっくり引いて来たエギに狙いをつけて追いかけて来たヒラメだったのではないか、と私は思った。釣り上げていたら大金星だったってのに、まったく何てこった。


だがこの一件から私が得た教訓も貴重なものばかりだ。まず、軽い気持ちでランガンするにせよ、タモ網はちゃんと持ち歩くべきだった。ファイト中はそもそもタモ網を使うという発想すら頭に浮かばなかったが、それはただ単に私の経験不足に起因する珍事なのであって次からそんな事はありえない。エギにヒラメ(と思われる生物)が飛び掛かるなんてたしかに事故のようなものだ。よろしい、ではイカが掛かってたとしたら?やっぱりタモ網は必要だったじゃないか。


それに私は率直に言ってこの出来事を経験するまで、ルアーという名前のオモチャに魚が食いつくという事態を実際に私の身の回りで起こりうるイベントとして認識していなかった。ルアー釣りとは何か特殊な技術を持っている一部の名人だけが楽しむことのできる、私には縁のない高貴なスポーツだと思っていたが、何だ、私のようなヘボルアーマンのルアーにだって、食いつく魚はちゃんといるじゃないか。


日も暮れてしまい、結局、下田くんだりまで乗り込んで来ておきながら、まさかの「ボーズ」で釣り場を後にした私たちが向かったのは「魚河岸」。


金目煮付定食。一,七〇〇円。絶品。





ただ「メバルマン」がオーダーした刺身定食から分けてもらったサバを一切れ口にして私は一抹の不安を覚えた。率直に言って鮮度が悪いとしか思えない。数時間後にじんましんの出た全身を掻きむしりながら便所で白目を剥いてうめき声をあげる羽目にならなければいいが・・・。だいたい煮付けだと刺身と違って魚の質は悪くても煮汁の味付けでごまかせちまうからな。

いや、まぁそれでも煮付定食の方は絶品だったと思う(結局、恐れていたような症状は発症しなかった)。


安宿に一泊して〇三〇〇時には起床し、「メバルマン」がなくしてしまったのと同じようなインスタントなウキ仕掛けがあるかもしれない、と例の釣具屋に立ち寄ってみたが、そんな都合のいい仕掛けは置いてなくて、仕方がないので私が仕掛けを作ってやることにして、それはそうと彼の腕を信頼してないわけではないが一応保険代わりに「ウキ止めゴム(ウキの紛失防止用)」を入手してから現地へと向かう。


空の白んだ〇四時三〇分頃に現地到着。昨日にもまして釣り場は閑散としている。


性懲りもなく昨日と同じ「く」の字のコーナーを占拠して、「メバルマン」の仕掛けを作り始めたのだが、昨日とは打って変って強風が吹き付けるので何とも仕掛けが作り辛い。

結局、私が自分の仕掛けも準備して釣りを開始したのは〇六〇〇時少し前のことだった。いったい何だって私はいつもいつもスタートの段取りがこうも悪いんだ?


昨日使い切れなかった分に余っていた集魚剤と海水を加えてかさ増ししたコマセを海中に撒く。相変わらず魚の影は見えない。まぁコマセは辛抱強く撒き続けることにこそ意味があるって何かのガイドブックにも書いてあったっけ。


たぶん私が釣りを開始して五分も経ってなかったと思うが、昨日と同様に、突然、大洗の釣侍で「一番安い」という理由でチョイスして以来、苦楽を共にして来た私の1.5号の磯竿がぐにゃりと曲がった!うへー、今度は何だ!?


いつもの手順でクールに巻き上げた仕掛けに掛かっていたのは巨大なカワハギだ。くそっ!さては、昨日さんざん私のオキアミを人知れず食い逃げしてやがったのはお前だな?

昨日の「アイゴ先生」が教えてくれた教訓を活かすシーンが早くもやって来たってわけだ。私は今度こそ獲物を宙に浮かせたまま、すぐ手元に置いてあったタモ網をスムーズに手に取り海面へとのばす。だが腹立たしいことに「三浦フィッシングセンター」で思いつきで購入したその安物のタモ網は微妙に長さが足りない。

「メバルマン」にタモ網を渡して協力を依頼してみたが、お互い初めての経験だ。ちっとも息が合ってないのでその連携作業は全くうまくいかない。まだ自分でやった方がましだと判断した私は再度タモ網を手にし、とにかくカワハギを二度と海面以下の高さに下げないように細心の注意を払いながら、最終的にようやくそいつの捕獲に成功した。


「アイゴ先生」に感謝をしつつ、無事、手中に収めた三〇センチのジャンボカワハギ。





もちろんそいつは私が帰宅してから、呑み屋で注文したら一〇人前はくだらない量の刺身と、まる一匹分の肝に姿を変えたわけだが(いったい市価にするといくらに相当するんだろうか)、いや、そりゃぁもう美味かったの何のって。


「ランカーサイズ」の獲物を一枚手にして十分に満足し、今日はもうそれ以上頑張らないことにした私とは対照的に、目の前で「ウキ釣り」によって大物が釣り上げられる情景を目の当たりにした「メバルマン」の方は俄然やる気が出て来たようだ。そしておあつらえ向きに、二〇分ほどしつこくコマセを撒いているうちに、事前に入手していた情報通り、そのポイントに「小メジナ」の群れが現れた。

それからは「メバルマン」の独壇場だったと言っても言い過ぎではないだろう。一〇〜一五センチほどの小メジナをあれよあれよと釣り上げて行く。私は二、三枚釣ったところで飽きてしまったが、「メバルマン」はそのうち自分の気に入らないサイズのやつは一丁前にリリースなどしながら、初めての「ウキ釣り」を存分に楽しんだ。


結局、「小メジナ」が群れる層の下の層には「中メジナ」がいる、という私の当ては外れて、上から下まですべて「小メジナ」しかいないと判断した私は、今日もまた素晴らしい仕事をしてくれた磯竿を早々に仕舞って、昨日ほとんど余ってしまったので海水を少々まぶしておいたら未だにうねうね元気に動いているアオイソメでチョイ投げに励んでみることにした。

乙浜漁港では四号のナイロンライン直結で一〇号の天秤を投げてみたが、ラインの強度には何の問題もなさそうだったので、今回は三号のラインで一〇号の天秤を投げてみることにする。結論から言えば、その組み合わせでも強度に何の問題もないばかりか、飛距離も目測で二、三〇パーセントほどアップした。もっとも、そいつはただ単に乙浜では向かい風だったがこの釣り場では追い風だったからかもしれない。


ちなみにこの釣り場は乙浜港と違って根掛かりが多発するので一度投げたら置き竿にした方がよさそうだ。


釣れたのはやや小ぶりなメゴチ一匹。持ち帰って天ぷらにして、まぁまぁ美味。





帰り支度を始めた頃に私たちの様子を見に来た、これまたベテランの釣り人らしき人物の情報によれば、昨日も今日も海水温が下がっていて地元の釣り人たちはみな苦戦を強いられていたらしい。たしかに周りの釣り人で「これは」という獲物を釣り上げた幸運な人物を私は一人も見かけなかった(私が気付いてなかっただけかもしれないが)。

あぁ、分かっているとも。私の今日の戦果は「まぐれ」ってやつさ。だが間違いなく釣り人としての「経験値」はアップし、私は釣り人としてまた一段上のステージへと階段を登った。


昼前に釣り場を撤収し、下田を発つ前に最後に堪能した「ごろさや」の「地あじたたき&なめろう定食」。





まったくこのエリアは釣り物も素晴らしいがグルメも一級品ばかりじゃないか。私は初めて訪問した下田の街が大好きになった。


何か質問は? OK。諸君の健闘を祈る。

以上だ。






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