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但馬家幸之助 小淵沢店/特選サーロイン

【 Data 】

山梨県北杜市小淵沢町1549-5 [MAP]

TEL:0551-20-5400

営業時間:11:30〜14:00(※土・日・祝は12:00〜)/17:00〜22:00

定休日:無 休

最終訪問:2015.03

八ヶ岳ハイキングの帰りに立ち寄った、インターネットでは非常に評判の高い焼肉屋だ。三〇年ほどまえに開いた直営牧場で但馬牛にルーツを持つ黒毛和牛を飼育していて、牧草にウイスキーの搾りかすを混ぜて与えているらしい。なるほど、ウイスキーの搾りかすの効用はよく分からないが、その肉が美味いんだったら何だっていいさ。

電話をしてみると予約は受け付けてないというので、とりあえず店に行ってみることにする。駐車場に着いて周囲を見渡すと、所狭しと並ぶ車のナンバーは、ほぼすべてが県外のものだ。店に入ると家族らしき先客が一組、入口の待合席にたむろしていた。こんなくそ田舎で土曜日の二〇時三〇分に満席で一組待ちとは、その盛況ぶりがうかがえるってもんじゃないか。

一五分ほどで席に案内された私とハイキング仲間二名は、メニューを手に取りしげしげと眺めた。どこに行っても「ステーキ」を頼みたがるそのうちの一人が「特選サーロイン」という文字を目ざとく発見してそいつを注文したい、と言い出した。値段が二〇四四円と書いてある。焼肉屋でステーキ?私のセンスではありえないチョイスだが、まぁ滅多に訪れることのない店だ。気になるなら注文するがいいさ。

私はメニューに記載された「レバー」を見逃さなかった。それに有料(一一三円)なのは少し気になったがごま油もちゃんと提供されるようだ。私は素知らぬ顔でそれらを注文することにした。もちろんレバーはしっかりと火を通してから口に入れなければならない。法律でそう決まっているらしいし、店の者に「生で食ってもいいか?」なんて野暮なことを聞くなんてとんでもない事だ。

注文取りにやって来たのは年のころは五〇かそこらの見るからに妖艶な、セレブ風の雰囲気を身にまとった美しい貴婦人だった。どうやら彼女がこの店を仕切る人物のようだったが、 接客を担当するほかの女の子たちはいずれも「地元の娘たち」といった風の地味で控えめなよそおいだったので、そのなかにあって「貴婦人」の存在感は明らかに異彩を放っていた。

私たちは「貴婦人」のオーラに少々恐縮しながら気になるメニューを片っ端から注文していったが、ステーキマニアじゃないもう一人がいきなり「豚足」を注文したので、私たちは一瞬困惑した。彼は、豚足が大好物なんだ、と言った。なるほど、好き嫌いは人それぞれだ。でも黒毛和牛の肉を提供する(と謳っている)焼肉屋でわざわざ豚足を注文するなんて、ちょっとお洒落なベーカリーに言って「パンの耳をくれ」と言うようなもんじゃないか。もっとも私が危惧したのは、いろんな肉をみんなで散々食い散らかして満腹になったってのに、豚足だけが皿のうえに山のように残っている光景を目にすることだった。そういう場合、だいたい最後は私がそいつを片付ける羽目になる(結局その日は全員で平等に片付けた)。

やがて私たちの注文した品々が届き始めた。まずはそれぞれが頼んだライスやクッパが届けられ、続けて「特選サーロイン」がお出ましになった。私は一目見て、その「特選」の肉の薄さに失望した。だが私はひとつ勘違いを犯していた。メニューをもう一度確認すると、「特選サーロイン」とは書いてあるがサーロイン「ステーキ」とは一言も書いてない。「サーロイン」と聞いて私が勝手に思い浮かべるそれよりも明らかにペラペラなスライス肉が運ばれてきたとしても、そいつは店側の落ち度とは言えないだろう。ミディアムレアーのお手本のような焼き上がりになったところで店が指定するとおり塩で頂いたが、何だかバラ肉を食ってるような感じだった。

一七〇四円の「特選カルビ」というのも届いたが、こいつもサシの入り方からして私好みの肉でないことは一目瞭然だった。口にしてみるとたしかに柔らかいのだが、滲み出る肉汁にまるで甘みがない。田舎暮らしの人々には舌触りさえよければそれで十分なのかもしれないが、あいにく私は違う。ついでに、私が注文した「ご飯セット」についてきたキムチもただ辛いだけだった。

レバーは絶品だった。私が「私なりの」頂き方でそいつを堪能していると、残る二人も私のマネをして、口々に美味いと言った。プリプリでジューシーなホルモンも悪くなかったし、デザートに注文した「限定手造り杏仁豆腐」も美味かった。どうやらこの店は基本的に脇を固めるメニューに力を入れてるようだ。

会計は三人で九〇〇〇円と少々。いつ誰がハンドルを握ることになるか分からないので誰一人アルコールを注文しなかったことを考えると、決して安い金額ではない。帰りの車中で豚足好きの友人は「美味かった」と満足げに語っていたが、私とステーキマニアの方は何も発言しなかった。私にとって、友人の一人が大そう満足してるってのに、「あれは本当に黒毛和牛か?」なんて議論を持ち出すのは憚られることだった。私は今度八ヶ岳に登るときは、この店の隣にあるイタリアンの店に行ってみることを心に誓った。
但馬家幸之助 小淵沢店/特選カルビ 但馬家幸之助 小淵沢店/限定手造り杏仁豆腐 但馬家幸之助 小淵沢店/玄関の置物


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