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July 16, 2017


やぁ、諸君。私がプッシー大尉だ。

メバルマンと去年の七月以来となる下田の犬走島堤防へ。いつものように仮眠を挟んで夜釣り(土曜日)と朝釣り(日曜日)のダブルヘッダーだ。


実は今年に入ってから六月に大原漁港、先週は乙浜漁港と、既に二回出陣しているんだが、私は全く結果を出せていない。一方で、去年まで常に私の後塵を拝し続けていたはずのメバルマンは、大原では二五センチメートル大のグレ、乙浜でも同じサイズのサンノジを釣り上げるなど、着実に腕をあげている。

まぁ、サンノジを釣り上げた釣り人が喜ぶかどうかはともかく、私がメバルマンに釣りを教えてやったようなものなのに、この結果は全く由々しき事態だ。


今回、初日夜の満潮はだいたい二二〇〇時、二日目朝は〇九三〇時、日の入りは一九〇〇時、日の出は〇四三〇時と全てバラバラなうえに、潮回りは二日とも「小潮」と条件はあまりよろしくない。

この条件なら初日は日の入りの一九〇〇時前後から、満潮で潮が止まる二二〇〇時までが勝負だろう。二日目は〇三〇〇時には釣り座について同じく潮が止まると思われる〇九三〇時には切り上げることにする。


一七〇〇時頃に現地に着いてみると、駐車場は満車。サビキ釣りを楽しむ親子連れなんかで堤防はにぎわっていて、曲がり角の部分は地元民と思しき投げ竿師が占拠しているが、そこから島側は沖向きの釣り座もまぁまぁ空いている。その辺りに大物が潜んでいることは、二年前に私が実証済みだ。

いいタイミングで駐車場に空きができたので車を滑り込ませ、荷物をまとめてポイントへと移動する。堤防の切れ目を考慮して釣り座をかまえ、フカセ釣りと泳がせ釣りの仕掛けをまったりとセッティングしている私を尻目に、メバルマンは自宅で完成させて来たフカセ釣りタックルを取り出して、私の隣でさっさと試合開始。


ちょうど私が泳がせ釣りの仕掛けを作りあげた頃にメバルマンの磯竿が絞り込まれ、ウキが海面下で暴れ出した。舌打ちをしながらリールを巻くメバルマンによって釣り上げられたのは二〇センチメートル大の小サバ。素晴らしいタイミングで現れた小サバ氏は早速、私の泳がせ釣り仕掛けにセットされて反対側(稲生沢側)の海中へ。

汽水域に放り込めばヒラメでもかかるかな、という淡い期待と、単純にフカセ釣りの邪魔になるという理由で背後の海中に投入して置き竿にしたわけだが、フカセ釣りに集中しがてら背後のウキの動きにも気を配るというのは、なかなか至難の業だ。


二〇〇〇時頃だったと思うが、私たちより島側でルアー釣りか何かに興じていた若者三人が引き上げた後に、ふと背後を見ると、その泳がせ釣り用の竿の先端が、いつの間にか正面ではなく右斜め四五度の方向を向いている。

てっきり件の若者たちが竿尻を蹴っ飛ばして行ったのかと思ったんだが、仕掛けを回収してみると、ついさっき鼻と背中に針をかけられたままであることを確認したばかりの小サバ氏が忽然と姿を消している。

おまけにメバルマンの証言によれば、少し前にリールのドラグがチリチリ鳴るかのような音を聞いたという。おいおい、ひょっとして私はとんでもない大物を取りこぼしちまったんじゃないのか?


さて、いつものことだが、メインのフカセ釣りの方はたまに小サバや小フグがかかる程度で、心が躍るような出来事は何ひとつ起きない。正面左手に見える福浦堤防に目をやると、釣り人は二人しかいないようだ。大型の作業船が接岸して煌々と灯りを照らしつつ何かの工事をしている。

工事のせいで魚が寄りついてない可能性はあるが、あまり混んでないようなら明朝はあっちでやってみるのも一計だ。夜の部については二一〇〇時頃にさっさと見切りをつけて一三五号線沿いのジョナサンに移動。メバルマンと示し合わせて、食後に福浦堤防の様子を見に行くことにする。


現地に着いてみると、駐車場には一台しか車がとまっておらず、以前訪問したときとは明らかに様子が違う。ゲートには、いま堤防を新設中だ、という見慣れない案内板が貼られている。なるほど、あの作業船は堤防を作ってるってわけか。

ゲートにはそのほかに、中で釣りをするな、というプラスチック製の警告板も貼られている。こっちは前に来たときも見た気がするんだがどうだっけ・・・?


そいつが、もう何年もそこに掲示されていたにも関わらず、多くの釣り人に無視され続けて来たお飾り紛いの警告板なのであれば、もちろん今夜の私たちもそいつを目にしなかったことになる。だが工事中だから中に入るな、ということなら、釣りの最中に公権力をちらつかせる作業員か何かが現れて移動を要求されるという最悪のシナリオを避けるためにも、その警告には素直に従うべきだろう。

私とメバルマンは、こっちの堤防に関するリアルタイムな情報収集を怠っていたことを悔やみながらも、今回はおとなしく犬走島堤防に舞い戻ることにした。


車が四台しかとまっていない犬走島堤防の駐車場に戻って仮眠をとり、〇二三〇時には起床。ちょうど一人の地元民が釣り道具を片手に自転車で到着したところだったが、堤防は現時点では無人だ。

手際よく道具をまとめて曲がり角に釣り座を構えようと向かった私たちだったが、残念ながら夕方からそこを陣取っていた連中が荷物を置いたまま姿を消して縄張りをアピールしていた。

どうせ誰も見てないんだから目障りなクーラーボックスやら竿やらを全部まとめて海に蹴落としてやってもいいんだが、いま堤防上にいるのは私たちだけなので、私たちの次にそれらの荷物の持ち主が現れたら、犯人は私たちであることがバレバレだ。まぁ、角から少しずれても、すぐ左隣あたりは、以前、私がジャンボカワハギを仕留めた釣り座だから、そこでも十分釣りになるだろう。


例によってメバルマンは釣り座に着くなり試合を開始するのだが、潮の周期がだいたい五、六時間であることを考えれば、まだ潮は引いてる時間帯で、勝負を仕掛けるタイミングではない。メバルマンが「あたりがない」とぼやくのを聞きながら、日が昇ってからにそなえてカゴ釣り用の仕掛けをこさえるなどして(使わなかったが)、私が本格的にフカセ釣りを開始したのは、ようやく空が明るみ始めた〇四三〇時。

夜釣りのときと同じく三号のチヌ針を使ってみたが、全く魚がかからない。一方、グレ針を使っているというメバルマンも、小サバやネンブツダイをちらほら釣り上げているだけのようだ。雑魚の活性も大して高くないとみた私は、ひとまずメバルマンの真似をしてグレ針仕掛けに変更することにする。


私のツールケースには、自分で二米ほどのハリスを結び付けたチヌ針と伊勢尼針はストックしてあるが、グレ針については、わずか四五センチメートルのハリス付きと称する既製品を忍ばせてあるのみだ。私は早速、わずか四五センチメートル(実際にはサルカンを結び付けるのに必要な長さ分だけ更に短い)のハリスが結び付けられたグレ針を使いながらも、いつものように付け餌を時間をかけて沈ませる釣法を実践するために、ウキ止めゴムを二米ほどリール側に移動した。

この方法であれば、ウキ止めゴムのすぐ上に来る水中ウキまでは瞬時に然るべき水深まで沈んでしまうが、そこから先の道糸(約二米)、ハリス(約四〇センチメートル)、そして肝心の付け餌はすぐには沈まない。ついでに道糸とハリスを結束するサルカンがガン玉の役目まで果たしてくれる。

自分で針にハリスを結び付けるなんて面倒な作業を回避していたころに大量に買い込んでしまった「ハリス四五センチメートル付き」の既製品をどうやって有効利用しようかと考えあぐねていたときに思いついたんだが、我ながらなかなか賢い方法だ。それにしても、この素晴らしいアイデアが今まで読んできたどのガイドブックにも載ってないのは、そもそも既製品のハリス付き針を買う釣り人なんて邪道過ぎて、ガイドブックのライターたちにとっては考慮の対象にすらならないってことか?


〇六〇〇時を過ぎて日も完全に昇り切った頃に、いつものように木っ端メジナ共が撒き餌に群がるようになって来た。セオリーに従えば、水面近くまで浮いて来る木っ端共に紛れて、さらに深いところで拾い食いをしている大物がいるはずだ。やつらが満腹になってしまうまでの時間、つまりここから数十分が勝負処だろう。

足元から三米ほどのポイントに撒き餌を撒いて木っ端共を寄せたうえで針をつまみ、木っ端共のど真ん中にウキが落ちるように竿を振る。付け餌は群れのど真ん中から二米ほど離れた水面に落ちてから、ゆっくりとウキの真下へ弧を描いて沈んでいくという寸法だ。


何度か同じ方法を試したが、狙い通り木っ端は針にかからない。仕掛けを回収すると付け餌が一部にせよ全部にせよなくなっているので、木っ端共より深いレイヤーにも何者かが潜んでいることは間違いない。


暫くすると、公園でホームレスが投げつけるパン屑に群がる大量のハトよろしく撒き餌に寄ってくる木っ端共にまじって、三〇センチメートル大のアジのようなシルエットをした数尾の魚も姿を見せるようになった。「おい、あいつは何だ?」 私は隣で険しい顔をしながら竿を操るメバルマンに声をかけた。たぶん私と同様、今こそ勝負処だと理解しているメバルマンは、全く獲物がかからない焦りからか、少々面倒くさそうに、アジかサバではないかと答えたが、私が堤防上から偏光レンズ越しにみる限り、アジやサバにしては体高が高過ぎる。

「ひょっとしてワカシじゃないか?」 私は半信半疑でもう一度メバルマンに話しかけてみた。メバルマンは、始めは「そんなバカな」といった反応をしたが、そのうち「そうかもしれない」などと言い出した挙句、私が考えているのと同じことを口にした。「あいつ、釣れないかな?」


基本的に「見えている魚は釣れない」というのが、私たちがこれまでの数々の釣行で会得した基本原則だ。正直なところ、そいつは無理だろう、と腹の中では思っていたんだが、よくよく観察してみると、そのワカシらしき魚たちは私の足元(つまり堤防際)を起点にして撒き餌を狙っているらしく、手前に落ちた付け餌を回収しようとすると追いかけて来る。


私は試しに、ウキは今まで通り木っ端の群れのど真ん中に投入しつつ、付け餌は足元に落としてみることにした。その方法を三度ほど試したときに、既にライトをOFFにされた私のハピソンが、一五センチメートルかそこら海中に引き込まれた。私は一息ついてから大きく合わせを入れた。


ハピソンが沖に向けて走り出した!動きから見てかかったのは(木っ端)グレじゃない。こうもあっさり狙い通りにいくものなのか?と笑いを噛み殺しながら、「よぉ、あいつがかかったぜ!」とメバルマンに報告を済ませ、勝負を開始する。

ひとまず竿を立て、竿の弾力だけを使って獲物を弱らせる。無理にリールを巻かないのは、ハリスがいつものフロロカーボンではなく、既製品に付いて来たナイロン糸だからだ。太さもいつもは二.五号だがこのナイロン糸は二号。要するにあまり信用できない。

沖に逃げるのを諦めた獲物が、今度はこちら目がけて突進して来たのを機に、急いでリールを巻きにかかる。今度は私の足元で海中深くに潜り込もうとしている。地面に対して垂直に立てられたリーガルの先端が真下を向いているが、既に主導権はこちらが握っているようだ。無理なく巻ける範囲でリールを巻いて獲物を浮かせにかかる。

根に潜るのを諦めた獲物は、今度は真横、私から見て右方向に走り始めた。メバルマンの釣り座を超えて、例の卑しい場所取り師共の釣り座の向こうまで突っ込んでいく。うへー、こいつが噂に聞く「回遊魚」の横走りかよ!竿を左に傾け、弾力を使って速やかにこちら側へとお戻りいただく。


たぶんファイト開始から三〇秒もかからなかったと思うが、もう一度、沖への逃亡を企てて失敗した獲物が、ついに私の五、六米前方の海面上に姿を現した。銀色に光り輝く魚体は、私の位置からはメッキにも見えるが、まぁ、その正体は釣り上げてからゆっくり吟味すればいい。

いつものようにエラだけ浮かせて空気を吸わせ、弱らせようとしたが、私の手元が狂ってチャプンと着水した拍子に、獲物は最後の抵抗を試みて真下に潜り込もうとする。竿の弾力を使って残り少ない体力を消耗させてから、ゆっくりとリールで巻き上げる。


いつもながら隣で観戦しているメバルマンは、私の「空気を吸わせる」という一見何もしてないように見えるこの行為が気に食わないようだ。さっさと回収しないと針が外れて逃げちまうと言って、タモ網を手渡してくれる。右側にいたメバルマンから差し出されたタモ網を、つい右手で受け取ってしまった私は左手で竿を操作しなければならなくなって少々手こずったが、無事、回収に成功。





八の字を構成する目の上のラインが少々不明瞭だが、顎と尾びれの形状から察するにワカシ(ブリの幼魚)ではなくショゴ(カンパチの幼魚)だろう。

一緒に写っているのは、続けて釣り上げた二〇センチメートル大のグレ。本来ならリリースサイズだが、針を飲み込んでしまったのでオカズの足しにするべくクーラーボックスへ。その後、メバルマンも二〇センチメートルほどのショゴを一尾、釣り上げた。


〇八〇〇時には撤収。持参した出刃で獲物たちのエラと腸を除去していたら、父親に連れられて通りがかった少年の釣り人が私たちの釣果を見て「すげー」と目を丸くしていた。坊やもサビキ釣りなんぞさっさと卒業してフカセ釣りかルアー釣りを覚えるんだな。


さて、問題のショゴは私が初めて釣り上げた(アジやサバ以外の)青物ということで、当然、刺身にして食ってやるべく意気揚々と自宅に持ち帰り、キッチンで三枚おろしに。





このサイズ(二八センチメートル)では大して身が取れないことを学ぶはめに・・・。


結局、本日の獲物はすべてフライ要員に回すことにした。


何か質問は? OK。諸君の健闘を祈る。

以上だ。






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