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August 6, 2016


やぁ、諸君。私がプッシー大尉だ。

去年八月の初回の訪問では、台風一過の後の大シケでちっとも釣りにならなかった外房・大原漁港を「メバルマン」と共に再訪。例によって夕方から夜にかけてと朝釣りのダブルヘッダーだ。


初日は日の入りが一八三〇時で満潮になるのが一八五〇時。狙い通り一六四〇時ごろに現地到着。

平日(金曜日)ということもあってか、「テトラ置き場の岸壁」は船道付近に数組釣り人がいるだけでガラ空き。





さすがに本命ポイントの赤灯堤防は賑わっているだろうと思ったら、何と無人。





私の仕入れた情報によれば、この漁港内ではA級ポイントのはずなんだが、ガセネタか?


まぁいい、セオリー通り、堤防先端にほど近い沖に面したテトラの切れ目付近に釣り座を構える。うまい具合にちょっとした曲がり角にもなっていて、いかにも魚たちが好んで集まって来そうな素晴らしい地形だ。


理屈のうえでは、撒き餌でテトラに潜んでいる「大物」どもを手前におびき寄せて釣り上げるわけだが、テトラに逃げ込まれると確実にこちらの負けだから、いかに自分たちにとって勝負しやすい位置まで獲物を寄せられるかが勝負の分かれ目ってわけだ。

私よりも明らかに釣りが下手くそなメバルマンに、テトラ脇の釣り座とその隣のどちらがいいか選択権を与えると、メバルマンはより堅実な「その隣」を選択したので、私がベストポジション(とは言え少々リスクも伴う釣り座)を頂くことに。


ところでこれが今年に入って五回目の釣行になるわけだが、初回の沼津・足保港で唐揚げサイズのカサゴ三尾、二回目の城ケ島と三回目の下田・犬走島堤防では丸坊主、四回目の下田・犬走島堤防では唐揚げサイズのカサゴとメバルが一尾ずつ、と、はっきり言って今年の私はまるでスランプだ。リールを左手巻きに変えたくらいで、仕掛けも釣法も去年と同じやり方で挑んでいるつもりなんだが、結果の差は歴然としている。

あえて言うならば、これまでの四回の釣行では水温がまだ上がっていなかったことは間違いない。ということは、さほど活性の高くない魚たちにいかにして餌を食わせるかって事になるんだが、うまい具合にウキが沈んで行っても、いざ合わせを入れて勝負を始めると獲物と力比べが始まって、最後は決まってスッポ抜けた仕掛けが宙を舞った挙句にポトンと足元に落ちてくるパターンばかりだ。

これって獲物に餌を咥えさせることには成功してるのに、食わせることが出来てないってことだろ?


そういうわけで、今回はいつもの仕掛けに若干の手を加えることにする。

道糸三号とハリス二.五号×二.〇米の組み合わせはそのままに、まずウキの浮力を殺すために、あえて浮力以上のオモリをセットすることにしよう。この釣り場の水深はせいぜい五米ほどということだからウキは2Bのハピソン。それに対してBの水中ウキと、G2のガン玉2つを段打ちにする。

理論値としては少々バランスが悪いが、試しに海中に放り込んでみるとハピソンはちゃんと浮く。底の方の潮の流れか何かで、たまに獲物がかかったわけでもないのにハピソンが沈むことがあるが、その場合は明らかにそれと分かるから実用上、何の問題もない。

ついでに針をチヌ針(四号)からグレ針(六号)に変更する。錘を増やしてウキの浮力を殺す一方で針を軽量化してやると、何だか吸い込みがよくなりそうな気がするだろう?

さらに今回は「早合わせ」を封印して、ウキが沈んでも確実に食い込むまでは合わせを入れないことを自分自身に固く誓う。くっくっく、どれだけスレた生意気な魚どもでも、ぐぅの音も出ない完璧な戦略だ。


さて、前回の釣行で撒き餌を使い果たしてしまったので、今回は釣り座に着いたらまずは撒き餌作りにいそしまなければならないわけだが、気の短いメバルマンは作業に取り掛かった私を尻目にさっそく付け餌だけでフカセ釣りを開始する。

メバルマン曰く、針につけたオキアミは比較的早い段階で盗られてしまうようだ。試しにバケツに水を汲んでみると、前回までの釣行時より明らかに「ぬるい」。


私が汗だくになって撒き餌の調合作業を行っている間に、早くもメバルマンが手のひらサイズにも満たない木っ端メジナを釣り上げた。魚たちの活性OK!今回は、あまり撒き餌を撒き過ぎると釣りたくもない魚ばかりが釣れるパターンのようだ。


一七三〇時頃になってようやく準備を整えた私も、お気に入りのキャンピングチェアーに腰かけて、のんびりと勝負を開始する。既に酸素ポンプをセットしたバケツには、その後メバルマンが釣り上げた手のひらサイズのメジナが二枚、メバルマンがそいつらを明日の夕食にするために私の華麗なる包丁捌きが実行される最期のときを静かに待っている。

少量の撒き餌を私の釣り座正面よりもテトラ寄りに何度か撒いて、テトラに潜んでいるはずの「大物」をおびき寄せながら仕掛けを投入する。テトラから少し離れた場所で小魚たちが思わぬご馳走に熱狂している様子に気づいた大物たちが、居ても立ってもいられなくなってくれればしめたものだ。


針に刺したオキアミが私の気づかないうちに何度かタダ盗りされたあとで、未だ点灯してないハピソンがススッと水面下に沈みこんだ。いつもなら間髪入れずに私の手首がしなるところだが、ここはグッと我慢だ。テンカウントほど待ってから軽めに合わせを入れてやると、獲物が底の方へ逃げ込もうとする、あの懐かしい感覚がリーガルを通じて私の右腕に伝わって来た。

陸揚げされたのは二〇センチメートルほどのメジナだったが、今年に入ってから私が初めて釣り上げたメジナでもある。このまま自分は一生まともな魚を釣り上げることが出来ないのではないか?と不安におののくスランプまっしぐらの釣り人にとっては、多少なりとも未来に希望が見えて来るような、ありがたい獲物であることには違いない。


そいつをバケツに放り込んでから間もなく、またしても私の(点灯前の)ハピソンがススッと水面下に沈みこんだ。しかもさっきより沈み込むスピードが速い。しめしめ、大物か?

あろう事か少々気の緩んでしまっていた私は、ついついテンカウント待つのを忘れていつものように手首を返してしまった。例によってしばらく力比べになった後で宙を舞った仕掛けが私の足元にポトンと落ちて来る。

クソッタレ!性懲りもなく何をやってるんだ私は!


何だか一生取り返しのつかないヘマをやらかしたような気分で、私はキャンピングチェアーに座り込んだまま思わず呻き声をあげた。そのまま一分間も頭を抱えていた私を待ち受けるその後の展開を、もちろんその時の私は知る由もなかったが・・・。


撒き餌をテトラ側に何度か撒いたら仕切り直しだ。間もなく、またしても私の(点灯前の)ハピソンがススッと水面下に沈み込む。今度は明らかに(点灯前の)ハピソンがテトラ方向へとゆっくり泳いで行く。

その様子をじっくり眺めつつ、ハピソンが私の正面から二米も左へ移動した頃合いを見計らって、私はごく軽めに手首を返した。獲物が逃亡を開始した。

少なくとも私が右腕に感じる引きのパワーは、さっきのメジナと大して変わらない。スランプが明けたのは分かったから、もう少し大物を釣り上げたいんだがな・・・。私は「やれやれ」と言った感じでリールのハンドルには手を触れず、リーガルを操作するだけのやり取りを開始したのだが、ハピソンがぐんぐんとテトラ方向へと移動しているのに気付いた私は、思わず立ち上がってリーガルを手にしたまま三米ほど右方向(つまりテトラとは反対方向)へと歩いて移動した。

その時、ハピソンの方にばかり気をとられていた私は全く気付いてなかったのだが、私が不意に近づいて来たので思わずこちらを見たんだろう、私の右隣で釣っていたメバルマンが、私のリーガルがへし折れんばかりに曲がっていると言って悲鳴を上げた!何だって!?


何が起きているのかよく分からないまま、竿を立てたうえで右に傾けてテトラにだけは逃げ込まれないようにする。そのうち獲物が私の足元の方へと反転したのを認めた私はリールで仕掛けを巻きにかかる。こちらの意図を察したのか、今度は獲物が沖の方へと逃げ出した。足元から五米ほど先の海面下を黒い影が横切るのが見える。ありゃ?何だかデカいのがかかってるぞ!

タナは五米ほどに設定してあったから、既にかなり浮き上がらせてしまった後だ。今さら(相手と違って)こちらが慌てる必要はない。ゆっくりリールを巻き続けているうちに、一瞬だけ水面に獲物が姿を現したのだが、明らかにメジナとは背びれの形状が違うやつだ。それでいて、マダラ模様のあいつじゃなくて、あ!銀色の魚体をしてるじゃないか!!


「よぉ、面白れぇやつがかかったぜ!」とだけメバルマンに知らせて、さらにゆっくりとリールを巻く。獲物が何者なのか私が認識してから三〇秒もかかっただろうか、水面上に頭だけ見せて呼吸困難に陥った獲物の正体に気付いたメバルマンは、信じられない!とでも言わんばかりの声にならない嬌声を上げてタモ網を私に手渡してくれた。

滅多にお目にかかれない獲物を前に、今にもやつが最後の力を振り絞って反撃に出るのではないか、とメバルマンは不安を口にしたが、エラまで浮かせてしまえば、ここで私が何か特別なヘマでもやらかさない限り勝負はもうついている。

私はセオリー通り、獲物のすぐ下にタモを構えたうえで、一度浮かせた相手を海面下に戻してやって自分からタモの中にエントリーさせるという、ガイドブックで学んだ高等技術まで実践して、この勝負にケリをつけた。


ついに釣り上げたクロダイ。年無し間近の四八センチメートル!





釣りモノとしてクロダイを意識し始めてからおよそ一年、ちっともそいつが釣れない事に業を煮やした私は、既に日本中の堤防という堤防から「釣り上げることが可能な」クロダイなんて姿を消してしまったに違いない、とばかり思い込んでいたが、どうやらそいつは少しばかり早とちりだったようだ。

しかも私がこれまでに釣り上げたことのあるどの獲物よりも大きなサイズの「おチヌ様」をいきなり釣り上げる羽目になるとは・・・。うへー、全くこの世の中は何が起きるか分からない。


ところで、(その直前までの私のように)このサイズの獲物を釣り上げた経験のない釣り人には分からないことだろうが、まずこのサイズの獲物は、タモで掬い上げるときにマジで重い!

そしてこのサイズの獲物にもなると、陸揚げさせた後にその場でピチピチ跳ねたりしない。やつが暴れるときは「ペタン、ペタン」という音がする。

さらにそいつを釣り上げた後には、そいつを釣り上げるまでに経験しなければならない苦労の上を行く苦労が待ち受けている。つまり、背骨が太いうえに固過ぎて血抜きの作業がちっとも上手くいかない!

処理を終えたそいつの体が小型のクーラーボックスに入らないこと自体は大した問題じゃない。頭としっぽを切り落として三つに分けてから放り込めばいいだけのことだ。バラバラ殺人事件の犯人はなぜそんな事をするんだ?たぶん現場で私と同じ事を考えるんだろう。


ついでに、釣り上げた獲物に対する感謝の気持ちを忘れずに、エラと腹ワタ以外の全てを食材として活用することを信条とする私のような敬虔な釣り人は、そのサイズの獲物はとても一日では食いきれない、という問題も抱える羽目になる。


ちなみに、今回釣り上げた「おチヌ様」は、私の自宅でお刺身に変身。





この一皿だけで軽く五人前はありそうだろ?実際には同じ「おチヌ様」からさらにもう一皿だ。





二日に分けて賞味したが、捌いて一日冷蔵庫で寝かせた方が身の締まりがよくて食味がいい。

いつかの尺メジナ同様、背側は絶品なんだが腹側は少しばかり臭みがある。今度から磯魚は背側だけを刺身にして腹側は別の味わい方を考えることにしよう。


ところで人けのない釣り場でも、大物を釣り上げるとそいつを嗅ぎつけた人々がどこからともなく寄って来ることも分かった。一人は一二歳くらいの太った陰気そうな少年で、私たちの後ろを素通りして灯台の根元に座り込んでしばらく私たちを凝視してから何も言わずに去って行った。

正直なところ、そこにいる間、彼は明らかに記念撮影の邪魔だったんだが、無事に撮影も終了。





もう一人、護岸側で釣りをやっていた夫婦の亭主の方が陽気な笑顔を浮かべながら近づいてきて「その魚は何だ?」と私たちに聞いた。奥さんは日本人だったが、この亭主は白人で、私がアメリカから来たのか?と聞くと「イングランドだ」と答えた。

私が英語で、彼の祖国のEU離脱の話を持ち出すと彼は大喜びしていたが、まぁ、それも含めて彼との会話はとにかく楽しいものだった。この付近で暮らしているというそのハンサムなイングランド人は、ひとしきりの会話の後で改めて私たちにわざわざ祝意を表し、握手までしてくれたうえで最後にもう一度「その魚の名前は何デスカ?」と私たちに尋ねてから去って行った。


そりゃそうと、メバルやカサゴやアジと違って、このサイズのおチヌ様の現場における「後処理」は、それはそれは大変な作業だった。いつものように、まずはエラを手で引きちぎろうとした私は、頑丈なエラ骨(鰓弓と言うらしい)の棘が指先にグサリと刺さって悲鳴をあげた。安物の出刃包丁で背骨を裁断するのはとんでもない力仕事だった。巨大な鱗は変な触り方をすると指がスパッと切れてしまいそうなくらい鋭利なエッジをしていた。


それらの作業に疲れ果てて、それ以上フカセ釣りを続ける気力が失せた私は早々にリーガルを片付けて、購入して以来、もう丸一年も使われることなく私の自宅で新品状態のまま保管されていた投げ竿のテストに着手した。


ノーブランドの四.二米、二〇号から三〇号の錘に対応しているというその投げ竿に、新調したダイワのクロスキャストをセットして、出来ればイシモチがかかってくれれば言う事なしなんだが、などと甘いことを考えながら、二五号の海草テンビン仕立ての仕掛けにアタック5で調達したアオイソメまで刺して二〇回ほどキャストしてみたが、私の技術では六〇米ほどしか飛ばすことが出来なかった。

まぁ道糸が五号でスピニングリールだから、平均的な釣り人のキャストもそんなものかもしれないが。


今回、初めて「力糸」なるものも使ってみることにした。自宅で洗濯バサミを使いながら「ブラッドノット」に挑戦したわけだが、フルパワーでキャストしても結び目から先だけがはるか彼方に飛んで行くような事もなかった。その事実は私にとってなかなかの収穫だった。


釣り場を撤収してガストで夕食を済ませてから舞い戻って車中で仮眠。〇二〇〇時過ぎには起き出して、前日と同じポイントで朝マズメを狙ってみたが、私もメバルマンも小魚一匹釣れず。

そもそもテトラ側は東側に面しているので、朝は日当たりが良すぎてダメだ。ここは夕方から夜にかけて訪れたいスポットだ。


日も高く上り、私がフカセ釣りを諦めて前日同様に投げ竿のテスト(今度は追い風参考で軽く三色は飛んでいったが)をしていると、地元のヘチ釣り師がキスでも狙っているのか?と声をかけて来た。

私が正直に、ただキャストの練習をしているだけだ、と答えると、その細面にメガネをかけた初老のヘチ釣り師は私のキャストフォームについてあれこれ意見を始めたばかりか、何を思ったのか、私の仕掛けケースに居並ぶ「円錐ウキ」を見咎めて、「円錐ウキ」はどういう状況で使えばいいか知ってるか?などと「こ・の・私・に」ウキ釣りに関するレクチャーを始めた。

ちなみに、そのヘチ釣り師様に、「この堤防では今年のクロダイの状況はいかがですか?」と聞いてみると、今年はさっぱりだな、などとエラそうにおっしゃるので、よっぽど私の前日の獲物を見せながら「あんたの分はもう残ってないかもな」と謝ってあげてもよかったのだが、まぁ、そこは紳士の対応に徹しておくことにした。

「あんたは道具だけは立派なのを揃えてるな」と言われたときには、さすがに回し蹴りでもきめて海に蹴り落としてやろうかと思ったが・・・。


まぁ、そんなことはともかく、その見知らぬヘチ釣り師に開放されてからも飽きるまでキャストの練習に明け暮れた私は、メバルマンが獲物とのご対面を諦めた頃合いを見て、その場を撤収することにした。ヘタクソはヘタクソなりに頭を使って得た私の釣果を祝福するかのように、空はどこまでも青く晴れ渡っていた。


何か質問は? OK。諸君の健闘を祈る。

以上だ。



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