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ぷしろぐ >> 釣り編
【 カ テ ゴ リ 】


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August 6, 2016


やぁ、諸君。私がプッシー大尉だ。

去年八月の初回の訪問では、台風一過の後の大シケでちっとも釣りにならなかった外房・大原漁港を「メバルマン」と共に再訪。例によって夕方から夜にかけてと朝釣りのダブルヘッダーだ。


初日は日の入りが一八三〇時で満潮になるのが一八五〇時。狙い通り一六四〇時ごろに現地到着。

平日(金曜日)ということもあってか、「テトラ置き場の岸壁」は船道付近に数組釣り人がいるだけでガラ空き。





さすがに本命ポイントの赤灯堤防は賑わっているだろうと思ったら、何と無人。





私の仕入れた情報によれば、この漁港内ではA級ポイントのはずなんだが、ガセネタか?


まぁいい、セオリー通り、堤防先端にほど近い沖に面したテトラの切れ目付近に釣り座を構える。うまい具合にちょっとした曲がり角にもなっていて、いかにも魚たちが好んで集まって来そうな素晴らしい地形だ。


理屈のうえでは、撒き餌でテトラに潜んでいる「大物」どもを手前におびき寄せて釣り上げるわけだが、テトラに逃げ込まれると確実にこちらの負けだから、いかに自分たちにとって勝負しやすい位置まで獲物を寄せられるかが勝負の分かれ目ってわけだ。

私よりも明らかに釣りが下手くそなメバルマンに、テトラ脇の釣り座とその隣のどちらがいいか選択権を与えると、メバルマンはより堅実な「その隣」を選択したので、私がベストポジション(とは言え少々リスクも伴う釣り座)を頂くことに。


ところでこれが今年に入って五回目の釣行になるわけだが、初回の沼津・足保港で唐揚げサイズのカサゴ三尾、二回目の城ケ島と三回目の下田・犬走島堤防では丸坊主、四回目の下田・犬走島堤防では唐揚げサイズのカサゴとメバルが一尾ずつ、と、はっきり言って今年の私はまるでスランプだ。リールを左手巻きに変えたくらいで、仕掛けも釣法も去年と同じやり方で挑んでいるつもりなんだが、結果の差は歴然としている。

あえて言うならば、これまでの四回の釣行では水温がまだ上がっていなかったことは間違いない。ということは、さほど活性の高くない魚たちにいかにして餌を食わせるかって事になるんだが、うまい具合にウキが沈んで行っても、いざ合わせを入れて勝負を始めると獲物と力比べが始まって、最後は決まってスッポ抜けた仕掛けが宙を舞った挙句にポトンと足元に落ちてくるパターンばかりだ。

これって獲物に餌を咥えさせることには成功してるのに、食わせることが出来てないってことだろ?


そういうわけで、今回はいつもの仕掛けに若干の手を加えることにする。

道糸三号とハリス二.五号×二.〇米の組み合わせはそのままに、まずウキの浮力を殺すために、あえて浮力以上のオモリをセットすることにしよう。この釣り場の水深はせいぜい五米ほどということだからウキは2Bのハピソン。それに対してBの水中ウキと、G2のガン玉2つを段打ちにする。

理論値としては少々バランスが悪いが、試しに海中に放り込んでみるとハピソンはちゃんと浮く。底の方の潮の流れか何かで、たまに獲物がかかったわけでもないのにハピソンが沈むことがあるが、その場合は明らかにそれと分かるから実用上、何の問題もない。

ついでに針をチヌ針(四号)からグレ針(六号)に変更する。錘を増やしてウキの浮力を殺す一方で針を軽量化してやると、何だか吸い込みがよくなりそうな気がするだろう?

さらに今回は「早合わせ」を封印して、ウキが沈んでも確実に食い込むまでは合わせを入れないことを自分自身に固く誓う。くっくっく、どれだけスレた生意気な魚どもでも、ぐぅの音も出ない完璧な戦略だ。


さて、前回の釣行で撒き餌を使い果たしてしまったので、今回は釣り座に着いたらまずは撒き餌作りにいそしまなければならないわけだが、気の短いメバルマンは作業に取り掛かった私を尻目にさっそく付け餌だけでフカセ釣りを開始する。

メバルマン曰く、針につけたオキアミは比較的早い段階で盗られてしまうようだ。試しにバケツに水を汲んでみると、前回までの釣行時より明らかに「ぬるい」。


私が汗だくになって撒き餌の調合作業を行っている間に、早くもメバルマンが手のひらサイズにも満たない木っ端メジナを釣り上げた。魚たちの活性OK!今回は、あまり撒き餌を撒き過ぎると釣りたくもない魚ばかりが釣れるパターンのようだ。


一七三〇時頃になってようやく準備を整えた私も、お気に入りのキャンピングチェアーに腰かけて、のんびりと勝負を開始する。既に酸素ポンプをセットしたバケツには、その後メバルマンが釣り上げた手のひらサイズのメジナが二枚、メバルマンがそいつらを明日の夕食にするために私の華麗なる包丁捌きが実行される最期のときを静かに待っている。

少量の撒き餌を私の釣り座正面よりもテトラ寄りに何度か撒いて、テトラに潜んでいるはずの「大物」をおびき寄せながら仕掛けを投入する。テトラから少し離れた場所で小魚たちが思わぬご馳走に熱狂している様子に気づいた大物たちが、居ても立ってもいられなくなってくれればしめたものだ。


針に刺したオキアミが私の気づかないうちに何度かタダ盗りされたあとで、未だ点灯してないハピソンがススッと水面下に沈みこんだ。いつもなら間髪入れずに私の手首がしなるところだが、ここはグッと我慢だ。テンカウントほど待ってから軽めに合わせを入れてやると、獲物が底の方へ逃げ込もうとする、あの懐かしい感覚がリーガルを通じて私の右腕に伝わって来た。

陸揚げされたのは二〇センチメートルほどのメジナだったが、今年に入ってから私が初めて釣り上げたメジナでもある。このまま自分は一生まともな魚を釣り上げることが出来ないのではないか?と不安におののくスランプまっしぐらの釣り人にとっては、多少なりとも未来に希望が見えて来るような、ありがたい獲物であることには違いない。


そいつをバケツに放り込んでから間もなく、またしても私の(点灯前の)ハピソンがススッと水面下に沈みこんだ。しかもさっきより沈み込むスピードが速い。しめしめ、大物か?

あろう事か少々気の緩んでしまっていた私は、ついついテンカウント待つのを忘れていつものように手首を返してしまった。例によってしばらく力比べになった後で宙を舞った仕掛けが私の足元にポトンと落ちて来る。

クソッタレ!性懲りもなく何をやってるんだ私は!


何だか一生取り返しのつかないヘマをやらかしたような気分で、私はキャンピングチェアーに座り込んだまま思わず呻き声をあげた。そのまま一分間も頭を抱えていた私を待ち受けるその後の展開を、もちろんその時の私は知る由もなかったが・・・。


撒き餌をテトラ側に何度か撒いたら仕切り直しだ。間もなく、またしても私の(点灯前の)ハピソンがススッと水面下に沈み込む。今度は明らかに(点灯前の)ハピソンがテトラ方向へとゆっくり泳いで行く。

その様子をじっくり眺めつつ、ハピソンが私の正面から二米も左へ移動した頃合いを見計らって、私はごく軽めに手首を返した。獲物が逃亡を開始した。

少なくとも私が右腕に感じる引きのパワーは、さっきのメジナと大して変わらない。スランプが明けたのは分かったから、もう少し大物を釣り上げたいんだがな・・・。私は「やれやれ」と言った感じでリールのハンドルには手を触れず、リーガルを操作するだけのやり取りを開始したのだが、ハピソンがぐんぐんとテトラ方向へと移動しているのに気付いた私は、思わず立ち上がってリーガルを手にしたまま三米ほど右方向(つまりテトラとは反対方向)へと歩いて移動した。

その時、ハピソンの方にばかり気をとられていた私は全く気付いてなかったのだが、私が不意に近づいて来たので思わずこちらを見たんだろう、私の右隣で釣っていたメバルマンが、私のリーガルがへし折れんばかりに曲がっていると言って悲鳴を上げた!何だって!?


何が起きているのかよく分からないまま、竿を立てたうえで右に傾けてテトラにだけは逃げ込まれないようにする。そのうち獲物が私の足元の方へと反転したのを認めた私はリールで仕掛けを巻きにかかる。こちらの意図を察したのか、今度は獲物が沖の方へと逃げ出した。足元から五米ほど先の海面下を黒い影が横切るのが見える。ありゃ?何だかデカいのがかかってるぞ!

タナは五米ほどに設定してあったから、既にかなり浮き上がらせてしまった後だ。今さら(相手と違って)こちらが慌てる必要はない。ゆっくりリールを巻き続けているうちに、一瞬だけ水面に獲物が姿を現したのだが、明らかにメジナとは背びれの形状が違うやつだ。それでいて、マダラ模様のあいつじゃなくて、あ!銀色の魚体をしてるじゃないか!!


「よぉ、面白れぇやつがかかったぜ!」とだけメバルマンに知らせて、さらにゆっくりとリールを巻く。獲物が何者なのか私が認識してから三〇秒もかかっただろうか、水面上に頭だけ見せて呼吸困難に陥った獲物の正体に気付いたメバルマンは、信じられない!とでも言わんばかりの声にならない嬌声を上げてタモ網を私に手渡してくれた。

滅多にお目にかかれない獲物を前に、今にもやつが最後の力を振り絞って反撃に出るのではないか、とメバルマンは不安を口にしたが、エラまで浮かせてしまえば、ここで私が何か特別なヘマでもやらかさない限り勝負はもうついている。

私はセオリー通り、獲物のすぐ下にタモを構えたうえで、一度浮かせた相手を海面下に戻してやって自分からタモの中にエントリーさせるという、ガイドブックで学んだ高等技術まで実践して、この勝負にケリをつけた。


ついに釣り上げたクロダイ。年無し間近の四八センチメートル!





釣りモノとしてクロダイを意識し始めてからおよそ一年、ちっともそいつが釣れない事に業を煮やした私は、既に日本中の堤防という堤防から「釣り上げることが可能な」クロダイなんて姿を消してしまったに違いない、とばかり思い込んでいたが、どうやらそいつは少しばかり早とちりだったようだ。

しかも私がこれまでに釣り上げたことのあるどの獲物よりも大きなサイズの「おチヌ様」をいきなり釣り上げる羽目になるとは・・・。うへー、全くこの世の中は何が起きるか分からない。


ところで、(その直前までの私のように)このサイズの獲物を釣り上げた経験のない釣り人には分からないことだろうが、まずこのサイズの獲物は、タモで掬い上げるときにマジで重い!

そしてこのサイズの獲物にもなると、陸揚げさせた後にその場でピチピチ跳ねたりしない。やつが暴れるときは「ペタン、ペタン」という音がする。

さらにそいつを釣り上げた後には、そいつを釣り上げるまでに経験しなければならない苦労の上を行く苦労が待ち受けている。つまり、背骨が太いうえに固過ぎて血抜きの作業がちっとも上手くいかない!

処理を終えたそいつの体が小型のクーラーボックスに入らないこと自体は大した問題じゃない。頭としっぽを切り落として三つに分けてから放り込めばいいだけのことだ。バラバラ殺人事件の犯人はなぜそんな事をするんだ?たぶん現場で私と同じ事を考えるんだろう。


ついでに、釣り上げた獲物に対する感謝の気持ちを忘れずに、エラと腹ワタ以外の全てを食材として活用することを信条とする私のような敬虔な釣り人は、そのサイズの獲物はとても一日では食いきれない、という問題も抱える羽目になる。


ちなみに、今回釣り上げた「おチヌ様」は、私の自宅でお刺身に変身。





この一皿だけで軽く五人前はありそうだろ?実際には同じ「おチヌ様」からさらにもう一皿だ。





二日に分けて賞味したが、捌いて一日冷蔵庫で寝かせた方が身の締まりがよくて食味がいい。

いつかの尺メジナ同様、背側は絶品なんだが腹側は少しばかり臭みがある。今度から磯魚は背側だけを刺身にして腹側は別の味わい方を考えることにしよう。


ところで人けのない釣り場でも、大物を釣り上げるとそいつを嗅ぎつけた人々がどこからともなく寄って来ることも分かった。一人は一二歳くらいの太った陰気そうな少年で、私たちの後ろを素通りして灯台の根元に座り込んでしばらく私たちを凝視してから何も言わずに去って行った。

正直なところ、そこにいる間、彼は明らかに記念撮影の邪魔だったんだが、無事に撮影も終了。





もう一人、護岸側で釣りをやっていた夫婦の亭主の方が陽気な笑顔を浮かべながら近づいてきて「その魚は何だ?」と私たちに聞いた。奥さんは日本人だったが、この亭主は白人で、私がアメリカから来たのか?と聞くと「イングランドだ」と答えた。

私が英語で、彼の祖国のEU離脱の話を持ち出すと彼は大喜びしていたが、まぁ、それも含めて彼との会話はとにかく楽しいものだった。この付近で暮らしているというそのハンサムなイングランド人は、ひとしきりの会話の後で改めて私たちにわざわざ祝意を表し、握手までしてくれたうえで最後にもう一度「その魚の名前は何デスカ?」と私たちに尋ねてから去って行った。


そりゃそうと、メバルやカサゴやアジと違って、このサイズのおチヌ様の現場における「後処理」は、それはそれは大変な作業だった。いつものように、まずはエラを手で引きちぎろうとした私は、頑丈なエラ骨(鰓弓と言うらしい)の棘が指先にグサリと刺さって悲鳴をあげた。安物の出刃包丁で背骨を裁断するのはとんでもない力仕事だった。巨大な鱗は変な触り方をすると指がスパッと切れてしまいそうなくらい鋭利なエッジをしていた。


それらの作業に疲れ果てて、それ以上フカセ釣りを続ける気力が失せた私は早々にリーガルを片付けて、購入して以来、もう丸一年も使われることなく私の自宅で新品状態のまま保管されていた投げ竿のテストに着手した。


ノーブランドの四.二米、二〇号から三〇号の錘に対応しているというその投げ竿に、新調したダイワのクロスキャストをセットして、出来ればイシモチがかかってくれれば言う事なしなんだが、などと甘いことを考えながら、二五号の海草テンビン仕立ての仕掛けにアタック5で調達したアオイソメまで刺して二〇回ほどキャストしてみたが、私の技術では六〇米ほどしか飛ばすことが出来なかった。

まぁ道糸が五号でスピニングリールだから、平均的な釣り人のキャストもそんなものかもしれないが。


今回、初めて「力糸」なるものも使ってみることにした。自宅で洗濯バサミを使いながら「ブラッドノット」に挑戦したわけだが、フルパワーでキャストしても結び目から先だけがはるか彼方に飛んで行くような事もなかった。その事実は私にとってなかなかの収穫だった。


釣り場を撤収してガストで夕食を済ませてから舞い戻って車中で仮眠。〇二〇〇時過ぎには起き出して、前日と同じポイントで朝マズメを狙ってみたが、私もメバルマンも小魚一匹釣れず。

そもそもテトラ側は東側に面しているので、朝は日当たりが良すぎてダメだ。ここは夕方から夜にかけて訪れたいスポットだ。


日も高く上り、私がフカセ釣りを諦めて前日同様に投げ竿のテスト(今度は追い風参考で軽く三色は飛んでいったが)をしていると、地元のヘチ釣り師がキスでも狙っているのか?と声をかけて来た。

私が正直に、ただキャストの練習をしているだけだ、と答えると、その細面にメガネをかけた初老のヘチ釣り師は私のキャストフォームについてあれこれ意見を始めたばかりか、何を思ったのか、私の仕掛けケースに居並ぶ「円錐ウキ」を見咎めて、「円錐ウキ」はどういう状況で使えばいいか知ってるか?などと「こ・の・私・に」ウキ釣りに関するレクチャーを始めた。

ちなみに、そのヘチ釣り師様に、「この堤防では今年のクロダイの状況はいかがですか?」と聞いてみると、今年はさっぱりだな、などとエラそうにおっしゃるので、よっぽど私の前日の獲物を見せながら「あんたの分はもう残ってないかもな」と謝ってあげてもよかったのだが、まぁ、そこは紳士の対応に徹しておくことにした。

「あんたは道具だけは立派なのを揃えてるな」と言われたときには、さすがに回し蹴りでもきめて海に蹴り落としてやろうかと思ったが・・・。


まぁ、そんなことはともかく、その見知らぬヘチ釣り師に開放されてからも飽きるまでキャストの練習に明け暮れた私は、メバルマンが獲物とのご対面を諦めた頃合いを見て、その場を撤収することにした。ヘタクソはヘタクソなりに頭を使って得た私の釣果を祝福するかのように、空はどこまでも青く晴れ渡っていた。


何か質問は? OK。諸君の健闘を祈る。

以上だ。




April 30, 2016


やぁ、諸君。私がプッシー大尉だ。

先週、城ヶ島の黒島岸壁で小メバルや小タナゴなど釣って遊んでから、自宅に帰って竿(ダイワ製リーガル)を洗おうとしてみたら、また穂先の先端が二センチメートルほどのところで折れていた。





リーガルの穂先が折れたのはこれで三度目だ。だが、今回に関しては、折れてしまった理由に全く心当たりがない。ひょっとしてこの竿は、そもそも普通に使ったり運んだりするだけで簡単に折れる竿なのか?


一度目は今回と同じく先端から二センチメートルほどのところで折れただけだったので、上州屋の親切な店員が部品(トップガイド)代だけで手早く修理してくれたが、二度目はさらに五センチメートルほど手前で折れてしまったので、穂先(一番節)ごと交換するために上州屋経由でダイワに修理を依頼した。


そのときの明細。





部品代は仕方ないとして、その他の費用は私の物価に対する厳しい評価基準に照らし合わせると少々目に余る。そしておそらく私のリーガルは、これから先もシャープペンシルの芯よろしく何度もポキポキ折れてしまうに違いない。

わざわざその度に上州屋に持ち込むのも面倒だ、というわけで、自分で修理に挑戦すべく、近所のホームセンターで「エポキシ系」の接着剤を購入。





「エポキシ系」の接着剤を使用するのは、次にまた穂先が折れたときに穂先に接着されているトップガイドを確保するためだ。つまりこの主剤と硬化剤を混ぜ合わせて使用するタイプの何やら取り扱いが面倒な接着剤は、固着したあとでも加熱してやれば溶解するので、折れた穂先からトップガイドのみを取り戻すことが出来る。

折れた先端部を沸騰する鍋で三分ほど煮込んでやってから、トップガイドを(素手で触ると熱いので)箸で挟んで穂先の折れカスをペンチで引き抜くと、簡単にトップガイドが確保できた。よしよし、ダイワの修理担当者も私から安くない修理代を巻き上げておきながらも、ちゃんと「エポキシ系」の接着剤を使って修理してくれていたようだ。


あとは接着剤の説明書き通りに主剤と硬化剤をしっかり混ぜ合わせ、向きと順番に細心の注意を払ってその他のガイドを穂先(一番節)に通してから先端部に塗りこみ、最後に確保したばかりのトップガイドに先端部を挿入する。





今のトップガイドは、もともと一度折れたときに上州屋の親切な店員が店の奥から持って来てくれた「ぴったりサイズの」トップガイドなので、竿の先端側を削るとか、そういう面倒な手順はいらなかった。


速乾性の接着剤を選ばなかったのは作業にゆっくり励むことを優先したためだが、おかげで固着するまでには一〇時間ほどかかるようだ。いずれにせよ、作業結果が実用に耐える程度かどうかが判明するのは、次に出かける釣り場ってわけだ。


何か質問は? OK。諸君の健闘を祈る。

以上だ。




April 10, 2016


やぁ、諸君。私がプッシー大尉だ。

メバルマンと沼津の足保港へ。


初日は日没が一八〇〇時、満潮が一九〇〇時で、現地入りは一六〇〇時。ケチのつけようのない完璧なスケジューリングだ。

便所わきに車をとめて早速、堤防へ。角の手前はクロダイ狙いらしきウキ釣り師で満席。角から先は、先端の方はマダイ狙いらしきカゴ釣り師が占領しているが、手前側は余裕がある。





角を曲がってすぐのポジションではベテランの風格漂う初老のウキ釣り師(「グレ紳士」と呼ぶ)が糸を垂れている。丁重に挨拶をして右隣に入らせていただく。


事前に情報収集してみたのはいいが、この堤防は足元の水深が八米だというホームページもあれば、いや、足元から二〇米の水深がある、とか書いてあるホームページもあって、情報が錯そうしている。ひとまずリーガル1.5号を手早くセットアップして素針のまま水深のチェックから入ったが、私たちの釣り座では足元から五米ほど先で、やはり水深七、八米といったところのようだ。

私は海底すれすれを、今回、四.五米の磯竿を新調したメバルマンは、水深五米ほどをタナに設定して試合開始。


例によってネンブツダイを釣り上げては不満を漏らすメバルマンを見て腹を抱えながら笑う私の仕掛けには小魚一匹かからない展開だ。一七三〇時頃に隣で釣っていた「グレ紳士」が釣り道具を片付け始めたのだが、そんな私たちを哀れに思ったのか、「メジナでも狙ってるのかい?」と話しかけて来た。

「チヌを狙ってるんだが、今日の潮はあまりよくないねぇ」なんて風に答えてみたいところだが、こんなところでくだらない見栄を張っても仕方がない。いやぁ、何か釣れたらいいなぁ、なんて思って・・・、とか何とか、謙虚な態度に徹して答えてみると、「グレ紳士」の本日唯一の釣果であるメジナ一枚をくれる、と言う。うひゃー、何て親切な「グレ紳士」!

「グレ紳士」は「そんなに大きくないけどな」なんて謙遜しながら、今まで海中で生かしてあった二五センチメートルほどのメジナの入ったビクを、私の脚元に向けて惜しげもなくひっくり返した。


ありがたく押し頂いてから、翌日の夕食で刺身にするためにその場でエラとワタを取り除く。





自分ではちっとも釣れないくせに、しっかり包丁とまな板だけは持参している用意のいい隣の釣り人に「グレ紳士」も少々面食らった様子だったが、三〇秒血抜きをするだけでも風味が全然違う、とか、その場面でも大ベテランならではの、大変ためになる「釣り人の知恵」を私たちに伝授してくれた。


「グレ紳士」がお帰りになり、日没の時刻も近づいてきた一七四五時頃に、今度は私の仕掛けに唐揚げサイズのカサゴが三尾続けてヒット。





こちらもエラとワタを取り除いてジップ袋に密封し、さらに新聞紙にくるんで氷の入ったクーラーボックスへ。釣った魚を少しでも美味しくいただくために、ドブ漬けはもうやめだ。


翌朝使う分の撒き餌を作ってから釣り座の清掃を終え、一九〇〇時には撤収して沼津市街の「卓朗商店」へ。

私がオーダーしたのは、特製醤油らぁ麺・九八〇円。





値段は微妙なラインだが、店主の丁寧な仕事ぶりを覗わせる、塩らぁめんを始めとするほかのメニューもつい気になってしまう一品だ。


その後、例の便所わきの駐車場まで舞い戻って車中で仮眠。〇五〇〇時の日の出と〇七〇〇時の満潮を考慮して〇三三〇時に起床し、再び堤防を目指す。


堤防の曲り角手前には、今度はイカ釣り師らしきルアーマンが所狭しと並んでいる。角から先にはまるで人影がなかったのだが、目ぼしい場所はちゃんと水汲みバケツで「場所取り」された後だった。

なぜか先端部一〇米ほどは空いていて、そこから手前に等間隔で水汲みバケツが二〇米くらい整列している。先端部を私たちの釣り座にしてもよかったのだが、メバルマンと協議の結果、そこはたぶんあまり釣れないから空いてるんだろう、という結論になって、私たちは整列した水汲みバケツのすぐ手前(左)側を陣取った。


暗がりのなか、私たちが準備をしていると、黄緑色のおしゃれなウィンドブレーカなど羽織った、格好だけは一人前の四〇代とおぼしき一人の釣り人が私たちのさらに手前(左)側に釣り座を構えた後で私の方にやって来て、生け簀を狙うのか?と聞いて来る。

リーガルと、ミニカゴをセットした2号の磯竿しか持参してない私は、私の正面、一〇〇米ほど前方に見える生け簀までは到底狙えないので、私たちは手前の方で釣るだけだ、と正直に答えたのだが、沼津の堤防ではこういう場合、そんな風に正直に答えてはいけないらしい。何を勘違いしたのか、その釣り人は、ベイトリール式のカゴ釣りタックルを組み終えると、私たちのさらに右隣の釣り座から見て正面五、六〇米ほどの位置を目がけて悪びれもせず仕掛けをぶん投げた。この野郎、それじゃ私が三〇米も正面に仕掛けを投げたらお前の仕掛けがからまっちまうじゃないか!

実際に、その見掛け倒しの釣り人の正面には生け簀がないので、生け簀周りに居着く魚を狙いたければそうするしかない。だからそいつは投げるのがヘタクソなわけではなくて、ちゃんと分かったうえでそうしているのだろう。だがベイトリールを使っている割には飛距離が物足りない気がしないでもないのは、たぶんそいつが、結局その程度の実力の釣り人だからだ。


おまけにその目障りな男は、何回か仕掛けを投げて回収しては、大音量でラジオをつけっ放しにしたまま、すぐにどこかへ行っていなくなってしまう。釣りに集中する能力がないうえに、ひょっとするとそのラジオの音が魚を遠ざけてしまうかもしれない、という事にも頭が回らないらしい。あるいは手前の方の魚を狙ってる私たちに対する嫌がらせか何かだったのだろうか。だとしたら、法律さえ許してくれるなら真っ先に殺してやったのに。

その後も気の向くまま右へ左へと仕掛けを投入し続けて、自分の左隣のカゴ釣り師と、それから後からやって来て私たちの右隣に入ったカゴ釣り師までご丁寧に「オマツリ」に巻き込んだうえで、最終的にその見掛け倒しでマナーの「マ」の字も心得ていないマヌケはイワシ一匹釣り上げることなく帰って行った(まぁその点については私たちもあまりエラそうなことは言えないが)。


ところで私たちの右隣にやって来た初老のカゴ釣り師は、相変わらずネンブツダイばかり釣り上げる私たちを尻目に、ちゃんと「正面に」四、五〇米ほど仕掛けを飛ばしてマダイを3枚仕留めていた。すげー!!私の右手で釣っていた好奇心旺盛なメバルマンが氏にインタビューを敢行し、ツケ餌とタナを上手に聞き出してくれたので、いつかまたこの堤防に来ることがあったなら、私たちもマダイを狙ってみることにしよう。


夕方から朝の一〇〇〇時まで粘って小物のカサゴ3尾という散々な戦果に終わってしまったわけだが、たまにウキがスーッと沈んで行っては、合わせを入れても針にかからない(つまり口に入れたエサを吐き出されたってことだろう)、というシーンを何度か経験したので、ネンブツダイではない「釣れるとうれしい」魚もそこにいたのに違いない。

道具を片付けていてちょっと思ったんだが、水深が深いうえにネンブツダイばかり食って来るので、エサ針を早く沈めたかった私は、針から三〇センチメートルほどのところに3Bのガン玉を打ったんだが、そいつが良くなかったのかもしれない。まだ水温が上がりきらないシーズン序盤に獲物にしっかりエサを食わせるには、もっと軽い仕掛けで勝負を挑むべきだったかもしれないな、などと反省点を話し合いながら、私とメバルマンはその地を後にした。


何か質問は? OK。諸君の健闘を祈る。

以上だ。




November 1, 2015


やぁ、諸君。私がプッシー大尉だ。

例によって「メバルマン」と下田の犬走島堤防へ。


一五三〇時に現地に到着すると、いつもと違って駐車場は一台分しか空きがなく、堤防は釣り人で賑わっている。

片手間で泳がせ釣りでもやろうか、と、イカがよく釣れるとか言う島寄りのポジションを押さえたかったんだが、そこには既にほかの釣り人がいる。私たちは中央の曲がり角から少し島側に寄った、いつだったか私が尺メジナを釣り上げたあたりに釣り座を構えることにした。


一六〇〇時、試合開始。





沼津で余った粗挽きサナギとオキアミがブレンドされた撒き餌を足元に撒くと、あっと言う間に小メジナが殺到し始めた。相変わらず魚影の濃い釣り場だ。


針に刺したオキアミはあっと言うまにタダ盗りされるので、いつものように秘密兵器を投入。





初めて実戦投入した福浦堤防では、そこそこ効果があったと思うんだが、今日は何をどれだけ丁寧に針に刺してもタダ盗りされる展開が続く。


思い切ってタナを六.〇米ほどまで落として釣り始めた頃に、私の点灯前のハピソンがズボリと海面下に消し込んだ。さぁ、お客さんだ。

一.五号のリーガルが限界までしなる。うへー、こいつはなかなかの大物に違いない。深みに潜り込んで逃走を図ろうとするスタイルからして獲物はメジナだろうか?根に張り付かせまいとリーガルを煽ってリールをゴリ巻きしてやると、今度は足元の方に向かって突っ込んでくる。あれ?メジナじゃないな。少しイヤな予感がする・・・。


私のリーガルのしなりっぷりに俄然興味を示した、隣で釣ってた地元のベテランと思しきおじさんが「いったい何だ?」なんて呟きながら私の獲物が海面に姿を現すのを心待ちにしている。おいおい、勘弁してくれよ。こいつはどうにも最後に赤っ恥をかかされるパターンじゃないか!

はたして、案の定、ついに三.〇号の道糸と二.五号ハリスの組み合わせからなる私の太仕掛けの前に為すすべもなく海面に浮きあがって来たのは、(釣った本人以外の)そいつを目にした釣り人の誰もが思わず笑顔を浮かべずにはいられない釣り場のアイドル「アイゴ」。





三七センチメートル!本当に無駄にデカいやつだな。


タモを手伝いましょうか?とどこからともなく駆けつけてくれた心優しい釣り人氏にお礼を言いつつ丁重に申し出をお断りし、三浦フィッシングセンターで思いつきで購入した安物のアミを手にそいつを自力で掬い上げたんだが、針が安物の網目にひっかかってしまって何をどうやっても外れない。

ヘタクソな釣り人がリリースにもたついてしまうことは、その獲物にとって死を意味する。そんなときは相手がアイゴと言えども申し訳ない気持ちでいっぱいになるものだ。すぐに忘れちまうけどな。


メバルマンが極小ネンブツダイを釣り上げて投棄した頃に本日二尾目のお客さん(投棄)。





それから間もなく、またしても私の点灯前のハピソンがズボンと海面下に沈み込んでリーガルがしなった。例によって方向性の一貫しないうろたえぶりで逃走を図るそいつを浮かせるために、ため息をつきながらリールを巻く。

見覚えのあるマダラ模様を認識した私が苦笑しながら、今度は私の獲物に興味を示さないでくれよ、と祈る気持ちで隣のベテラン氏の方を振り返ると、しっかりこちらの様子を見ていてくれたベテラン氏は私が助けを求めているとでも思ったのか、「タモを手伝おうか?」と私に声をかけてくれた。

大変ありがたい親切な申し出に感謝の言葉を告げつつ謹んで辞退し、再度、三浦フィッシングセンターで思いつきで購入した安物のアミでそいつを取り込む。


さっきのより小物(投棄)。





ところでこの釣り場には基本的にタモ入れはみんなで協力しながら、という不文律でもあるのか、みんな親切な釣り人ばかりだ。もっとも、そこで彼らの厚意に甘えてしまっては、いざ自分ひとりでタモ入れまで完了しなければならないという状況下で己の経験不足を恨みながら泣きを見ることになる。

私はせっかくの親切な申し出を断られたことで彼らが気分を害しなかったことを心の底から祈るほかなかった。


日が暮れる頃には風が出てきて身体がどんどん冷えて行くうえに海面が波立ち始めてウキでアタリが全くとれなくなった。その頃には殆どの釣り人が帰り支度を始めて、ひとり、またひとりといなくなっていく。

満潮になる一九〇〇時前後を境に、私もメバルマンも付けエサがちっとも盗られなくなってしまったのを認識して、次に来たときはどこで釣ろうか、と、ひと通り堤防先端まで偵察し終えてから、翌朝使う分の撒き餌のブレンド作業を終えて帰り支度を始めた。


竿の仕舞い方は人それぞれだろうが、私は竿を海側に向けて仕掛けを海中に垂らしながら手前側からひと継ぎずつ元竿に仕舞っていく。あとは穂先を仕舞って仕掛けをリールで巻き上げれば収納完了、となったとき、まさに手元にあった穂先が突然、海面方向にギュインと曲がったので私は思わず罵り声をあげた。「クソッタレ!一体なんだ!?」

仕掛の先に視線を転じた私は思わず目を疑ったのだが、海面近くでそこそこいいサイズの根魚っぽいのがときに腹を見せながらもんどり打って暴れている。よく分からないが、食い意地が張り過ぎてるのか何なのか、エサも何もついてない私の素針をつまみ食いしようとしたおバカさんがいるようだ。まぁ事情はどうあれ、とにかく釣り上げなければ!


ところで、そんなシチュエイションで獲物を釣り上げた経験のある賢明な釣り人ならお分かりだろうが、そういうときにリールで仕掛けを巻き取ろうとしてはいけない。竿の長さが一.〇米かそこらしかない状態でそいつをやってしまうと、すぐにウキがトップガイドに到達して、そのまま巻き続けると間違いなく竿の先端が折れてしまう。そしてたぶん誰もがその状況下では海面の獲物の方に気を取られてるから、ウキの位置なんて把握できているわけがない。

まぁ私も今回の一件にかかる高い授業料(竿の修理代)については私の釣り人ライフにおける必要経費だと割り切って、次からは始めからちゃんと糸を手で手繰り寄せることにしよう。


そんなわけで道糸を手づかみにして引っ張り上げた私によって、ついに陸揚げされたのは、今までに数々のメバルを釣り上げて来た私の相棒「メバルマン」も真っ青の、驚きの極上メバル(二六センチメートル)。





こいつは何とも言えない複雑な気分だ。これだけの素晴らしい獲物なら是非とも私の「腕」で堂々と釣り上げたかったんだが・・・。まぁ、昔から「運も実力のうち」とか何とか言うけどな。


ジョナサンで食事をしてから二二三〇時に駐車場に舞い戻ると軽トラックが一台とまってるだけで堤防にはひとりの釣り人もいない。どうやらこの堤防は夜釣りの成果があまり期待できないようだ。


〇四三〇時に起床すれば〇六〇〇時の日の出には十分に間に合うかと思って仮眠を開始したが、〇四〇〇時にふと目を覚ますと既に駐車場は満車。大急ぎで支度をして釣り場に移動するが、前夜に私たちが釣ってたあたりを含めて曲がり角よりも島側は完全に他の釣り人たちに占拠されている。仕方がないので、いつだったか「メバルマン」が小メジナを釣りまくった中央付近の曲がり角に釣り座を構えることにする。

あっと言う間に釣り場を埋め尽くしてしまった回遊魚狙いと思しき早起きのカゴ釣り師たちを尻目に、私と「メバルマン」はひとまずフカセ釣りに励む事にする。開始後しばらくは何事も起きなかったが、夜が明けてから間もなく私のハピソンが海面下に消し込んでリーガルが弧を描く。


なかなかいい引きで期待をしてしまったんだが、釣り上げてみるとただのデブ。





まぁ、私に調理免許でもあれば極上の釣りモノに早変わりするんだろうが、もちろん投棄。


福浦堤防ではタイガー・ウッズも真っ青な精密ショットで、ほぼ完ぺきに等間隔でウキを並べて見せる、居並ぶベテランカゴ釣り師たちに呆然とさせられてしまったが、この堤防なら隣の釣り人とは適度に間隔も空くだろう、ということで、そいつを投げるとどこに飛んで行くか分からないような私も、朝の回遊魚狙いで遠投カゴ釣り仕掛けは持参してあった。まぁ豆アジ一匹釣れなくても、カゴ釣りの練習だと割り切ってしまえば取り組む意味は十分すぎるほどあるってもんだ。

しばらくフカセ釣りに興じてみたものの、その後は例によってエサをタダ盗りされるだけで何も起きないので、私もカゴ釣りの「練習」に取り組むことにする。


少しでも集魚効果が高まれば、と、そいつが海底まで届くようにヘタクソはヘタクソなりに考えて、撒き餌はチヌ用の配合エサとブレンドしたうえで砕いたオキアミ。ノーブランド、四.五米の四号磯竿(遠投仕様)に八号のウキ、カゴ、道糸はナイロンの六号といった組み合わせで仕掛けをぶん投げると、まぁ目測で三〇米かそこらは飛んでいく。

島寄りの釣り座でおそらく私と同じく回遊魚狙いでカゴ釣りに興じている釣り人たちの多くも私と同じくらいの飛距離だから、まぁそれくらい飛ばしとけば合格点ってことだろう。何より私の腕でもちゃんとまっすぐ飛んで行くところが素晴らしい。


何度か投げているうちにウキが沈んでは浮かぶような動きを三度繰り返したことを見てとった私は、空振り覚悟で竿を煽って大アワセを入れたうえで仕掛けを回収してみることにした。

リールをゆっくり巻いて仕掛けを引き寄せるが、お目当てのイナダがかかってる割には何の抵抗も起きない。何だよ、波にもまれてウキが浮き沈みしただけか、と思いながら、足元から五.〇米ほどの位置まで仕掛けを巻いて来たときに、ちゃんと獲物がかかっているのを認識した私は思わず歓声をあげた。はっはっは!「遠投カゴ釣り」で仕留めた初めての獲物だぜ、ブラボー!!


実にしょうもない初めてのブラボー(投棄)。





その後、一二〇〇時に撤収するまでに、私たちより陸寄りに釣り座を構えた四人組の釣り人は小メジナをたくさんと、ソウダガツオの活きのいいのを一匹釣り上げていたが、私の仕掛けには手のひらサイズのカワハギがかかっただけだった。


何か質問は? OK。諸君の健闘を祈る。

以上だ。







October 18, 2015


やぁ、諸君。私がプッシー大尉だ。

フグの猛威が収まったということで「メバルマン」と沼津へ。


静浦堤防というのが大人気らしいが、マイムスの掲示板なんか見てると、自分さえ良ければそれでいいとでも言いたげな、釣りの腕はともかく人間として下等な連中もそれなりに集まってそうなのでパス。

そういうわけでターゲットに絞り込んだのは、木負堤防、足保港、それに多比港の三か所。たぶんガラガラだろうから朝釣りは多比港、夜釣りは木負堤防が混んでそうなら足保港に向かう、というプランで、いざ現地へ。


一二三〇時に都内を出発、三時間ほどでマイムスに到着し、オキアミのブロックと粗挽きサナギを入手してから木負堤防の駐車場へと向かう。


とめられている車の台数から、それほど混んでなさそうだ、と判断して、料金徴収係の老人に、夜中に駐車場から出られなくなるような羽目にならないか、念のために確認してから、四〇〇円を払って駐車場の中へ。

ちなみについ先日まで夜中は出入り口を封鎖していたらしいが、ゲートを何者かに壊されちまってよぉ、と爺さんはお怒りだった。四〇〇円を惜しんで爺さんがいなくなってからこっそり入って来るやつらがそういう事をするんだろうが、途中でさっさと切り上げる事の多い私たちのような釣り人にとっても、できればゲートなんて設置しないでもらえるとありがたいのは事実だ。


初挑戦の木負堤防。





富士山を望みながら釣りなんて、なかなか風流だろう?まぁ日が暮れちまったら関係ないんだが。


堤防左手が沖側で、手前と先端近くは人気のようだが、中ほどは空いていたので適当に釣り座を構える。普通は手前が空いてるもんだが、どうやらイカ狙いの釣り人がそこに殺到しているらしい。

夜になると奴らは(そうすればイカが集まって来ると信じてるんだろうが)手持ちの集魚灯で所構わず海面を煌々と照らすので、率直に言って魚狙いの私たちには実に迷惑な連中だった。


さて、今回もどうせそこにはいないんだろう、とは思いながらも一応クロダイ狙いということで、メインはふかせ釣り仕様のリーガル(1.5号)。ふかせで何も釣れないときに退屈しないよう、ライトカゴ兼泳がせ釣り仕様のランドメイト(2号)も竿立てに待機させる。


前回の下田で余った撒き餌を軽く撒いて小魚が集まって来るのを確認してから試合開始だ。早速、工夫もなく中層に漂うだけの「メバルマン」の仕掛けにネンブツダイが続けざまにヒットする。


今回は活かしポンプを持参しているので「メバルマン」の釣り上げたネンブツダイ諸君には活き餌要員としての華々しい任務が待っている。もちろん大物フィッシュイーターが釣れるなんてまるで想定してないが(そしてその想定は正しかったが)、今回取り組むのはネンブツダイ君を弱らせないように針にかけては仕掛を投げる、という一連の動作の練習だ、と割り切れば、そいつは非常に有意義な試みってもんだ。


さて、メインのふかせ釣りではいつものように、あっと言うまに付け餌のオキアミをかすめ盗っていくやつらに業を煮やし、前回同様、作戦開始早々に「秘密兵器」が投入される。今回はスーパーマーケットの冷凍食品コーナーによく置いてあるイカとエビとアサリの入った中華料理用の具のパックを持参した。


ネンブツダイ共はイカやアサリもお好みと見えて相変わらずやつらばかりが釣れる。「メバルマン」が二〇匹以上、四号チヌ針を駆使して水深六.〇米にタナを設定している私ですら四、五匹やつらを海に投棄した頃だったろうか、目の前にぶら下げられたイカの切り身に目が眩んだ何者かによって、私の足元から七、八米の海面上でおぼろげに光り輝いていたハピソンが海中に引き込まれて所在なさげに泳ぎ始めた。

軽く合わせを入れてファイトを開始する。引き味からして超大物ってわけではなさそうだが、少なくとも活き餌サイズではなくて私の食卓に並んで然るべきサイズの獲物であることは間違いない。


三号ミチ糸と一.五号ハリスの組み合わせの前に為すすべもなく巻き上げられ、そのままタモによって回収された獲物は全く想定外のカサゴ。 ※翌日撮影





計ってみると体長二六センチメートル。尺には及ばないとは言え、堤防からこのサイズのカサゴが釣れるなんて考えたこともなかった私は、はじめはキジハタとかオオモンハタとかそういう名前で呼ばれるややマイナーな奴かと思っていたが、その釣り場を撤収してガストで紅茶を啜りながらタブレット端末で調べてみたときに、そいつが「カサゴ」であることを確信した。

すげー、魚屋にこのサイズが出回ってるのは見た事がない。アラカブとかガシラとか言われて稀少魚扱いされて、このサイズにもなると、ほとんどの客が黒塗りのセダンでやって来るような銀座あたりの高級料亭に優先的に回されてしまうので庶民の食卓には無縁なのに違いない。


その後、「メバルマン」にも私にもうれしい出来事は何も起きないので二一〇〇時までには翌朝分の撒き餌のブレンド作業を済ませて撤収。ガストで軽く食事をとってから多比港の駐車場へ。

たまたま通りがかった夜釣りの釣り人に教えてもらったんだが、駐車場は釣り船客用で、堤防釣りの釣り人は適当に路肩に駐車するのが習わしらしいので、そのようにして仮眠。


〇三三〇時には起き出して準備を開始する。荷物をまとめてカートに積んで、ちょうどカート一台分しか幅のないような堤防上を、ヘッドライトの灯りをたよりに誤って荷物をカートごと海にドボンと落としてしまわないよう細心の注意を払いながら釣り座へと向かう。

メインの堤防には手前側に二組の釣り人がいたが、先端の方はフェンスで阻まれていて立ち入り禁止のようだ(が、朝になって何人かの釣り人が侵入していた)。左手に分岐する突堤には先端部に一人いるだけでほかに釣り人はいない。狙いをつけていた、「つりなびうぉーかー」によれば大物のクロダイが何匹も仕留められたとか言う(そんなもの一匹も釣れなかったが)中ほどのポイントに釣り座を構えて仕掛けのセッティングに着手する。

ちなみに私たちの後から、私たちよりも先端に入りたい釣り人がカートを引いてやって来たんだが、私たちが一度荷物をどけてやらないと彼らはその先に行くことが出来なかった。まぁ何というか、釣り人同士の心温まる譲り合いの精神が求められる、とにかく幅の狭い堤防だってことだ。


準備が出来たところで魚の棲みつき具合など把握するために少し離れたところの海中をSUREFIREで照らしてみると、澄み切った海水を通して海底に大量のムラサキウニらしきのが転がってるのが見える。これってこっそり拾い集めてるとこを見つかるとペナルティーを喰らうやつか?

まぁ、持ち帰ったところで適切な調理法も分からないので私たちは見なかったことにしたんだが、夜明けと同時に先端の方から戻って来た初老の釣り人が私たちが釣りをやってるすぐ傍でタモでせっせとそいつを集め出したのは実に目障りだった。


試合開始後、まず私の次なる秘密兵器「オキアミダンゴ」に喰らいついて来てウキを沈めたのは一五センチメートルかそこらのチビカサゴ。





唐揚げ用にキープ。


あとはひたすらエサを盗まれ通しで、何時間も粘って豆アジが一匹釣れただけで、相変わらずネンブツダイかベラしか掛からない「メバルマン」共々、なかなかツラい展開だ。


だいぶ日が高く登った頃に私たちの右隣に一人の釣り人がやって来て、ウキのついた下カゴ仕様のサビキ仕掛けを二、三〇米ほど投げ始めたのだが、 その仕掛けが回収される度に結構な頻度で豆アジかスズメダイが掛かっているので、暇つぶしに私もランドメイトでその辺りを狙ってカゴ釣りに挑戦することにした。


仕掛けはオキアミが放出されるタイプのミニカゴ、二号錘(中通し)、三号ウキの組み合わせ。





まぁ、お隣さんとは違って何度投げてもちっとも釣れないのだが、「メバルマン」がペンチを貸してくれ、というのでベストのポケットをごそごそやってペンチを取り出していたときに、「メバルマン」が、私のウキが見えなくなった、とか言って騒ぎ出したので、さっきまでウキが漂っていたあたりを見てみると、たしかにそこにあるはずのウキがない。

私の手には何の魚信も感じられないのだが、試しに仕掛けを回収してみると、お隣さんのとそう変わらないサイズの豆アジがかかっていた。うへー、カゴ釣りで仕留めた初めての獲物は豆アジかよ!


ふかせで釣り上げた豆アジと2ショット(唐揚げ用にキープ)。





ところで当然のことながら、ウキがすぽっと沈む瞬間を目の当たりにする、というカゴ釣りの醍醐味を体験する機会を私から奪って台無しにした「メバルマン」は、「くだらんタイミングで話しかけるな!」と私にどやしつけられた。


その後、沖側ではなくて係留船が釣りの妨げになるので誰もそっちに釣り座を構えない港内側に釣り座を移して悪戦苦闘していた「メバルマン」は、昼飯時を過ぎた頃にもなってようやく私が釣り上げたのと同じ位の唐揚げサイズのカサゴを釣り上げた。

おまけに一四〇〇時にもなって完全に釣りに飽きてしまって帰り支度を始めた私が一部の荷物を車へと運ぶためにその場を離れている間にも、二〇センチメートル大の「魚屋サイズの」カサゴまで釣りあげた。こればかりは「メバルマン」もさぞや嬉しかったことだろう。


ところで私たちの周りでは「チヌ釣り師」と思しき釣り人たちがドボン、ドボンと突堤から団子を海中に投入して頑張っていたが、結局クロダイを釣り上げた釣り人は一人もいないようだった。

むしろ、メインの堤防のかなり手前側を陣取っていたカゴ釣り師たちがぽつぽつとソウダガツオを釣り上げていたようだ。「メバルマン」はともかく、私は完全にターゲットを見誤ってその釣り場を訪問してしまったらしかった。


何か質問は? OK。諸君の健闘を祈る。

以上だ。







September 22, 2015


やぁ、諸君。私がプッシー大尉だ。

例によって「メバルマン」と下田へ。ここのところ目も当てられないスコアが続いているが、今回は夜釣りと朝釣りのダブルヘッダーだ。腹を空かせた魚どもに目にもの見せてくれるぜ!


意気込みは十分に一一三〇時に東京を出発したのはいいが、下道もハイウェイも大渋滞だ。連休とは言え中日だから、という考えは少々甘かった。

釣り場近くの「上の山亭」にようやく到着したのが一七〇〇時ちょうど。もともとその予定はなかったが、開店直後で待たずに席につけそうなことと空腹に耐えかねて早めの夕食。


五目ラーメン(八〇〇円)。





二〇〇円増しだかで大盛りがオーダーできるそうだが、並盛で本当に十分だ。


その後、一八〇〇時過ぎに既に真っ暗な犬走島堤防に到着。みな明るいうちに帰ってしまったのか、釣り人の数はいつもと大して変わらない。

大急ぎで準備を済ませて試合開始。前回と同じく島の手前の沖側に釣り座を構えるが、何をどうやってもエサが取られないまま戻ってくるので二時間で見切って切り上げる。


予定ではこの後「朝釣り」を楽しんでから帰路に着くことになっているわけだが、明るいうちに帰路に着いても、またぞろ渋滞に巻き込まれていらいらするだけだろう。私たちは協議の結果、翌日は福浦堤防で夕方までのんびり釣って、暗くなってから下田を出発することにした。


翌日に備えてコンビニエンスストアで食料を、上の山亭向かいの釣具屋で追加のオキアミ冷凍ブロックを調達し、福浦堤防の駐車場へと向かう。二二〇〇時の段階で一台分の空きスペースしかなかったが、翌朝の状況を見る限り、ここは多少であれば路上駐車も黙認されているらしい。


「メバルマン」は早々に助手席で就寝するなか、私はシュアファイヤー片手に現地視察に向かう。事前に得た情報によれば駐車場からかなり歩かなければならないのがネックだとあったが、路面がきれいに舗装されている分、犬走島堤防よりも移動は楽だ。

犬走島堤防と違って、こちらは夜釣りの釣り人で溢れている。とは言っても、みな沖向きに釣り座を構えていて反対側はガラ空きだ。手前の方は誰も釣ってないので海面をシュアファイヤーで照らしてみたら、ボラの群れが海面近くを悠々と泳いでいる。

ボラのいるポイントにはクロダイあり、だ。いいねぇ、期待が持てるじゃないか。


二三〇〇時までには車に戻って私も就寝。どうせ熟睡できないだろうし、〇三〇〇時頃には勝手に目が覚めるだろう、と思っていたが、気が付いたら〇五〇〇時をとっくに過ぎている。くそっ!寝坊しちまったぜ!!


大慌てで「メバルマン」をたたき起こして、その割には悠長に車内で朝食を済ませ、それから荷物をまとめて移動を開始する。ちょうど同じタイミングで前に一組、後ろに一組の釣り人たちも堤防へと移動していたが、前の一組はフェンス内側へと向かう正解ルートを辿らずに 舗装された道をそのまま右折してくれたので、私たちがトップに躍り出た。少なくともこの三組のなかでは私たちが最もよい釣り座を確保する権利を得たわけだ。


〇五三〇時過ぎに堤防に到着。

沖側の先端から八割方は主にカゴ釣りの釣り人たちに占拠されてしまっている。





反対側はやはりガラ空きだ。


それはそうと沖向きの手前側には磯魚が住みついているという情報もあって(ちょうど夜のうちにボラが泳いでいるのを確認したあたりだ)、私はむしろその辺りを本命視していたから、まぁ希望通りの釣り座がまだ何とか空いていたってわけだ。


すぐ右手(先端側)でルアーを振っていた釣り人に丁重に断りを入れて釣り座を確保する。私たちの後ろの一組は私たちのさらに手前側(つまり左手)に入り、道を間違えた先頭のカップルは、ルアーマンのさらに先端側(右手)に少々強引に入り込んで釣り座を構えた。

道を知らないだけあって、マナーもあまり心得てない連中だ。


あわよくば、いいサイズの「回遊魚」狙いということで、四号遠投磯竿仕込みのカゴ釣りタックルも用意してはいるものの、まずは手堅く一.五号の「リーガル」でウキフカセから着手する。「メバルマン」もウキ釣りからスタートだ。


私の用意した今回の付け餌は「Mサイズ」のオキアミ。そしてハリスはチヌ針一号とフロロ一.五号の組み合わせだ。

常に大物狙いで、前々回まで四号針と二.〇号のラインのセットに「Lサイズ」のオキアミ一本で勝負して来た私にしては、はっきり言って「弱気な」仕掛けだ。そりゃそうだろう、ここ三ゲームほど、ろくに小魚すら針にかけられない展開が続いてるんだから・・・。


いつものチヌがどうたらとか言う名前の集魚剤は今回はお休み。ブロックのオキアミが既に横たわる新調した四〇センチバッカンには今回初めて使用する「粗挽きサナギ」を投入してみることにする。

現場で初めて袋を開封した私は、その強烈な臭いに思わず身をのけぞってしまったが、ブレンド作業を終えて試しに海面に撒いてみると、あっと言う間に無数の小魚が殺到してそいつを貪り始めた。ふむふむ、今回は何とかまともな釣りが出来そうだ。


二〇センチメートルほどのカワハギも足元を泳いでいるのを見つけて魚影の濃さに舌を巻きつつ、私が竿やタナの調整に勤しんでいる間に早くも「メバルマン」が一〇センチにも満たないイシダイの稚魚を釣り上げた(リリース)。


それから間もなく、釣り座から見下ろす限り海藻が途切れている足元から五〜一〇米ほど沖の水深六〜七米付近を狙い澄ました私のリーガルもほどよく曲がり、仕掛けが右に左にと小気味よく泳ぎだす。


釣り上げたのはイトヒキアジの幼魚。





さすがは下田湾だ。珍しい獲物がかかってくれるじゃないか。


はるか堤防先端の方に時折目をやると、コンスタントにソウダガツオらしき銀色の魚が釣り上げられているのが見える。いつだったか網代の呑み屋で口にしたことがあるんだが、まぁ食味という点でソウダガツオは私にとってあまり魅力的な釣りモノとは言えない。

せっかく大がかりなカゴ釣り仕掛けを振り回してまで狙うんだったら、やはり大サバ、大アジあたりを釣り上げてやりたいもんだ。もちろんイナダなんて釣れてくれたら何も言うことはない。


そして私たちの周りではまるで魚が釣れてる気配がないなか、続けて私の仕掛けにかかったのは二〇センチメートル弱の「小メジナ」。





三尾連続で同じサイズの「小メジナ」が続いたところでぱったりと釣れなくなってしまったが、エサはきれいに盗まれる。


そこで私が小ざかしい泥棒対策の秘密兵器として取り出したのは、いつだったか夕飯の焼きそばを作ったときに余った「剥きエビ」。





ついでにハリスも四号針と二.〇号ラインの組み合わせに交換したうえで、道糸も二号から三号に増強する。いつもの「大物狙い」のスタイルにシフトするってわけだ。


さて、しばらくは剥きエビと言えども器用に盗み去る怪盗どもに煮え湯を飲まされていたわけだが、ついに私の〇.五号の円錐ウキがすっぽり海面下に消し込んだ。

暫く引きを楽しんでからするするとリールを巻いて釣り上げてみると、かかっていたのは二〇センチメートルのキュウセン。





暫く「チョイ投げ」に挑んでない私にとっては、初めて釣り上げる珍客だ。

これまでに散々釣り上げたクソベラとは違って西の方では人気の釣りモノらしいが、そうは言ってもこの私が全知全能を傾けて秘密兵器を投入してまで釣りあげる獲物としては、いささか貫禄不足の感が否めない。


続けて「小メジナ」のくせに私の秘密兵器に食らいついて来た、またしても二〇センチメートルほどのうっかり者を釣り上げて、「まったく生意気なやつだぜ!」と毒を吐きながらも夕食のおかず用にちゃっかりそいつを「トランク大将」に放り込んでいた頃に、「メバルマン」が私たちから見て二組向こうの先端側でサビキ釣りを楽しんでいたカップルのどちらかの竿に「クロダイ」がかかった、とか言って騒ぎ出した。

サビキ仕掛けにクロダイがかかるなんて事があるのか!?私はもう一度「メバルマン」に確認したが、三〇センチを優に超える眩いばかりの銀鱗に覆われた凛々しい魚体をたしかに見た、と「メバルマン」は主張する。

もっとも海面から姿を見せるや否や、あっと言う間に仕掛けが外れてそいつは逃げて行ってしまったそうだが、私の釣り座のすぐ近くの海中をサビキ仕掛けにかかってしまうようなウブなクロダイが泳ぎ回っている、というのは聞き捨てならない情報だ。

私はそれまでにも増して「秘密兵器」を丁寧に針に通して海藻の切れ目近くに投入した。


まさに「劇的な」展開だった。間もなく私の〇.五号の円錐ウキが二〇センチメートルほど海面下に消し込んだかと思うと、あちらへこちらへと所在なさげにゆっくりと泳ぎだした。間違ってもメジナの動きじゃねぇぜ!こいつはもしや・・・?

私は軽く手首のスナップを利かせてアワセを入れた。さぁ、ファイト開始だ。


「小メジナ」どもとは明らかに一線を画するパワーでそいつが抵抗を始める。しばらくはリーガルをただ立てて弾力を使いながらいなす。メジナと違って底へ底へと突っ込む感じが伝わってこないので、ついリールを巻くのを忘れてしまうくらい緊張感のない展開だ。

だがリーガルの曲がりっぷりは、どっちに逃げればいいのか分からないまま暴れ回ってるそいつが、間違ってもつまらない小物なんかじゃないことを証明している。未だにサビキ仕掛けにクロダイがかかったという「メバルマン」の証言を少し疑っている私は、いち早く私のタモ網を片手に駆け付けた「メバルマン」の方を振り返って声をかけた。「よぉ、本物のクロダイってのはこいつの事じゃないのかい?」


やれやれ、私はいつかの犬走島堤防で学習したんじゃなかったっけ?私がたぶん私の言動を含めてこちらの様子をそれとなく覗っていた大勢の釣り人たちの間で赤っ恥をかく羽目になるまで、そう時間はかからなかった。


間もなく海面に姿を現して私に絶望のうめき声をあげさせた、あのお魚(撮影後、投棄)。





強いて言うならば、前回は途中でハリス切れだったが、今回は左手でリーガル、そして右手で決して軽いとは言えないダイワの五.〇米仕様のランディングポールにセットされたタモ網を操って単独での取り込みを成功させたことは貴重な経験だった。

今回初めてそいつで(落し物とか海藻ではなくて)獲物を掬い上げたんだが、実際、五.〇米のポールはマジで重い。そして伸ばしきった状態では実によくしなる、と言うかブレるので本当にコントロールが難しい。それに堤防でどんなに釣りの経験を重ねたって、そんなタモ網を手足のように使いこなす釣り人なんてまず見かけることはないから、お手本もなしに自分で全て操作方法を考えなければならない。


とりあえず獲物が網に入ったら片手でポールを保持して、もう一方の片手でポールを縮めて来ればいいことくらいは私も知ってる。あれ?その場合、それまで持ってた竿はどうすりゃいいんだ?

いやもう、本当にタモ網のオペレーションってのは奥が深い。


同じ釣り座で一〇時間近く粘ったが大した獲物にも恵まれず、さすがに釣り座を変えたくなってしまった私は「メバルマン」と相談して、堤防中央の反対側(湾内向き)に移動したものの、「夕まずめ」まで竿を振り続けて小イワシ一匹釣り上げただけだった。

そして同じころ、反対側の沖向きに(たぶん朝から)釣り座を構えていた釣り人が、アジだかサバだかの結構なサイズのやつを二、三尾続けて釣り上げているのを見て、多少の睡眠時間と引き換えに失ったものの大きさを肌で感じながら、私たちは帰り支度を始めた。


もっともフカセ釣りの合間に八号のカゴをドッキングした「カゴ釣り」仕掛けで遠投にチャレンジしてみたものの、ちっとも真っ直ぐ飛ばすことの出来なかった私は、周囲の釣り人に迷惑をかけないように、しばらくそのタックルでカゴ釣りにチャレンジするのはやめておく事にした


何か質問は? OK。諸君の健闘を祈る。

以上だ。








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