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December 05, 2016


やぁ、諸君。私がプッシー大尉だ。

北海道の積丹岳にスノーボードに出かけた末に遭難した当時三八歳の男が警察の救助隊の不手際で死んだとかで、ご両親が八六〇〇万円もの賠償を求めて起こした裁判で、警察に一八〇〇万円の賠償を命じた判決が確定した。

雪山に何度も出かけたうえにいつも無事に帰って来る私が言うのだから間違いはないが、常識的に考えて、雪山で遭難するのはそいつが自分の能力を過信するバカだからだ。にも関わらず、わざわざ助けに行ってあげた救助隊が悪い、というのだから、この救助隊はよっぽど邪悪な救助隊で、死んだ男はよっぽどかわいそうな被害者だったんだろう。私は興味をそそられた。


事故のあらましはこうだ。死んだ男は二〇〇九年一月三一日に仲間二人と入山、下山中に仲間とはぐれて道に迷い、山頂付近でビバークすることにした。男はGPSで割り出した現在地を無線機で仲間二人に知らせていたようだ。

仲間から通報を受けた北海道警の「山岳救助隊」は翌早朝に捜索を開始したが、GPSの位置情報を誤って二時間あまり浪費し、男を発見後、二人の隊員が抱きかかえて移動中に今度は雪庇を踏み抜いて男もろとも二〇〇米ほど滑落し、最後に男をソリで引き上げる途中、ソリをロープでハイマツに固定したらハイマツの枝が折れ、男はさらにソリと共に六〇〇米滑落した。

視界五米の吹雪のなか、救助隊は男を見捨てて下山。翌日ソリに縛られた状態で男が凍死しているのが見つかった。


いろいろ情報をあたってみたところ、どうも北海道警の山岳救助隊というのは「救助隊」とは名ばかりで、大した予算もつけられず貧弱な装備しか持たないうえに、ろくな訓練も積んでいない寄せ集めのような集団なんだそうだ。男のご両親は、「道警の救助隊にはプロ意識が足りない」、「一般の登山者にとっては警察や救急が頼り」、「次の犠牲者が出ないように優秀な救助隊に改善されることを願って提訴した」などと主張していたらしい。


この死んだ男のように、山に登る際にGPSを携帯するというのは立派な心がけだ。一年間に何千(万?)人のハイカーが雪山に出かけるのか知らないが、そういう正しい心がけのハイカーはほとんどいないはずだ。ここだけの話だが、この私ですらそんなものは携帯していない。

問題は、GPSを持っていたはずの男が何で道に迷うのかってことだ。GPSやコンパスは携帯している地図や自分自身の地形図を読み解く能力とセットで使って初めて役に立つ。

ただGPSを携帯しているだけのハイカーというのは、(この男がそうしたように)遭難したときに現在地を伝えて第三者に「助けて頂く」前提のハイカーだ。一部には、男の装備は完璧だったなどと男を擁護する空とぼけた主張があるようだが、こんなヘボハイカーに雪山に入山する資格などない。


提訴したご両親も審理を担当した裁判官も、今からでもいいから一度、気象条件が整った日にちを選んで冬山に出かけ、吹雪で視界が五米しかない状態を経験してみるべきだ。プロフェッショナルよろしく手際のいい救助活動を行うことが口で言うほど容易いことではないという事実を身を以て痛感しながら、どうせ五分と持たずにしっぽを巻いて逃げ帰って来ることだろう。


悪天候にも関わらず救助に出かける決心をした男気溢れる救助隊のみなさんに対して「金をよこせ」と裁判を起こしたご両親に対する世間の嫌悪感はすさまじい。実際には道警という組織に対して裁判を起こしたのだが、世間にとってそんな事はどうでもいい事だ。

逆恨みとも言うべき恨みを晴らしてご両親はさぞ本望かもしれないが、その副作用として、今後、同じように遭難死したボーダーやハイカーの遺族が責任を救助隊になすりつけようとして裁判を起こす度に、息子の名前が悪しき前例を残した張本人として世間の記憶によみがえることだろう。


ところで当然、このご両親は自分たちが発表した提訴の理由に則って、手に入れた賠償金は全額、この北海道警の「山岳救助隊」に寄付するんだろうな?

もし万一この両親が、是非とも隊員の皆さんが装備を充実させてしっかり訓練するための財源として活用してください、と潔く全額を差し出さないような事があるならば、この両親はエラそうな事をぬかしながら結局「金目当て」で裁判を起こしたんじゃないか、やれやれ、全くこの親にしてあの子だな、と冷笑する巷の人々に、私はこっそりと共感するだろう。


何か質問は? OK。諸君の健闘を祈る。

以上だ。



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