banner_top | Home | Military | Trekking | Gourmet | Life | Contact |
logo_2star とんちゃん
とんちゃん/焼串盛合せ(2人前)

【 Data 】

宮崎県延岡市幸町3-145 [MAP]

TEL:0982-32-2351

営業時間:16:00〜23:00

定休日:不定休

最終訪問:2013.09

延岡駅のほぼ目の前にある大衆居酒屋だ。駅前のホテルに投宿していた私にとって、この界隈にしては割と遅い時間まで営業している居酒屋の存在は実にありがたいものだった。店頭には、一人でも遠慮なく入ってくれ、という内容の貼り紙がしてあり、私はお言葉に甘えてガラリと引き戸を開けた。

カウンターの中にいた調理担当の男と、それからやや奥の方で待機しながらお喋りをしていた二人の女スタッフは、私を見てきょとんとした顔をした。貼り紙にはああ書いてあったが、たぶん何組もの団体客で賑わう店内に一人ぽつんと入店した私は彼らにとって少々場違いな珍客であるらしかった。カウンター席に一人も客がいない事を見て取った私は「そこに座るが何か文句あるかい?」といった態度で一番手前の席を陣取った。ふと我に返った何人かのスタッフは「いらっしゃいませ」と言った。

カウンターテーブルの上に予め置かれてあったメニューを手にとった私はしげしげとそいつを眺め、ひとまず何を注文するかを決めて通りがかったベテラン風の太った女店員を呼び止めた。その愛想がいいとは言えない女店員は別の客に用事を申しつけられたばかりのようで、ちょっと待ってくれと言って後ろの座敷席の方へと入って行った。あぁ、いいとも、そっちが終わったら私の方に来てくれればいさ。そして持参した新聞を読みながら彼女の用事が済むのを待ち、そろそろじゃないかと思って顔をあげるとその女店員は店の奥の方で他の女スタッフと談笑していたので、私は「あいつバカか?」と思った。

幸い私と目の合った通りがかりのアルバイトらしき青年が私の元にかけつけてくれたので、私は穏やかに自分の注文を伝えた。まず生ビールが、そしてすかさず「とんちゃん」という店名そのまままのホルモン煮込みが運ばれて来た。その熱々のホルモン煮込みは事前に調べあげた情報によればこの店一押しの絶品料理であるらしかったが、実際に食ってみた私は、そいつにこびりついた牛のクソの臭いに少々閉口した。だが誰の口にでも合うように変に薬品やら何やら駆使してあれこれ加工を施すようなまねをしないで、よくも悪くも素材の風味をそのまま活かして作りあげられたその一品料理に私はむしろ好感を抱いた。

続けて串焼きの盛り合わせが到着した。その「2人前」と書かれていた串一〇本の盛り合わせは私の想定を越えてヘビーな一皿で、私は少しばかり困惑した。たぶんこの店で提供される串焼きは、最小限の人の手しか加えられてない素材を誰かが一本一本手差しで仕込んだものを元に焼きあげられた上質のものだったろう。カチカチに冷凍されて箱詰めにされ、外国船で運ばれてる間にどんどんその品質が劣化していったような、全国の駅前に展開される三流チェーン居酒屋で客に出される炙りカスのような貧弱な串焼きとはまるで違う、まことに食いごたえのある一本一本だった。

私はさらに丸万で味をしめた「地どり焼き」をも注文していた。結論から言えばそれは注文のし過ぎだった。上質な一〇本の串盛りでたいがい満腹になってしまった私には、そのメニューに(小)と明記されていたはずの九〇〇円あまりのもも焼き一皿は、あまりに量が多過ぎた。その「もも焼き」も丸万に負けず劣らず私好みの逸品で、私は猛然とその「もも焼き」の完食にとりかかったが、その終盤は私の消化器官があげる悲鳴を聞きながらの内なる苦痛との闘い以外の何者でもなかった。

重厚なボリュームの料理三品と生ビール二杯を死にそうな思いをしながら全て制覇した私の支払は、それでも四,四〇〇円あまりだった。つまり適正な量を事前に考慮して計画的に注文していれば、そのコストパフォーマンスは驚異的なまでに改善されていた事を意味していた。接客要員の当たり外れを気にしなければ本当に素晴らしい店だと思いながら、私はイソップ寓話の親ガエルにでもなった気分で膨れた腹を引きずるようにホテルへと帰った。

とんちゃん/名物ホルモン煮込み・とんちゃん とんちゃん/地どりのもも焼(小)


−プッシー大尉烈伝−[美食編]に戻る >>> 
Copyright (C)2011 Lt.Pussy All Rights Reserved.