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赤 星/塩らーめん(1)

【 Data 】

北海道札幌市中央区南三条西7-7 [MAP]

TEL:011-272-2065

営業時間:11:00〜23:00

定休日:無 休

最終訪問:2010.05

ビジネスで札幌駅北口の取引先を訪問した私と部下が四〇分近くかけて歩いてまで訪問したラーメン屋だ。インターネットでこの店の評判を嗅ぎつけた私が「ちょっと遠いんだが」と言いながら部下を誘い、部下は私のチョイスを全面的に信頼してこの店の訪問に同意した。札幌駅を跨いで大通りまで歩いても飽き足らずさらに南進して辿り着いた狸小路通りの奥深くにひっそりと佇む小さな店先には五人ほどの行列が出来ていて、私たちはさらに一五分ほど店の外で待つはめになった。

私たちの前に並んでいた夫婦と思しきミドルエイジの二人組が、この店は随分評判のようだが本当に美味いのか?と聞いて来たので、私は「知らない」と答えた。インターネットで調べた限りではたしかに評判のようだ、と告げると、彼らは満足げに頷いて、自分たちは観光で北海道に来ていてこの店に来るのは初めてだが、とにかく評判のいい店のようなので、ひどく楽しみにしている、といったような事をまくし立てた。夫の片手には観光冊子のようなものが握られていて、彼らはどうやらその冊子の情報を鵜呑みにしてここまでやって来たようだった。

夫婦が店の中に招き入れられてから程なくして、私たちにも入店の許可が下りた。入口からはいると、店は奥へと長くカウンター席が並ぶだけの質素な造りで、もちろん狭かった。私と部下は、インターネットで特に評判のよかった「塩らーめん」を注文した。

間もなく私たちのオーダーした「塩らーめん」は完成し、私たちの前に差し出されたが、いざ箸をつけてみると、何というか、味がないに等しい、ずいぶん薄味スープのラーメンだった。ラードで表面を覆われて保温されたスープとぷりぷり麺の組み合わせは、私が数ある札幌のラーメン店の中でも頂点に立つ名店と信じてやまない「すみれ」を彷彿させないでもなかったが、硬質なネギの食感もいまひとつスープとマッチングしてないし、どうにも釈然としない一品だった。黙ってそれを口にしていた部下は、私に気を使ったのか、店を出てからも感想を述べようとはしなかったので、私はこう思ったんだが君はどうだった?と私が発言を促すと、堰を切ったかのように「塩らーめん」への不満を私にぶつけ始めた。彼の論点は私のそれと概ね一致していたので、私の味覚が一般的なそれと乖離しているわけではないように思われた。

首都圏にも、妙に評判のいい割には何ら私の心の琴線に触れないラーメン店が少なくないが、私はこの店の「塩らーめん」にも同じような思いを抱いた。唯一の救いは、「塩らーめん」はわずか五〇〇円で提供されていた事であり、私はその点については、この店の姿勢に対して素直に敬意を覚えずにはいられなかった。

もっとも部下は一通り「塩らーめん」を批評し終わると、それからめっきり無口になってしまった。それは私のチョイスに対する彼なりの抗議の方法かもしれなかったし、ただ単にまた札幌駅の北口を目指してよろよろ歩かなければならないことにうんざりしていたのかもしれなかった。そのどちらであったにせよ、私は身を切るような責任を感じずにはいられなかった。
赤 星/塩らーめん(2)


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