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November 08, 2014


やぁ、諸君。私がプッシー大尉だ。

事もあろうにトミーとヤギ男、二人そろって風邪をひくという失態のおかげで九月に予定されていながら延期になっていた彼らとの谷川岳ハイキングを、いよいよ決行するときが来た。


もちろん楽をしてロープウェーで途中まで運んでもらおうなんてオカマのような連中の辿る軟弱なルートはなしだ。「日本三大急登」のひとつに数えられるとも言う西黒尾根から山頂を目指し、帰路は巌剛新道を下る。ガイドブック記載の標準所要時間は七時間三〇分。「三大急登」がどれほどのものなのかは分からないが、コースタイムだけを見ればさほどハードなルートとも思えない。


〇四時一五分に私の自宅までご自慢のアウディで迎えに来てくれたトミーはそのままヤギ男との待ち合わせ場所となる埼玉県内のとある駅まで向かう。現地の立体駐車場には〇七時一〇分に到着。薄暗い空間に奇妙な音楽の流れる何だか薄気味悪い駐車場だった。


準備を済ませて〇七時四〇分に行動開始。駐車場では何組かのハイカーを見かけたが、みんなロープウェー乗り場の方に行ってしまった。私たちは誰もいない舗装道路を歩いて登山口を目指す。


見上げると澄み切った青空に薄く色づいた紅葉。





いいねぇ、やっぱり秋山のハイキングはこうでなくっちゃな。


〇七時五五分、「西黒尾根登山口」に到着。少し手前で見かけた先行者二人は驚くほど俊足で、一度見失ったきり二度と見かけることはなかった。





さぁ、いよいよ出発だ。


「日本三大急登」とされる西黒尾根コースだが、登ってみれば樹林帯の中を里山に毛が生えたようなありきたりの登山道が延々と続く。私はいつものように気が向くたびに屁をしながら最後尾をちんたら登る。


一時間半ほどで南側の視界が開けて来た。ロープウェーの駅舎が見える。





〇九時四五分に最初の鎖場に到達。登り切ると稜線に出る。


眼前に何とも無骨な山頂が迫る。





さらに二〇分も歩くと「ラクダの背」。





その先のちょっとした小広場で休憩。見るとペットボトルに茶色い液体がほぼ満タンの状態で入ってるのが石の上に放置されている。ラベルが剥されているので中味が何なのかは推測するしかないが、お茶のようにも見えるし何かの揮発性の油のようにも見える。

ヤギ男に「飲んでみるかい?」と勧めたら、ヤギ男はひどく顔をしかめた。


一一時〇〇分にあの有名なスポットに到着。慣例に則って記念撮影。





ここを通過するハイカーは一人残らずこいつをやるもんだとばかり思っていたが、何組かのハイカーが撮影に励む私たちを横目で見ながらニヤニヤ顔で通り過ぎて行った。


一一時四五分に大勢のハイカーたちで賑わうトマの耳に到着。そのまま素通りして多少は人気の少ないオキの耳へと向かう。

少々雪の積もった歩きにくい稜線を一五分ほど辿ってオキの耳に辿り着いた私たちは、その少し先の西風を避けるのにちょうどいい岩場で昼食にする。


私はいつも通りの「熊本ラーメン」。





風が強いうえに上空には雲が漂い始めたが、目の前に広がる朝日岳の均整のとれた山容や川棚ノ頭に至る美しい稜線を飽きるまで眺めてたっぷり一時間ほどそこで過ごした私たちは、トマの耳に群がっていたハイカーたちが下山して姿を消したのを確認してからその場を後にし、邪魔者のいないトマの耳での記念撮影を無事に終えて帰路に着く。

まずは放尿のために肩ノ小屋に立ち寄ることに。


わざわざ回り道をした私たちを待ち受けていた厳しい現実。





まぁ、どうせ私たちと同じコースを下って行くハイカーなんていやしないんだから、我慢が出来なくなっちまったらその時はその時だ。


一三時三〇分に肩ノ小屋前を出発。往路では巌剛新道との分岐を見つけることが出来なかった私たちは、今度こそ分岐を見落とさないように周辺を慎重にスキャンしながら稜線を下る。


氷河跡あたりで前方から一〇歳くらいの少年を連れた父親らしき男が山道を登って来るのを見つけた私たちは閉口した。こんな時間にまだそんなところをうろついてる事実もさることながら、まだ年端も行かない子供にあの西黒尾根を登らせたって言うのか?

私たちがその実力に応じてそいつをどう評価するかはともかく、西黒尾根ルートは高度差もあれば岩稜歩きや鎖場の通過も強いられる「それなりの」ルートだ。少なくとも私には、明らかに少年は迷惑そうな顔をしながら父親の後ろを歩いているように見えた。

私が少年に声援を送ると少年は礼儀正しくそれに応えたが、その表情は決して楽しそうには見えなかった。その親子を見送った私たちは、少年の健闘と不屈の闘志を称えるとともに、父親のルート選択のセンスには疑問を抱いた。誰とどのようにして休日を過ごすにせよ、自分が楽しめる場所が相手も楽しめる場所だとは限らない。


まったく私もどこかのキュートな山ガールと仲良くなって一緒にハイキングに出かけるときは、どんなコースに出かけるかは慎重に選ばなきゃな。


少年の幸運を祈りつつ尾根道を下る。例の小広場に着くと、まだそのまま放置されてるペットボトル。





もう一度ヤギ男に勧めてみたが、答えは変わらない。


少しばかりの休憩を挟んでから、その中味が気になって仕方がないペットボトルに分かれを告げてさらに山道を下る。やがて数百米前方に、私たちが往路に辿った稜線上の道とは明らかにちがう、左手の谷側の斜面につけられた巻き道を登って来る二人組を見つけた私たちは、彼らが辿っている道こそが巌剛新道である事を確信した。その二人組が稜線に合流する地点こそ私たちが探していた新道への分岐ってわけだ。


トミーがひと足先に下って分岐点まで行き、その二人組にコンタクトを図って情報収集を試みる。後から追いついた私が見たところ、二人組はたぶんまだ二〇歳にも満たない若者たちで、装備の真新しさから推測するかぎり、さほど経験豊富なハイカーではないようだ。彼らはトミーのインタビューに対して、巌剛新道は一部の岩場が「凍結している」と答えたらしい。

トミーはその情報に少々不安を覚えたようだ。たしかに、主に太陽と地球の位置関係に起因する諸々の自然現象の結果として、北側の斜面はそうでない斜面よりも凍結するもんだ、と太古の昔から決まっている。トミーは帰りのコースを変更することを検討してもいい、という意見のようだ。


私の結論はノーだった。そのコースに凍結している岩場があるかどうかは大した問題じゃない。考慮すべきことは、その若者二人が登って来ることの出来た道をこの私たちが下って行くことが出来ないなんて事があり得るのかってことだ。そうだろ?


ところで分岐点の案内板は、山頂方向から下って来るハイカーにしか見えない向きに設置されていた。よほどのうっかり者でない限り、往路で見つけられなかったからって帰路でこいつを見落とすようなことはないだろう。





私たちがその案内板の前でのんびり休憩していると、山頂方向から一人の五〇年配のハイカーが素早い足取りで下りて来て、私たちに「これを上に忘れて来なかったか?」と言って、例の謎の液体の入ったペットボトルを差し出した。何てことだ!その親切なハイカー氏は、わざわざ私たちのためにゴミを拾って峻険な山道を急いで私たちを追いかけて来たらしい。

その状況で「それはゴミだ」とはさすがの私にも言いづらい。そいつは他の誰かが置き忘れたものらしくて、私たちが朝方あの広場を登りで通過したときからそこにあったのだ、という事実を丁寧に説明し、それから何だか申し訳ないような気分になった私は、とりあえず親切なハイカー氏に謝っておくことにした。

別に私たちは何も悪い事なんてしてやしない。ただそいつは結果論に過ぎないとは言え、その親切なハイカー氏は山のゴミをひとつ拾って、私たちは見て見ぬふりをした。その気の利かなさに対するお詫びだと思えば、そうおかしな事ではないだろう。それで多少はその親切なミスターの顔も立つなら何よりじゃないか。


一四時三〇分に分岐点を出発、巌剛新道へと進入する。西黒尾根コースほど使われてないと見えて、少々コースが荒れている印象はあるものの、要所はそれなりに整備されていて道迷いの心配はない。コース中にところどころ崩落箇所があるが、そういうところには怖がりのハイカー用に気を利かせてロープが引いてある。





その日、巌剛新道で見かけたハイカーは一人しかいなかった。肩ノ小屋のトイレが使えずに困っていた私にとってはまったくもって良いニュースだ。


そしてコース上では若者二人の証言通り、一部の岩に少しばかり付着した水分が「凍結」していた。だから何だってんだ?「凍結」の定義が私たちのそれとはあまりに違い過ぎた。若者たちには全く悪気なんてなかっただろう。だが何事も情報は正確に伝えないと、ときには陰で「嘘つき」呼ばわりされてしまう事だってある。


一六時二〇分、登山口となる「マチガ沢出合」に到着。すぐ目の前にベンチの置かれた休憩所があって、私たちはたっぷり一五分ほどそこで休憩。


振り返ると、完全に雲に覆われてしまった山頂。





そこから舗装された車道を二〇分ほど歩いて駐車場に到着した私たちは大急ぎで着替えを済ませ、冷え切った身体をどうにかするために近場の温泉へと直行した。


何か質問は? OK。諸君の健闘を祈る。

以上だ。



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