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無法松
	【 Data 】 福岡県北九州市小倉北区神岳2-10-24 三共ビル1F [MAP] TEL：093-533-6331 営業時間：11:00〜21:00 定休日：水曜日 最終訪問：2009.09
ビジネスで小倉の地に降り立った私が、当日の昼食に選んだラーメン屋で、とにかくあらゆる駅からのアクセスが悪い。インターネットでの評判が上々なのでこの店に行こうと思うんだ、と取引先の女性に話したら、彼女もこの店の存在自体は知っていたが、どうやって行くのか、と聞くので、歩いて行って来る、と言うと、彼女は「マジかよ！？」とでも言いたげな顔をした。そのまま取引先のオフィスを意気揚々と出発した私は、その店まで四〇分ほど歩く羽目になった。 ランチタイムを多少外した事もあってか表通りに面した小ぎれいな店の中に入ると、客はそれほど入ってなかった。ご夫婦で経営されているようだったが、主に接客を担当しているご婦人は「どストライク」で私好みだった。そのとても魅力的なご婦人は、八〇〇円弱の「無法松ラーメン」というのがお勧めだと私に言った。もちろん私は二つ返事でそれを注文する事にした。そのご婦人に勧められたら、たとえ二〇〇〇円のラーメンだって私は注文しかねなかった。 注文が通るとヤサ男風のご主人がラーメンの製作に取りかかった。カウンター席に座っていた私がぼんやりと彼の仕事ぶりを眺めていると、ヤサ男氏が突然アミですくった茹でたての麺を天井近くまで放り上げ始めた。湯切りのためにそれをやっている事は何となく分かったが、私にはその必要性が全く理解できなかった。 ラーメンが完成すると、カウンター越しにヤサ男氏がとても愛想よく私にそれを手渡してくれたので、私はちょっとふざけてるとしか思えない湯の切り方の件は水に流す事にした。早速ラーメンを口にしてみると、始めはパンチの弱い凡庸なラーメンに思えたのだが、箸を進めるうちに、そうではない事に私は気づいた。あっさりしていながら決して単調ではないそのスープは秀逸で、おまけにチャーシューのとろとろ具合が私の満足度をはね上げた。チャーシューの質はそのままその店の質を表している、というのは私の中で一貫して揺るぎない確信ですらある。私は湯の切り方でご主人に対してちょっと失礼な評価を下しかけた事を心の中で謝罪した。「魁龍」と同じようにワンタンが入っていたが、それはやっぱり私にはどうでもよかった。 豚骨ベースのあっさりラーメンでありながら、「長浜系」特有の臭いがしないという点においても、私にとっては初めて口にするタイプのラーメンだった。「無法松ラーメン」を完食した私は十分に満足して店を出た。店の立地条件の事情により、私は「魁龍」の時とは違って、その日は帰りも延々と来た道を歩くよりほかなかった。
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