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September 23, 2014


やぁ、諸君。私がプッシー大尉だ。

例の釣り好き共 が江ノ島の大堤防でサバを大量に釣り上げたのでまた行くというので、もちろん私も飛び入り参加だ。私の狙いはもちろんアジ。似たようなものなんだからサバがいるならアジだってその辺をうようよ泳いでいるに違いない。江ノ島に辿り着いたのは昼過ぎ。


まずは釣り場に向かう途中の定食屋で腹ごしらえを済ませ、それから向かいの釣具屋で解凍を頼んでおいた「コマセアミ」を受け取りがてら、情報収集を行う。

私が、これから大堤防に行ってアジをどっさり釣ってやろうと思うんだ、と言ったら、店主は、世の中はそんなに甘くない、というような事をやんわりと諭すように言った。先日、那珂湊 で見かけたサビキ針にもアミエビをひっかける釣り方(あの漁師一家のオリジナルかと思っていたら「トリックサビキ」というよく知られた釣り方らしい)の話をすると、店主は、だったらこいつを一番下の針につけなさい、と言って、にょろにょろ動く虫エサをいくらか私にくれた。

つまり、上の層には海中に漂うプランクトンであるアミエビのついた針を、底層には従来そこに住みついている虫エサをつけた針を、それぞれ同時に送り込め、ってわけだ。誰が考えたのか知らないが、実に効率的で、かつ理に叶ったクレバーな仕掛けじゃないか!


今後どれだけ時が経とうとも、無知な私にそんな素敵な釣りの方法を教えてくれたばかりか、虫エサまでプレゼントしてくれたその親切な店主に対する私の感謝の気持ちが少しでも薄れる事はないだろう。ところで私は虫エサを針につける方法がわからなかったので、その日もらった虫エサは一匹も針に刺されることなく、私たちが釣り場を引き揚げるときに足元を泳ぐ魚たちの夕食に化けてしまったのはここだけの話だ。


店主に丁重に礼を言ってから釣具屋を後にし、一〇分ほど歩いて現地に到着。うへー、釣り人がいっぱいで私たちの入り込める隙間なんてどこにもないじゃないか!





手前で仕掛けの準備などしていると、港内側の中央付近で釣っていた先客が一人うまい具合にお帰りになり、私たちはその場所を占拠する事にした。釣具屋の店主は先端の方ほどいいポジションだと言っていたが、そんな贅沢を言ってはおれない。左隣で一人で釣りに励んでいた青年が少し場所を詰めてくれたので、私たちは礼を言ってからお邪魔をしてそれぞれスペースを確保し、三人並んで「サビキ釣り」を開始した。面倒くさいので二人は嫌がったが、私だけは手間を惜しまずサビキ針にも一本一本ちゃんとエサを引っ掛ける「トリックサビキ」に挑戦だ。


神は努力をした者をこそ成功にお導き下さる。最初に魚を釣り上げたのはもちろん私だった。銀色に輝く平べったい小魚で、少なくともアジやその近縁種ではなさそうだ。何だこいつは?


隣の青年(ここでは「ボラ紳士」と呼ぶことにしよう)が、それは「ヒイラギ」だ、と教えてくれた。ふ〜ん、初めて聞く名前だな。ところでここからがすごく重要なポイントなんだが、その「ヒイラギ」ってやつは食えるのかい?


丸揚げにして食べられます、と「ボラ紳士」は教えてくれた。「ボラ紳士」はポテトチップス一枚分にしかならない、という事実を付け加える事を忘れなかったが、そこは大して問題視するべきところじゃない。自分で釣った魚を「食ってみる」事を何より楽しみにしている私は大喜びで「ヒイラギ」を氷でよく冷えたクーラーボックスに放り込んだ。


次に私が釣り上げたのも「ヒイラギ」だったので、私は「ヒイラギ」という魚が大好きになった。もちろんそいつはベテランの釣り人たちにとっては何の価値もない、まったくもってこの世の中に存在してもしなくてもどちらでもいいような実にくだらない魚なのに違いない。だが私にとっては陸上に於ける釣りで初めて針をその口にひっかけて釣り上げる事のできた記念すべき魚たちだ。そして我が家に持ち帰ってから腸わたごと丸揚げにした「ヒイラギ」はたしかに美味だった。





同行する二人がただカゴに詰めたエサを海に撒くだけの時間を過ごすなか、またしても私の1.5号のピカピカの磯竿が、今度は少々力強く引き込まれた。うむ、この感じは 先月 釣り船で釣ったアジの引きと何だか似てるぞ!


期待に胸を躍らせ、歓喜の声をあげながらリールを巻く私の前に姿を現したのは、それを釣った誰もが怒りと落胆のあまり顔をしかめる釣り場の嫌われ者「ゴンズイ」。

しかも二匹も同時にかかってやがるじゃないか!





私のあげる悲鳴とも罵り声ともつかない声を聞いて同行の二人は大笑いだ。「ボラ紳士」も笑いを堪えるのに必死だったに違いない。

背びれと胸びれのトゲに触れないように「メゴチバサミ」と針外しを使って用心深く針を外し、丁重に海へとお帰り頂く。


続けて私が釣り上げたのはシマダイ(イシダイの幼魚)。げー、何だってこいつがサビキ釣りで釣れるんだ!?こいつらは海底とか岸壁にへばりついてる虫とか貝なんかを食って生きてるんじゃないのかい!?





そいつを自宅に持ち帰って調理をしているときに分かったことだが、そのシマダイの腹の中には、主に(私のような)ビギナーレベルの釣り人たちが散々海に撒き散らかしたのであろうアミエビがぎっしりと詰まっていた。つまりこのシマダイは、地道にこつこつとエサを探す努力を怠り、代わりに横着な飯の食い方を覚えて味をしめてしまったばっかりに、私のような新米の釣り人にいとも簡単に釣り上げられてしまったってわけだ。そうだろ?

ところで「小さなシマダイはリリースしてあげよう」と、どこかで釣り人に呼びかけていたような気がしたので、そうした方がいいだろうか?と「ボラ紳士」に相談してみると、そんな必要はないというご意見だったので、私は迷わずそのシマダイもクーラーボックスへ放り込んだ。


メンバーの一人も何匹か「ヒイラギ」を釣り上げ始めた頃に、私の1.5号のピカピカの磯竿がへし折れんばかりに強烈にしなったので、私は思わずうめき声をあげながら慌ててリールを巻きにかかった。


釣り人ならわかるだろうが、1.5号クラスの磯竿なんてとにかく柔らかくて、小さめの網カゴに八分目ほどコマセを詰めて持ち上げただけでも竿がブランブランと揺れてしまうほど頼りないものなので、私は早くも先週手に入れたばかりのこの竿は折れてしまうだろう、と腹をくくったのだが、隣で見ていた「ボラ紳士」が、大丈夫だからそのままリールを巻いてください、と私を勇気づけてくれたので、私は素直に言われたとおりにした。


釣り上げられたのは私が全く想定してなかった「メジナ」だ。ひゃー、たった二回目の堤防釣りで「メジナ」を釣り上げることができるなんて、全く何てこった!





ところで私たち三人と「ボラ紳士」以外の、その日その釣り場で思い思いに釣り糸を海に垂れていた大勢の釣り人たちは、私の見たところ、ろくに魚を釣り上げてなかったので、「メジナ」なんて正統派の獲物を釣り上げた私は少々その場の注目を集めてしまったようだった。知らない誰かが私ににこやかに話しかけて来たようだったが、私は針が何本もぶら下がるサビキ仕掛けにかかって暴れまわるメジナが、そいつが咥えてる以外の針をその辺に置いてあるいろんなもの−ビニールシートや水汲みバケツのロープや私の指(!)−に引っ掛けてくれたために、そいつを一本一本外して回る作業に大忙しで、私に話しかけて来た謎の人物などにかまってる余裕などなかったのはとても残念なことだった。


メジナを釣りあげたところで、私は例の釣具屋に追加の氷を買いに行くことにした。そして一〇分ほど歩いて、決して釣り場から近いとは言えないその釣具屋に到着するなり店主にメジナが釣れた事を報告し、それから私がそんな幸運に恵まれたのも全て店主の様々な心遣いのおかげだ、と丁重に礼を言った。店主はまたしても、メジナは刺身にすると美味いんだ、と、とてもためになる知識を私に伝授してくれた。

もっとも私の釣り上げたメジナは三枚におろしてみると思いのほか大して身が取れそうになかったので、フライにして食っちまったのはここだけの話だ。


釣り場に戻ってもう一匹釣り上げた、さっきのより少し大きめのシマダイが私のその日最後の獲物だった。まぁ二回目の堤防釣りにしては上出来だと言ってもいいだろう。





ところで「ボラ紳士」には何かと世話になったので、私たちは自分たちの飲み物やホットドッグを買って来たついでに「ボラ紳士」にもそれらを差し入れした。そして私たちが「ボラ紳士」と世間話をしていると、「ボラ紳士」が置き竿にしたまま放置していた竿が今にも海中に引きずり込まれそうになっていたので私たちはそれを指摘し、「ボラ紳士」は慌てて竿を掴みに行った。


いかにもベテランの釣り人らしい華麗な竿捌きでかかった魚を寄せて来た「ボラ紳士」は、かかっているのがボラである事に気付くと「やれやれ」と言わんばかりの顔をした。「ボラ紳士」は彼の竿にかかった獲物がお気に召さないようだったが、五〇センチメートルは軽く超えてそうな魚が針にかかって暴れている姿を私たちのような新米の釣り人が目にすれば口をついて出て来る一言は決まってる。

「うわー、こいつはすげぇ!」


私たちの右隣にいた、無駄に巨大なウキをつけた仕掛けを目の前に垂らしっぱなしにしたままパイプ椅子に座ってタバコを吸ってるだけの(もちろんそんな仕掛けにかかる魚なんて一匹もいやしなかった)、やる気があるのかないのか分からないちょっと不快な釣り人が玉網を持って「ボラ紳士」の元に駆け付けたが、そいつと「ボラ紳士」とはうまく呼吸が合わなかったようで、最終的にボラは網に掬われることなく沖の方へと逃げて行った。「ボラ紳士」は、どうせいらない魚なんだから別にいいんです、とクールに言い放った。


その日「ボラ紳士」の狙いはどうやらハゼだったようで、私たちの見てる目の前で何匹も釣り上げたハゼを「天ぷらにするんだ」と言って満足そうな表情を浮かべながら、日も暮れて暗くなって来たころには帰って行った。程なくしてその日持参したエサを使い切ってしまった私たちが釣り場を後にする頃には、辺りはもう真っ暗になっていた。


何か質問は? OK。諸君の健闘を祈る。

以上だ。



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