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「隊長」が「しょこたん」の支援を受けて山で見つけたフィアンセ(!)は、旅行代理店で仕事をしていたので、バス、山小屋、帰りに立ち寄る温泉にいたるまで万事よろしく手配してくれた。山小屋について、私は雑魚寝部屋ではなく個室を主張したが、「隊長」いわく、山頂で「ご来光」を仰ぎ見るためには九合目近くの山小屋が理想だという理由で却下された。要するに富士山の山小屋は、山頂に近ければ近いほど、ろくでもない山小屋しかないように私には思われた。

いよいよ八月最後の日曜日の午前七時、私たちパーティーは新宿に集合した。メンバーは「隊長」とフィアンセ、「ヘイポー」、「しょこたん」とその友だちの「山ガール」、そして私。

「しょこたん」の友だちの「山ガール」はとても美人だったが、彼女は人妻だった。ただ人妻だというだけならまだしも、あの「しょこたん」の友だちであるという事実は何にもまして注意深く考慮する必要があった。そんな人妻に手など出してみようものなら、一体全体あの「しょこたん」にどんな制裁をくわえられるかなんて想像するだけでも恐ろしい。私はその美しい人妻に対して終始理性的に接する事を余儀なくされた。

だいたい「しょこたん」はいつだってクレイジーな「山ガール」だったが、今回だって例外ではなかった。彼女はほんの一週間前にほかの山友だちと富士山に登って来たばかりだった。

今週も富士登山、来週も富士登山・・・。まったくどうかしてるぜ。
 


集合場所に指定されたところは、他のバスの乗客の集合場所でもあるようで、とんでもない人だかりになっていた。私たちが出発を待ちわびながらくだらない会話に没頭していると、ガイドらしき男が私たちの乗るべきバスの便名を叫びながら現れたので、私たちはバス停代わりに大勢の人々に占領された歩道を後にして、その男の後をついていった。

バスの座席はすべて指定席になっていた。私たち六人のパーティーには二人掛けの座席が三つ割り当てられていた。席割をどうするかは全く難しい問題ではなかったが、その結果は私にとって全く不本意なものだった。

つまり、「隊長」の隣にフィアンセ、「しょこたん」の隣は友だち、私の隣は「ヘイポー」・・・。 「よぉ、ヘイポー、頼むからあと五分で一〇キロほど痩せてくれないか?」「出来るわけないでしょう!」 

私は五時間以上も窮屈な思いをしながらバスに揺られる羽目になった。
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