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始めのうちは私の車を先頭に二台で車列を組んで移動していたのだが、ハイウェイに乗る頃には「ジャンキー」の車は姿が見えなくなってしまった。私が運転する方の車のカーナビは全く使い物にならないガラクタで、私たちは本来降りるべきインターチェンジより二つも先のインターチェンジで降りるはめになった挙句、軌道修正のためにくねくね曲がる山道を延々と走らされ、四〇分余りの時間とガソリンを無駄にしたが、それでもジャンキー号が赤城山麓の集合場所に着いたのは、私たちの車がそこに到着してから二〇分も経ってからだった。ハイウェイでは助手席の「しょこたん」が後ろに座っている「ヘイポー」に、私には「安全運転」の才能がないといった趣旨の事を話しかけて同意を求めているようだったが、私は聞こえないふりをした。ハイウェイとは、早く降りた者ほど安全な場所だ、というのが私の揺るぎないポリシーだった。

集合場所で、「しょこたん」の友人と、「隊長」の知り合いの山ガール二人が合流したので、私たちは総勢九名のパーティーになった。私たちは「隊長」の号令のもと一箇所に集合し、そこで「隊長」がわざわざ私たちのためにプリントアウトして来た地図を一枚ずつ受け取った。「隊長」はその地図を元にその日のルートの説明といくつかの注意事項を述べた。その頃には既に午前一〇時半を過ぎていた。「隊長」を先頭に、私たちはいよいよ第一目標地点の黒檜山山頂を目指して出発した。
 
出発してまもなく、黒檜山登山口に向かう途中にある土産物屋のひしめくエリアで私たちは足を止めた。ある者は食料−出来たてのおにぎり−を調達し、ある者は見た目六〇歳前後の体は小さいがやけに声の大きな店番のマダムに勧められるまま、ポットに汲まれた「湧き水」を飲み、土産物の「蒸かし豆」を試食した。「蒸かし豆」の味に私は概ね満足したが、これから山に登ろうとする九名の中から「OK、こいつを一箱くれないか?」とマダムに申し出る者は一人もいなかった。

道草を食ったこともあって、私たちがようやく登山口に着いた頃には既に十一時を回っていた。
赤城山/黒檜山登山口手前の土産物屋
 


「隊長」が決定した私たちがその日辿るべきルート、黒檜山登山口から黒檜山山頂へと向かい、そこから南進して「大ダルミ」経由で駒ヶ岳山頂を目指し、そのまま駒ヶ岳登山口の方へと下山するルートはきわめて一般的でポピュラーなルートであったらしく、そのルートの経験者をインターネット上で探し出す事は全くわけのない作業だった。

彼らはポイントごとの詳細な情報を事細かに文字で記録し、何枚もの写真を添えたうえで、このルートは技術的にも体力的にも難易度は最低ランクの「星ひとつ」で、初心者にやさしくファミリー向けに最適な「ハイキングルート」だという事を強調していたが、登山口からの上り坂の写真を見ると、人の頭かそれより大きめの石が足の踏み場もなくゴロゴロ転がっていて、私にとっては全くろくでもない登山ルートだとしか思えなかった。
赤城山/石だらけの黒檜山登山道 ※登山口付近 実際、黒檜山登山口からの登山道には、人の頭かそれより大きめの石が足の踏み場もなくゴロゴロと転がっていて、それは延々と上の方まで続いていた。

「隊長」と、今回の登山で初めて「マイストック」を持参した「ヘイポー」の2人だけが、ストックを両手に登山道を登り始めた(そう言えば前回の「御岳山」ハイキングでは「ヘイポー」が私のストックを取り上げて最後まで返してくれなかったので、私は長さや太さの適当な木の棒を山中さがして回らなければならなかった)。そもそもストックを持参していない他のメンバーと、ストックを持参してはいるが、この人の頭かそれよりも大きめの石がゴロゴロ転がっている登山道でストックをどのように使えば楽に登れるのか全く見当がつかない私の七名は、両手両足を使ってこの道を登ることになった。
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