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「トミー」は「しょこたん」の友人の友人くらいにあたる青年だったが、まぁあからさまに言ってしまえば「しょこたん」は「トミー」の事をよく知らなかった。私が心配したのは、「トミー」の登山経験や登山へのモチベーションが私たちの、まぁ正確には「しょこたん」のそれとはギャップがあって、当日よく分からないまま例の崖の上に連れて行かれた「トミー」が怒って帰ってしまう事だったが、そいつは全く私の杞憂だった。

彼は既に西穂高や谷川岳のような少々難易度の高い山も既に踏破済みの、筋金入りのハイカーだった。とにかく「トミー」は気のいいやつで、私たちはすぐに意気投合したので、その日以来、私たちは事あるごとに「トミー」やその友人と登山を楽しんでいるが、とにかく「トミー」には登ってみたい山が多すぎて色んな山行計画のオーダーが飛んで来るので、私は彼に出会って以来、あちこちの山に関する情報収集に大忙しの日々を送っている。
 

当日は「トミー」がご自慢のアウディのちょっとグレードの高いやつで私たちを集合場所まで迎えに来てくれた。「トミー」は短髪でスポーツマン体型のナイスガイで、私は初対面だってのに「トミー」に何とも言えない頼もしさを感じた。

登山口へと向かうハイウェイは割と空いていて、おまけにその日の天気はまったく申し分なかったのだが、アウディが登山口に近付くに連れて風が強くなって来た。私たちは「おいおい、この風、大丈夫なのかい?」「あまり風が強いようなら岩場はやめておきましょう」「いやいや、風吹いてる方が面白いだろ?」などと下らない会話をしながら、木の枝や、商店ののぼりや、そのほかの色んなものが風に揺られる様子を窓から眺めた。

ルートの下調べを担当した私は、新しいバイオトイレがあるという坂本の登山口から登るつもりだったが、同じく自発的に下調べまでして来た感心な「トミー」は駐車場の完備されている北側の登山口から登るつもりで来たらしく、アウディはバイオトイレの前をあっさり通過してさらに坂道を登って行った。私の用意した地図は北側の登山口までカバー出来ていたので、その事自体には何も問題はなかったのだが、北側登山口から股峠までの距離の短さに「しょこたん」が不満を主張したため、私たちは例の岩稜帯を越えてから西峰に着いた後、本来ならローソク岩の前を通って股峠まで戻って来ればよいものを、わざわざ一旦坂本まで下って再度股峠まで登り返して来る事で合意した。
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