banner_top | Home | Military | Trekking | Gourmet | Life | Contact |
<<[山行録]に戻る 次へ >>

なぜその山なのかは分からなかったが、トミーとしょこたんが一切経山に登るので一緒に来ないか?と言い出した。この世の中にそんな名前の山が存在することすら知らなかった私は、早速インターネットで「一切経山」について調査を開始した。

その山は福島県という、その頃まだまだ色んな意味で世間の耳目を集めていたエリアにあって、あまりに都心から遠すぎるというわけでもないが、決してアクセスが便利だとも言えない中途半端なロケーションにあった。

そのことを二人に指摘すると、東京を〇一〇〇時に出発して登山口へと向かうプランだという。私は率直に、この二人は頭がおかしいのか?と思った。仮にもハイキングという、およそ日常生活で求められるそれをはるかに上回る体力を要求される作業に従事する前夜に睡眠を取らないというのか? まったくバカげている。私にはそんなプランに乗りたいという意欲が全く湧かなかった。
 

だが未だ登ったことのない山に登るチャンスを簡単に放棄したくないと考えてしまうのは、ハイキングの魅力に取りつかれてしまった世界中のハイカーに共通の思考パターンだろう。要するに私一人が何らかの方法で前日の睡眠時間を確保すればよいだけのことだ。

そういうわけで、私は前日までに福島入りして適当なホテルに投宿することを思い立った。いや、待てよ?せっかくだから前日一人で別の山に登ってみることにするか。地理的条件を考慮して、かつ私が登るのに相応しいカッコイイ山がないか、と調べていて私の目に留まったのが安達太良山だった。
 

安達太良山は福島の北方にある活火山で、例の百選にも名を連ねる格式高い名峰だ。一般的にはロープウェイで薬師岳まで登ってから僅か一時間かそこらで山頂に着けるという奥岳ルートが人気のようだが、そんなオカマのピクニックのような軟弱なルートは私が歩くのには全くふさわしくない。

そんなわけで、自宅のリビングにあるソファでガイドブックをめくっていた私が目をつけたのは、沼尻の登山口から鉄山を経由して山頂へと到達し、それから「沼ノ平」と呼ばれる噴火口の周囲を一周するように船明神山側のルートを辿って登山口へと戻って来る周回ルートだった。そっちのルートなら観光客崩れのヘタクソハイカーがぞろぞろ歩いてそうな奥岳ルートとは違って静かな山歩きを堪能できそうだ。

帰りは障子ヶ岩とか言う岩稜の絶壁沿いに沼ノ平を見下ろしながら歩くことになるらしい。いいねぇ、高度感たっぷりの岩場歩きを堪能しながら活火山ならではの荒涼感あふれる情景まで楽しめるってわけだ。私はトミーとしょこたんに指定された一切経山ハイキングの決行日の二日前には郡山入りして適当なホテルにチェックインした。
<<[山行録]に戻る 次へ >>
Copyright (C)2011 Lt.Pussy All Rights Reserved.