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September 14, 2013


やぁ、諸君。私がプッシー大尉だ。

九月も後半になればアルプス界隈をうろちょろするハイカーが少なくなって来る頃合いだ。山小屋だって適度に空いてるだろう。私は来月のどこかで西穂高岳にでも登らないか?とトミーに連絡をとった。

トミーは快諾したが、何でもトミーは六月のある日、バトミントンを楽しんでる最中に足首を捻挫してしまって暫く山に登ってないらしい。そこで私たちはトミーのリハビリがてら、以前からトミーがそこに登る事を切望していた新潟の「八海山」に日帰りのハイキングに出かける事にした。


一般的なハイカーなら、ロープウェーで尾根まで登って八つ峰を往復するだけの「楽ちんな」コースを歩こうとするだろうが、そんなのは私たちのような「健脚」ハイカーにはちっともふさわしくない。私はトミーに「鎖場」がそこら中に現れるという屏風道を一五〇〇米ほど登り切って千本檜小屋まで行き、そこから八つ峰を縦走して新開道を下る「一一時間コース」のハイキングを提案した。

だいたいトミーが「八海山」に魅力を感じたきっかけは八つ峰コースに連続すると言われる「鎖場」だったので、もちろんトミーは私の予想通り、屏風道コースの概要に気分を良くしたようだったが、そのコースの標準コースタイムを知ると、暗くなる前に下山できるのかを訝った。私は一九時まで山道を徘徊していた私の最近のいくつかのハイキングの例を引き合いに出して、それは全く問題ない、と言い切った。そして私たちは朝の七時三〇分には登山口の駐車場に到着した。

駐車場には四台の「先客」がいた。土曜日なのにたった四台だ。しかも何台かは、その持ち主が千本檜小屋に泊まるために前日からそこに停められてる車かもしれない。どれだけ一般的なハイカーに敬遠されるか、或いは存在すら知られていない「通好みの」ルートなのかが分かるってもんだ。そうだろ?


屏風道コースはその途中にトイレがひとつも設置されてない事を知っていた私は、駐車場の然るべき一角の藪に向けて放尿を済ませた。それを見たからかどうかは知らないが、トミーも駐車場の入り口の方へ行って放尿を始めた。

すると突然、老人を満載したハイエースが駐車場に進入して来たので、トミーのご自慢のペニスは何人かの老人の好奇の目線に晒される羽目になった。教訓:放尿する場所と方向はあらゆる事態を想定して慎重に選ばなければ。


私たちは〇七時五〇分、「2合目」と書かれた案内板のある屏風道コース入り口から、私を先頭に山頂へと移動を開始した。





スタートしてすぐ最初の渡渉点が現れる。水位にはまるで問題がないので、残念な事に、増水時に備えて設置されてある立派な「渡し籠」の出番はない。





そこから先は普段からあまり人が歩かないからだろう、トカゲやヘビがそこら中を這い回る少々エキセントリックな山道だ。トミーは早速トカゲを一匹捕まえて嫌がらせを始めた。

ところどころ藪も濃くて、タンクトップで歩いていた私の腕が何かの葉っぱに触れた途端、激痛が走った。たぶん毛虫にでもやられたんだろう。このコースは色んな意味でなかなか手ごわい。


その後も何度か渡渉を繰り返しつつ、清滝小屋には〇八時五五分に到着。





清滝小屋は登山道から少し外れていて山頂を目指すだけなら立ち寄る必要はないが、小屋の前を通り過ぎて少し行くと、私のお目当ての「水場」がある。





水を汲み終えて登山道に戻ろうとすると四人組の老ハイカーがやって来て私とすれ違った。おや?彼らはあのトミーの神々しいチンポを拝む幸運に恵まれた例のハイエースの人々じゃないのか?ハイエースには七、八人は乗ってた気がしたが、残りはどこに行ったんだ?

私は彼らをやり過ごし、それからトミーが彼らをやり過ごして私に追いついて来るのを待った。トミーは彼らと少し会話をしていたようだったので、残りの人々がどこにいるのかを聞き出せたのかと思ったのだが、トミーが彼らから得た情報とは、彼らは清滝小屋への道を「登山道」だと思って間違って進んで来てしまった事だけだった。

随分と事前の情報収集の甘い連中だな、と私は思ったが、それにしてもあの場で彼らとすれ違ったという事実は、彼らは私たちと同じか、或いはそれよりも少し速いスピードであそこまで歩いて来た事をも意味していた。何てこった!あの爺さん婆さんたち、全くタダもんじゃねぇぜ。


ところで清滝小屋が登山道から外れている事実は事前に把握していた私だったが、では山頂へと続く道がどこにあるのかはその時点では把握してなかった。来た道を戻りつつ付近にあるはずの分岐を注意深く探していたら、ハイカーたちの死角を突くように、ほぼコースから「直角に」左折(清滝小屋側からは右折)する分岐があった。もちろん案内板のようなものは何もない。これじゃあ誰だって気づかないで用もないのに清滝小屋まで歩いて行っちまうんじゃないのかい?

要するに当局のこのコースの整備担当者は、本当に最低限の整備しかしていない。それは経験値の浅いハイカーの目には、とんでもなく不親切なことのように映るだろう。刺激や緊張感を求めるタイプのハイカーの目にはさぞ魅力的なコースに映るに違いない。


分岐を折れて一〇分もしないうちに最初の「鎖場」が現れた。





正直に告白すると、私はその「最初の」鎖場がどんなだったかなんて全く覚えてない。そこから先、無数の鎖場が現れるのだが、少なくともそれらの鎖場のいくつかと比べてひどく印象の薄い鎖場だった事だけは間違いない。

つまり印象深い鎖場って言えば、例えばこんなやつだ。





こっちは鎖すらなかった。全く楽しいじゃないか!





ところで私は既に五合目を過ぎたあたりから、このハードな難路と暑さのせいでへばってしまって、年老いた山羊のようにどうにも自分の意のままには歩けなくなって来た。私はいつしか私の前を歩くようになったトミーに何度も休憩を懇願した。

そうしているうちに例の老ハイカー集団が私たちに追いついた。私がそこら中を飛び回っているスズメバチに対する不満を声高にトミーに主張しているのを耳にしたらしき先頭を歩いていた初老のハイカーが「ハチが飛んでるのかい?」と私に聞いて来たのをきっかけに、私たちは彼らといくらか会話をした。

彼らは千本檜小屋泊まりのプランを立ててこのコースを登っていた。それならもう少しゆっくり登ってもよさそうなもんだが、言い換えれば余裕をしっかり持たせた実に賢明なプランニングだった。それからハイエースに乗っていた他のハイカーたちは、清滝小屋に着く前の段階でこのコースの難路に恐れをなして退散してしまったらしかった。つまり今そこにいるのは、あのハイエース軍団の中でも粒ぞろいの精鋭ハイカーたちというわけだ。実に頼もしい人たちじゃないか!やれやれ、それに比べて全くこの私と来たら・・・。


精鋭たちに先を譲った後、一一時三〇分にようやく七合目を通過。さらに一〇分ほどで、噂の「横へつり」に到着。





こいつは大した事はない。いつも通り鎖すら使わずにクリア。

足を滑らせるハイカーより、むしろ横に伸びた木の枝に頭をぶつけるハイカーの方が多いはずだ。もちろん私たちはどちらでもない。


さらに一〇分も行った地点からは枯れた沢底を登る。





それは別に構わないんだが、この沢登りは途中でほぼ直角に右に曲がって登山道に復帰するのが正解だ。

そうとは知らない私たちは、厳密に言うと先に沢底の岩に取っ付いた私は、登山道への入り口を通り過ぎて延々とハードなロッククライミングに挑んでしまった!

その難易度の高さに(登山道でも何でもないんだから当たり前なんだが)私が思わず「おいおい、こいつの一体どこが登山道だってんだ!?」と罵ってるのを耳にしたトミーが、それをきっかけに他に道がないかを探し始め、そして間もなく正解を見つけた。

つまりトミーは私の罵り声に助けられ、そして私は今度は今しがた登らされたばかりの登山道でも何でもない岩壁を「降りる」という厄介な作業に取り組まなければならなかった。


そんな感じで、よろよろになって足が進まないうえに全く無駄な作業に時間を浪費した私がその事態に大きく貢献した事は間違いないが、私たちがようやく「八合目」と刻まれた石柱が倒れたまま放置されている地点に辿りついたのは一二時四五分の事だった。標準的なコースタイムによれば、既に小屋には着いてなければならない時間だ。

恐らく当初想定されていたコースを歩き切る事自体は可能だろうが、その場合、日没前に新開道を下り切るのはたぶん不可能だろう。私は持って生まれた「柔軟な」思考力に基づく賢明な判断により、少なくとも私はロープウェーで下山する事をトミーに提案した。八つ峰の鎖場をずっと以前から楽しみにしていたトミーはまだまだ体力があり余ってる風なので、トミーがどうするかは彼自身の判断に委ねる事にしたが、トミーは「もう鎖場は十分楽しみましたから」と言い、私と共にロープウェーで下山する、と答えた。

そいつが本音かどうかは分からない。だいたい私が余計な事を言い出さずに素直にロープウェーで登るコースを選択していれば、今ごろトミーは念願の八つ峰を踏破して山頂でランチを楽しんでいたかもしれないってのに、それでも彼は私に気を遣ってそんな風に答えたのかもしれない。何てナイスガイなんだ、トミー!


結局、私たちが千本檜小屋に着いたのは一三時五〇分の事だった。駐車場を出発してから既に六時間が経過していた。私たちは小屋の前のベンチを占領してランチを貪り、水場へ水を汲みに行ったりそこから見える景色を写真に撮ったりして一時間近くそこで過ごし、それから最終便のロープウェーを逃さないぎりぎりの時間と思われる一四時四〇分にはそそくさと出発した。


一六時三〇分にはロープウェーの「山頂駅」に到着した私たちは、最終便の一本前のやつに乗って麓まで下り、山麓駅の駐車場から一時間近くかけてスタート地点まで歩いて戻った。結論から言えば、私が登りコースでへばってしまった事が結果的に二人を救った。私は経験則から一九時までに下山できれば問題ないと本気で思っていたが、八海山は西日本のどこかの山と違って一八時には十分に暗かった!


それから私たちは近場の露天風呂へと車を走らせ、お互い生まれて初めての「混浴風呂」で山歩きの疲れを癒すと同時に、お婆さんがちゃんと前をタオルで隠して風呂場に入って来る事に感心し、ディナーに向かった「欅亭」で私がニ〇〇グラムのステーキをオーダーしたらサービス精神旺盛な料理長は四〇〇グラムはあろうかという特大ステーキを焼いてよこしたので、一緒に頼んだオムライスはゆっくり味わうまでもなく無理やり腹に詰め込む羽目になり、そして私より調子に乗ってたくさん注文してしまったトミーは私の正面でナイフとフォークを両手にうめき声を上げていた。





※詳細 → プッシー大尉烈伝 [美食編/欅 亭]


何か質問は? OK。諸君の健闘を祈る。

以上だ。
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