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MSR Denali Evo Ascent
MSR Denali Evo Ascent      【 Data 】


     Used since 2013.05.08 at Mt.Tateyama

     Price : $ 137.00

     Size : -

     Color : White

     Link : http://www.cascadedesigns.com/msr/

私の素晴らしき相棒トミーが二月の那須茶臼岳のハイキングに私を誘ったとき、残雪期の漁岳をつぼ足で踏破した経験の持ち主である私は雪山を少々舐めていた。つぼ足での山行には少々うんざりした記憶が蘇り、私は間に合わせで古き良き日本のワカンをネットショップで注文してそいつを現地に持って行く事にした。私の注文した古き良きワカンの値段はたしか一〇〇〇円か二〇〇〇円位だったと思う。「たかが雪山」に出かけるために、その軽く一〇倍の値段はすると聞き及ぶ「スノーシュー」を買うなんてはなから問題外だった。

ちょうどその頃「雪山」の面白さに目覚めたトミーは、当日ピカピカのスノーシューを車に積んで現れた。上高地だかどこだかに出かけて行ってスノーシューの必要性に目覚めて早速次の日には登山用品店でそいつを買い求めたというトミーは、美ヶ原かどこかで既にそいつを実践投入済みらしい。現地に着くと結構な積雪だったので私は早速ワカンを履いたが、私が履き終えるのを見届けたトミーはスノーシューを着けずに歩き始めたので、私はせっかく持って来たならここで着けたらどうだ?と指摘した。彼はいそいそと車に戻ってスノーシューを履き始めた。ひょっとしてそいつを持って来たのを忘れてたのか?と私はびっくりしたが、いちいちトミーに真実を確認する事はしなかった。

歩き始めて五分もしないうちに、私はトミーにスノーシューを履くよう勧めた事をひどく後悔した。率直に言ってちっとも役に立たないワカンを履いた私の足がずぼずぼ雪にハマるのを尻目に、スノーシューを履いたトミーは雪面を滑るように登って行ったので、たちまち私はトミーに追い付けなくなった。積雪もさる事ながら当日の那須岳は気温が摂氏−15度、風速は25米/秒に及ぶ猛吹雪に見舞われていて、山頂に行く事を諦めたハイカーたちが次々と下山して来たが、登って行く私たちとすれ違うためにちょっとだけ踏み跡から外れてくれた爽やかな青年は突然ずぼっと首まで雪にハマってしまった。私が大笑いしそうになるのを必死に堪えていたのはここだけの話だ。そんな事よりその日の積雪はそれほど深かった。

トミーを追いかけているうちに私は何度も足を雪にとられ、バランスを崩しては転んだ。安定感抜群のフォームで余裕を漂わせながら先を行くトミーは、無様に雪の上を転げ回りながら毒づく私に気づいて振り返ると、そのようなチャンスを逃さずに何度もシャッターを切った。別に雪が悪いわけでもワカンが悪いわけでも、もちろん那須岳が悪いわけでもない。こいつは全て私の判断ミスが招いた事態だ。私はその日トミーに自宅まで車で送ってもらうと、早速パソコンをインターネットに接続し、私が購入するべきスノーシューの選定に入った。

私が「Denali Evo Ascent」をチョイスした理由は実にシンプルだ。アメリカの海軍特殊部隊「Navy SEALS」の隊員とされる人物が冬期山岳訓練にいそしんでいるシーンと思われるフォトで、その隊員のバックパックに「Denali Evo Ascent」が括りつけられていたからだ。私はこのモデルの特徴や使い勝手に関する情報を一切収集するまでもなく、このモデル一本に絞ってインターネット中を探した。最終的に「ほとんど使われる事なく」その Navy SEALS から放出されたという(本当かどうかは知らない)「Denali Evo Ascent」を、私は $137 で手に入れた。

三ヶ月後の立山で私の「Denali Evo Ascent」はいよいよ初陣を迎えた。それが優れたスノーシューかどうかなんてお構いなしに入手した「Denali Evo Ascent」は、観光客やハイカーで賑わう一面銀世界の立山で私が那須岳と同じような醜態を晒す事態を招かないためにとてもよい仕事をした。「Denali Evo Ascent」が、というよりも、スノーシューというギアーそのものが、雪上を歩く上できわめて優れたツールである事を私はトミーよりも少し遅れて大いに理解した。

私はその他のスノーシューを履いたことがないので、他のスノーシューに比べて「Denali Evo Ascent」がいかに優れたスノーシューであるのかを説明する事はできない。しかし恐らくほかのスノーシューに比べて威圧感をすら醸し出している大型のクランポンは雪面に心地よくグサグサと突き刺さり、さらに起こすのも倒すのも容易なヒールリフターは一部のスノーシューには実装されていない少々贅沢な機能だという事実は指摘しておかなければならないだろう。

シューズ(ブーツ)への装着にはゴムベルトを使う。足の甲に三本、かかと側に一本用意されたゴムベルトはオーバーミトン越しにすら扱えるほど吸着感のある素材によって作られている。一見、留め金のピンの角度が内側に寄り過ぎていて頼りなく感じるが、歩行中にそれが原因となってベルトが外れることはまずない。もちろんその事はベルトを外す際にその作業を容易にしてくれるのは言うまでもない。


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