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March 28, 2015


やぁ、諸君。私がプッシー大尉だ。

水曜日に天気予報を見ていて素晴らしい好天が見込まれることに気づき、週末に唐松岳に行かないか?とトミーにEメールを送ったら二つ返事でOKと来た。トミーも割と暇なんだな。


〇四〇〇時にご自慢のアウディで自宅まで私を拾いに来てくれたトミーを気遣って、高速道路の大半は私がハンドルを握った。土曜日であるにも関わらず高速は渋滞することもなくスムーズに流れていた。スキーヤーもずいぶんと減ってしまった、と助手席で眠り込んでいた元スキーヤーのトミーはいつの間にか目を覚まして溜息をついていたが、彼こそスキーをやめてしまった張本人でもあった。


八方尾根スキー場の無料駐車場は、なかなか見つけづらいところにあった。親切な案内板が付近の道路に立ってないのは、その界隈で有料駐車場を営んでいる地主たちへの配慮だろう。

ゴンドラ乗り場のスタッフにでも駐車場の位置を聞いてみようと乗り場まで偵察にいった私は、スキーヤーで混雑している割にちっともスタッフらしき人間が見当たらないので、すぐにあきらめてすごすごと車に戻った。それでも私たちは絶対に悪徳地主に金は払わない、という屈強なる意志をもって無事に無料の「第三駐車場」を発見した。


〇七時三〇分にはほぼ満車。





身支度を整えて駐車場を出発し、ゴンドラ乗り場へと向かう。まぁ歩いてざっと一〇分かそこらってとこだろう。ぞろぞろとゴンドラ乗り場の方へと歩いているスキーヤーたちに交じって、登山姿をした人々も何組かいるようだ。


大勢のスキーヤーに交じってゴンドラに乗るのは私にとって初めての経験だ。学生時代に散々スキーをやったというトミーもハイカーとして乗るのは初めてだろう。なので切符の買い方からして私たちには少々ハードルが高かった。

つまりそこにやって来るほとんどの乗客が帰りの切符を必要としない窓口の係に、私たちにかぎっては往復の切符が必要なことをきちんと理解させなければならない。しかも私たちはスタート地点の「八方池山荘」にたどり着くまでに三本のゴンドラかリフトを乗り継がなければならなかった。つまり切符を買う回数も「三回」だ。

私は「たまたま」三回ともトミーの後ろに並んだので、トミーが切符を買い終えてから私の順番になったら窓口の係に「同じものを」とオーダーした。


ゴンドラはともかく、雪山の斜面を宙吊りになって吹きさらしのまま運ばれる「リフト」なる乗り物に乗ったのもまた生まれて初めての経験だった。乗ってみるまで気付かなかったが、あれはとんでもなく寒い!まだ歩き始めてすらいないのに、トミーは今日も隣で私の罵り声を聞かされる羽目になった。


リフトの終点には雪に埋まった「八方池山荘」があり、その前では私たちと同じようなただのハイカーのほかにスキー板を携えたハイカーたちも出発の準備にいそしんでいた。

彼らは帰り道ではかなり楽をできるんだろうが、あれを履いたりかついだりして山道を登って行かなければならない苦しみというのは、ちょっと私の想像できる範囲を超えている。私は尻滑り用のソリをバックパックにしのばせてあるので、それに適した斜面があれば使うつもりだったが、もう本当にそれで十分だ、と思った。

ちなみにトミーは大雪渓で私がそれに興じている姿を目の当たりにして密かに自分もソリを入手することを計画し、いざ今回の山行に備えて何軒かの登山用品店を見て回ったのだが、どこも在庫がないか、やっと見つけた店でもピンクのやつしか在庫がなかったので入手することをあきらめたらしい。

別に色なんて何でもいいじゃないか、と私は思ったが、彼にとって尻滑り用のソリは、あくまで男らしくカッコいいマシンでなければならないようだ。


〇九〇〇時に山荘前を出発。今回のハイキングに関しては地図もコンパスもなしだ。標準コースタイムが往復で七時間弱ということは覚えてるが、それも大してあてにはならない。

つまり私たちが気を配るべきこととは、現時点でどれだけかかるかは分からないが、とにかく山頂に着いたら登りにかかった時間の七割くらい下山にかかるものとしてその場で下山開始時刻を設定し、最後のリフトが出てしまう一六〇〇時までにはここに戻って来なければならない、ということだ。


登り始めは概ね空が雲に覆われていたので、まぁ絶景というわけにもいかなかったが、それにしてもこのハイキングルートはのっけから雪をかぶった白馬三山や五竜岳を楽しみながら登ることが出来て素晴らしい。何の景色も見えない「くそったれ林道」を三時間も歩かされた前回のハイキングとはうって変って、私は大喜びでそこを登りながら何枚も写真を撮りまくった。


〇九時一五分にひとつめのケルン(八方山ケルン)を通過。バックの稜線は白馬三山。





私とトミーの計画方針上それは滅多にないことだったが、今回のハイキングに限っては私たちのほかにも周囲に何人ものハイカーがいた。踏み跡から少し外れるとくるぶし位まで足が雪に埋まってしまう。ひいひい言いながら登ってる山道で誰だってそんな目にあいたくないから必然的にほぼ全てのハイカーが一筋の踏み跡に沿って行儀よく一列に並んで登っていくことになる。


要するにこんな感じだ。





それはそれで結構なことなんだが、このルートは初心者向けのルートとしていろんなガイドブックに取り上げられてしまっているので、なかには快適に歩く周囲のハイカーの足を引っ張るような不届き者も紛れ込んでいる。まぁ、そんなやつに運悪く出くわしてしまったら暫く立ち止まって美しい周りの景色でも眺めてるしかない。


○九時三五分、便所前を通過。





白馬三山をバックに第二ケルン。





八方ケルン。





そして○九時五〇分には第三ケルンに到着。





赤岳の(たぶん主に「くそったれ林道」の、だろう)ダメージから完全には回復してないのでペースの上がらないトミーをしばらくそこで待つ。


トミーと合流して一○○○時に第三ケルンを出発し、一○分ほどで「下の樺」に差しかかる。





その先はちょっと手ごわい急斜面だ。主にガイドブックの情報を鵜呑みにしてやって来てしまったあわて者が最も大勢のハイカーに白い目で見られるスポットでもある。

私の前にいた二人組は、その会話を盗み聞きするかぎり、かなり「できる」ハイカーのようだったが、その四、五人前を歩いていた初老の男のおかげで彼らも急な斜面上で半分足止め状態にあった。そのとき彼らのうちの一人が、おや?富士山が見えるじゃないか、と言ったのを私は聞き逃さなかった。


もちろんすぐにそっちを見たら彼らの会話を盗み聞きしていたことがバレちまうし、何だか富士山さえ見えれば喜んでしまう軽薄なハイカーに思われてしまうのも少々不愉快だ。私はしかるべき時間が経過したのちにそちらにさり気なく目をやった。

なるほど、いくつもの山塊を超えたはるか向こうの方に見覚えのある例のシルエットがはっきりと見える。あとでトミーにその話をしたら、そんなことより富士山の手前に赤岳が見えますよ、と教えてくれた。

明らかに至近距離にある赤岳からちっとも見えなかった富士山がこんなに遠く離れた唐松岳から見えるというのもおかしな話だが、そればかりは私たちの努力でどうにか出来るものでもない。


一○時三五分に「上の樺」を通過し、丸山には一一時一〇分に到着。

「下の樺」から見上げる丸い山はただの丸い山であって「丸山」ではない。その奥の大き目のケルンが立ってるやつが正解だ。


白馬三山の稜線をバックに雄々しくそびえ立つ「丸山ケルン」。





トミーは相変わらず私のはるか後方を歩いているようだ。振り返ってどの辺を歩いているのか探してみるのだが、トミーと同じ服装(赤いジャケットと黒いパンツ)のハイカーだらけで、どれがトミーなんだかちっとも分からない。私はトミーを信頼して、つまり放っておいて先を急ぐことにした。


地形的に白馬側から抜けてくる風の通り道に当たるのか、丸山から先では一気に体感温度が下がる。寒さに耐えかね、途中に現れたなだらかな斜面で荷物を下ろしてジャケットを取り出すことにする。

この時点で私が山頂だと思い込んでいる手前のピークは偽物だ。本物はその奥(画像では右側)に見える三角形の方だ。





偽物のピークには一二〇〇時ちょうどに到着。そこは頂上山荘の「展望台」とされているところで、剣岳を始め、立山連峰の山々を一望できる。





トミーは一五分ほど遅れて到着した。協議の結果、見晴しがサイコーなうえに時間も時間なのでその場でランチにする。

もちろん私はいつもの「鹿児島ラーメン」。





出来あがり。





展望台に辿り着いた途端に視界が開け、素晴らしい景観が一気に目の前に広がるので、後続のハイカーたちがやって来る度に歓声があがるのだが、私の昼食まで目ざとく見つけては「おいしそう」とか何とか黄色い声をあげる山ガールがいたのには閉口した。


昼食を終えて「展望台」を一二時四五分に出発。


二五分ほど歩いて一五人ほどのハイカーがくつろぐ山頂に到着。





人の溢れかえる賑やかな山頂は私たち好みじゃない。さっさと記念撮影をすませて引き上げることにする。


みんな山頂碑を背景にして記念撮影に興じているが、その奥の方には誰もいない。そっちに行けば素晴らしき立山連峰の壮観な眺めを背景にできるばかりか見知らぬハイカーたちが私たちの記念写真に写り込むなんてこともなく撮影ができる。

早速、三脚をセットしてカメラのセルフタイマーを起動し、一〇枚連続で撮影できる設定にしてからシャッターボタンを押してトミーの隣へと走る。

所定の位置についたところで撮影ランプが小刻みに点滅し始めた。一枚、二枚、三枚・・・ 少しずつポーズを変えていき、八枚目が撮影されたその瞬間、突然一陣の風が吹きつけ私のお気に入りの帽子をさらって断崖絶壁の向こうへと連れ去ってしまった。くそっ、何てこった!!


ちょっとした気のゆるみで顎ひもをかけるという何でもないことを面倒がったためにとんでもない代償を払う羽目になった私は、二度とそんなくだらないことで自分を甘やかしてはならない、と自分を戒めながら、一三時二五分に下山を開始する。


山荘までの帰路、ちょっとしたトラバースが必要になる割と急な斜面があって、前を行く若いハイカーがビビってしまったので、私たちはそこで足止めを食らった。踏み跡を見ればどこをどう歩いていけばいいか分かりそうなもんだが、たしかに足を滑らせちまったら数百フィートは滑落することになるだろう。初心者でも楽しめるルートということになってはいるものの、それはそれで本当の初心者には少しばかり酷なように私には思われた。


一三時四五分に、まだ一〇人ほどのハイカーが寛ぐ山荘の展望台を通過し、一四時一五分には丸山を通過する。同二五分に「上の樺」に到着。

ダケカンバだか白樺だか知らないが、青空と雪山を背景によく映える。





下山中にちょっと年のいったご婦人が尻滑りにチャレンジしている場面に遭遇する。尻滑りは大胆さが重要だ。ソリを尻の下に敷いて両足をその前の地面におく。ソリと雪面の間の摩擦抵抗はほぼゼロに等しく、地面に置いた両足だけがブレーキだ。そして何も考えずに両足をひょいと上げた瞬間、ソリはゲートから放たれた競走馬よろしく斜面のうえを勢いよく走りだす。

ご婦人はまだあまり経験がないか、ひょっとすると初めてのチャレンジだったかもしれない。足の上げ方に思いきりのよさが感じられない。


私はアイゼンを外すのが面倒なのと、登りの道中で注意深く観察してみたものの、それほど尻滑りに適した斜面があるようにも思えなかったので、今日は尻滑りはなしで下山するつもりだったが、ご婦人の尻滑りの様子を少々じれったく思いながら見ているうちに、無性にそいつがやりたくなった。


ご婦人の目の前でやるのは少々気が引ける。そこからしばらく下りてある斜面に到達すると、私はトミーにこれから私がやることを宣言し、バックパックから何度見てもチリトリの出来損ないにしか見えない自分のソリを取り出した。


映像はトミー提供。





こうして客観的に見せられると、私もさっきのおばさんと大して変わらないことがよくわかる。ただ午後の遅い時間帯の雪は多くの場合腐ってしまっているので「尻すべり」にはあまり向いてないということだけは指摘しておこう。


結局、私たちは一五時二〇分には山荘前に到着したので、ゆっくりとアイゼンその他の装備を外してリフトに乗り込んだ。朝、それに乗るときにそれぞれ往復のチケットを買っておいたリフトやゴンドラを下りる度に、いちいち帰りの分のチケットを取り出すという面倒な作業に取り組まなければならなかったので、私は少々いらついた。取り出しやすいところに仕舞っておけばいいと思うだろうか?それはどこだ?ポケットか?不用意なところに仕舞っておいたがためにハイキング中になくしちまったら元も子もないじゃないか。


無事に駐車場まで辿り着いた私たちは例によってトミーがどこからか見つけて来た温泉へと向かった。そこは出来たばかりの温泉なんだ、とトミーは嬉々として私に、その温泉に関するちょっとしたレクチャーをした。

トミーが期待を寄せるその「出来立てほやほやの」温泉施設に着いてみると、その広大な駐車場は既に主にスキー客のものらしい三、四〇台ほどの車であふれ返っていて、トミーは正直に、その事実を快く思わない事実を、あまり上品でない言葉で表明した。

私はその時点ではたぶんトミーよりもいくらか楽観的だったが、いざ券売機で買ったチケットをフロントの男に渡し、脱衣場に進入してみて愕然とした。たった二〇フィート四方かそこらの脱衣場には四、五〇人分はあろうかというロッカーがただでさえ狭苦しい脱衣場の空間を我が物顔に占有していて、残された空間の中で一〇人ほどの先客が肌も触れ合わんばかりにして服を着たり脱いだりしている。

一番むかついたのは、そんな状況であるにも関わらず目障りな清掃員の男がその狭苦しい空間の中をあっちへうろうろ、こっちへうろうろしながら自分の仕事をさっさと終わらせようとしていることだった。トミーはその脱衣場の温度調整に対してかなりいらついていた。冷房が効いてるのかどうかはよく分からなかったが、たしかにそこにあって当たり前の扇風機はどこにも設置されてなかった。


帰り際にトミーは「何で駐車場だけはこんなに広いんだ?」と毒づいたので、私もロッカーの数が不適切であることを指摘した。あの施設の経営者は客を詰め込めるだけ詰め込めば利益につながるとでも考えたんだろうか?

あいにくだが私たちは二度とそこを訪れようとは思わなかったし、トミーはフェイスブックにまでその施設の悪口を投稿して何人かの潜在的な顧客からあの施設が得られたかもしれない分の売り上げを奪うことに成功した。


その後、私たちは「ガーリック」に向かったが、新しく入店したと思われるとても可愛らしい女の子の店員に「満席です」と言われて追い払われ、続けて向かった「グリンデル」では玄関前に一〇人ほどの行列ができているのを見て入店をあきらめ、大急ぎでタブレット端末を取り出して私が見つけた「白馬飯店」という中華料理屋に滑り込み、そこでも二〇分ほど待たされたが最終的には無事に夕食にありついた。スキーシーズンの白馬は初めてだったが、その集客力は全くもって侮れない。

結果的に「白馬飯店」で夕食をとることが出来たのは私たちにとってとても素晴らしい経験だった。私たちは白馬で三件目のお気に入りのレストランが出来たことを喜ばしく思いながら、白馬の地を後にした。


何か質問は? OK。諸君の健闘を祈る。

以上だ。






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