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津軽海峡亭/海峡丼(1)

【 Data 】

青森県東津軽郡外ヶ浜町字三厩龍浜50 [MAP]

TEL:0174-38-2855

営業時間:10:30〜16:00

定休日:不定休

最終訪問:2013.10

津軽海峡の観光名所「竜飛岬」の近くにある小島で営業している民宿で、昼食時には食堂も営業しているようだ。島といってもごく自然にかけられた橋で簡単に渡れてしまうので、そうと指摘されなければ気づかないかもしれない。カーナビを頼りに店の前に着いた私が駐車場に車を停めているそばからもう一台の車がやって来た。なかなか人気のある食堂のようだ。

店内に入ると、中は雑然とした座敷席のみの、いかにも田舎の民宿食堂といった趣だった。四〇代かそうでなければ老け顔の三〇代と思しきやる気のなさそうな女が一人で接客を担当していて、少しばかり面倒くさそうに私に応対した。私は彼女の指示を待つまでもなく率先して座敷の空いたテーブル席のひとつを占拠し、そのやる気のなさそうな女に「海峡丼」を注文した。悪い人ではないのだろうし、悪気があるわけでもないのだろう。でもとにかく彼女はやる気がなさそうだった。

私はテーブルごとに置かれたポットに入れられたセルフサービスのお茶を湯のみに注いでぼーっとしながら「海峡丼」の到着を待った。この店では水もセルフサービスだ。私が着いた席の隣の御夫婦のさらに向こうに座布団が積み上げられていて、親切な夫人が私に座布団を一枚とってよこしてくれた。だから座布団もセルフサービスだ。そうこうしているうちに、彼らなりに精いっぱいと思われるよそ行きの服装をした六人組の老人が入店して瓶ビールを注文したが、例のやる気のなさそうな女は返事をするだけで厨房にこもったきりまるで出て来る気配がない。しびれを切らした老人の一人が客席から丸見えの冷蔵庫から瓶ビールとグラスを失敬していた。つまりビールやグラスまでもが「セルフサービス」だった!

二〇分も待った頃に届けられた「海峡丼」は盛り付けが下手クソだからか見た目はぱっとしない一品で、ネタも私が期待した「地魚」ではなく、全国どこの呑み屋に行っても出してきそうな鮭、いくら、まぐろ、はまち、甘エビ、タコ、ウニといったスタンダードなものばかりだった。おまけにそれらのネタは特別美味なわけでも新鮮なわけでもなく、甘エビにいたっては解凍しきれてすらいなかった。だがそれらのあまり芳しくない事実を全て帳消しにしてしまうまでに、この店の「海峡丼」は、そのネタのボリュームが素晴らしかった。

もちろんネタの質は海沿いの漁村で提供されるものとしてはいまひとつ物足りない、というだけで、都心でそれが提供されれば誰もが納得するレベルのものだ。それでいて定食風に汁ものや小鉢料理もちゃんと付いて一五〇〇円なら、私は上出来だと思う。イクラにいたっては食っても食っても箸からぼろぼろこぼれるイクラが丼の底の方に沈殿していき、最後の方ではそれらのイクラだけで「海峡丼」を注文したはずの私が「イクラ丼」まで注文したかのように錯覚を覚えるほど、とにかく大量に盛りつけられていた。

私がその「海峡丼」をわしわし掻き込んでる間にも観光客らしき人々がひっきりなしに入店して来て、この食堂の人気ぶりを窺わせた。支払のときに調理場を覗いてみると、夫婦にしか見えないお爺さんとお婆さんがいそいそと仕事に励んでいたので、例のやる気のなさそうな女は、実は一家の看板娘だったかもしれない、と私は思った。
津軽海峡亭/海峡丼(2) 津軽海峡亭/海峡丼(3) 津軽海峡亭/店舗外観


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