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Merrell Chameleon 3 Ventilator Mid GORE-TEX
Merrell Chameleon 3 Ventilator Mid GORE-TEX      【 Data 】


     Used since 2011.07.10 at Mt.Akagi

     Price : \ 17,800

     Size: US 8.5

     Color: Gunsmoke

     Link : discontinued

私が周囲の忠告に従って初めて購入した登山靴だ。つまり登山を始めるにあたって、私は普段サバイバルゲームで使っている軍用のアサルトブーツで事足りると思っていたのだが、後にして思えば、やはり登山には手で簡単にぐにゃぐにゃ曲げられるようなやわなシューズではなくて、それ用に開発された専用のタフなシューズを履いた方がいいという事実は私も素直に認めよう。

数あるブランド、モデルの中から私が「Chameleon 3」を選んだ理由はシンプルだ。手元にあったミリタリー専門誌にそいつを履いた、アフガニスタンの山岳地帯に展開しているクールな特殊部隊メンバーのフォトが載っていたからだ。私が登山用品をチョイスするにあたって一般的に適切だと思われる論理的な理由など皆無だと言ってもいい。

私がかつて尊敬していた「隊長(山ガールと懇意になって結婚する、という目標を達成した彼は、それから山に見向きもしなくなった)」に、登山靴は実際にショップで試し履きをしてから買わなければならない、と厳しく教えられた私は「隊長」に連れられて、とある登山用品店を訪問した。登山靴コーナーの陳列棚にはピカピカの「Chameleon 3」が陳列されていたが、値札を見た私は絶対にその店では買わない事を固く決意してから店員の爺さんに試し履きをさせてくれ、と頼んだ。

たぶん自分も好きなだけ山に登ってるんだろう、屈強な体躯とよく日に焼けた顔をした爺さんが足のサイズを尋ねるので 26.5cm(US サイズでは 8.5 に相当する)だ、と答えると、爺さんは「登山靴は少し小さい位がお勧めでねぇ」と言って 8.0 サイズの「Chameleon 3」を持って来た。8.5 はないのか尋ねると「ない」と言う。だからって適当な事をぬかしてこの私にサイズの合わないシューズを買わせるつもりか?随分とぼけた爺さんだと思ったが、はなからこの店で買い物をするつもりのない私は素直に爺さんが差し出した 8.0 サイズの「Chameleon 3」に足を入れた。爺さんは慣れた手つきで両足の靴紐を締めてくれてから、ちょっと歩いてみて、と言った。

なるほど、たしかに私がこれまでに履いて来た全てのシューズに比べてしっかりと地面をグリップしている感覚が伝わって来る。私は「Chameleon 3」が大いに気に入った。しかし分かっていた事だが 8.0 サイズの靴なんて私にはあまりに窮屈だ。やはり私が入手するべきなのは 8.5 サイズである事を確信した私は礼を言ってその窮屈なシューズを脱ぎ、爺さんに突っ返してから店を出た。それから自宅に帰るとすぐにインターネットに接続して 8.5 サイズの「Chameleon 3」を最も安く売っているオンラインショップを見つけ出して注文した。

それ以来、私は三、四十回のハイキングをこの「Chameleon 3」と共に楽しんだ。つまり私は「Chameleon 3」で険しい岩山に登り、水の流れる沢も登り、ときにはつぼ足で雪山すら登った。こいつは私にとって、まさしく一足あれば事足りる「オールマイティー」な登山靴だ!もっとも、このシューズはそれらの条件で履かれる事を前提に作られたシューズではないので、その時々で発生する諸問題をカバーする技術か、或いはそれらの問題を受け容れる覚悟がないのなら、素直に用途にあったシューズを履いて山に出かけるべきだ。

岩山に登る時に注意を払わなければならない点は、「Chameleon 3」はフロントが反り上がったデザインをしているので、つま先だけしか乗らないような足場に足を乗せる時にはそうでないシューズよりも明らかに足を滑らせやすいという事実だ。それは踵のデザインについても同じ事が言える。丸みを帯びているので雪山を下るときに踵でキックステップを効かせようとしても期待したほどの効果が得られない。

雪の上を歩くときの問題はさらに切実だ。保温性などないに等しいので、三〇分も歩いていると足の指先が冷えて来る。さらに「通気性」を重視してゴアテックスを採用しているばかりか表面の一部はメッシュ加工されているので、長いあいだ雪の上や雨の中を歩いていると、水がじわじわと時間をかけてシューズの中に沁み込んでくる。

それからこれは私のもとに届けられた個体特有の問題なのかもしれないが、変な臭いがする。今までに嗅いだ事がないような何者にも例えようのない独特の刺激臭で、腐敗臭とも違うし田舎の便所のそれとも違う。あの臭いだけは実際に嗅いでない人々にその凄まじさを理解してもらうのは不可能だろう。それにしたって、私が夏場にハードなハイキングを楽しんだ後で程よく蒸れてしまったシューズの匂いと箱から出したばかりのメレルの新品の匂いを目隠しをした何人かの被験者に嗅がせてから「OK、どちらの臭いがお気に障りましたか?」と尋ねてみたならば、全員がメレルの臭いの破壊力に一票を投じるに違いない。そして恐ろしい事に、実際には下山してそいつを脱ぐ度に私はそれらのブレンド臭を嗅がなければならない。

見た目こそスニーカーのそれと大差ないが、アッパー表面はかなりソリッドに作り込まれている。その一方でゴアテックスを採用したライニングはクッション性に富んでいて履き心地は悪くない。私は付属のインナーソールをそのまま使っているが、足まわりのトラブルはほぼ皆無だ。それにこのシューズは本当にタフだ。足かけ三年余りで三、四〇回のハイキングをこれ一足でこなして来たが、機能上のいかなる問題も起きていない。紐だけはそろそろちぎれそうになって来たので買い換えを検討中だ。


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