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携帯のアラームで目覚めると既に夜は明けていた。部屋のカーテンを開けると一面の曇り空で、私は少しばかり失望したが、天気予報が言っていたように、そのうち晴れるに違いないと自分に言い聞かせながら軽めの朝食を摂った。身支度まで整えて、たぶんまだベッドの中で眠りについてる宿の爺さんを起こさないようにそっと玄関の扉を閉めて宿を出発したのは六時半を少し回った頃だった。

レンタカーで国道を北上し、遠笠山道路に入ってからしばらく行くと、正面にガスに包まれた山塊が現れた。私には、その山塊がこれから自分が登ろうとしている山々なのかどうかは全く分からなかったが、いつか登った雲取山の記憶がよみがえり、少々げんなりした。
 


登山口の駐車場に着いたのは七時半頃だった。ちょうど登山姿のカップルがタクシーに乗り込もうとしていた。彼らはよほど早くから登り始めてもうひと仕事終えて来たのか、或いはいまいちな天候にほかの事をして休日を過ごすことにしたのかは分からなかったが、まぁそんなことは私にとってどちらでもよい事だった。

駐車場にはほかにも一〇台ほどの車が止まっていたが、それらに乗って来た人々は既にハイキングを楽しんでいる最中のようで、駐車場には私のほかには誰もいなかった。私は車から降りて、のんびりストレッチをしながら周囲を見渡した。きれいに舗装された駐車場はちょっとした雑木林に隣接していて、その向こうには天城連峰の山々が見えた。相変わらず一面の曇り空だったが、ガスは晴れていた。
 


駐車場脇にトイレの建物を見つけた私はそちらへと行ってみた。事前に情報を収集した結果、今回歩くコース上に全くトイレがない事を知っていた私は、今回の登山コース近辺において唯一存在しているこのトイレが凍結防止のために三月中旬までは閉鎖されるという、多くのハイカーが一様に興味を示さずにいられないであろう重要な情報もまた既に掴んでいたが、ではその「中旬」とはいったい三月何日のことなのか、要するに今日、私はそのトイレが使えるのかどうかという核心的な情報にまでは到達する事ができなかったので、私はその答えをこの目で確かめる必要があった。実はもうずいぶんと長い間、私の尿意は平素よりもかなり高い水準で推移していた。

ドアにはやはり三月中旬までは使えない、という貼り紙がしてあったが、押してみると扉のカギは閉まっていなかった!私は心いくまで放尿を愉しんだ。

随分と長めの放尿を終え、私は安堵の表情を浮かべながら水を流すためのボタンを押したのだが、水は一滴も流れて来なかった。手洗い場の蛇口をひねってみたが結果は同じだった。これって実はこのトイレはまだ使っちゃいけなかったって事か?便器でもくもくと湯気を立てている私の尿が便器の表面に沈着してしまう事実よりも、用を足した後に手を洗えないという事実の方に私の心は動揺してしまった。
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