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活魚料理処 関の瀬/関サバ御膳(1)

【 Data 】

大分県大分市大字志生木2319-1 [MAP]

TEL:097-575-4141

営業時間:11:00〜15:00(14:30 L.O.)17:00〜21:30(21:00 L.O.)

定休日:火曜日 ※ 祝日は営業

最終訪問:2013.09

ビジネスで宮崎を訪問した私が観光拠点として延岡のホテルに連休をうまくからめて五泊していたまではよかったが、延岡界隈の飲食店で目ぼしいのがそろそろなくなって来てしまったので、私はその日ドライブがてら大分方面に足を延ばしてランチとディナーをとる事にした。そしてランチにチョイスした美絆ラーメンで可愛らしい若奥様が登場して来て気分を良くした私は、いよいよ大分グルメの本丸とも呼ぶべき「関サバ」ブランドを大々的に掲げて地元民にも絶大なる支持を得ていると言われるこの店へと向かった。

日も暮れて暗くなった頃にようやく店の前の駐車場に私が車を滑り込ませるそばから県外ナンバーを付けた二台の車が駐車場へと進入して来た。運ばれて来たのはいずれも大人数の家族連れだ。奴らが先に入店してしまったがために私が待たされるような事にでもなったら一大事だ。私は忍者のようにこそこそと素早く店の中へと移動した。

入口には、その日「関サバ」の入荷がなかったので、代わりに「豊後サバ」を使っているという正直な貼り紙がしてあった。インターネットで調べる限り、その貼り紙はしょっちゅう貼られているらしいが、たぶん客は食っても分からないだろうに、昨今世上を賑わす連中以外にまず間違いなく殆ど全ての「高級ホテル」「高級旅館」「高級料亭」の類がやってるであろう食品偽装という行為には絶対に手を染めないぞ、という店主の並々ならぬ決意の表れだろう。ところでそういう風に書かれるとそれはそれで何だかとても立派なブランドででもあるかのように錯覚してしまうが「豊後サバ」って何だ?私はそんな名前ちっとも聞いた事がない。言葉のマジックに騙されてはいけない。

店に入ると和服姿の美人女将がカウンターでよければ、と言って私を席に案内した。例の二台の家族連れは満席を理由に入店を断られているようだった。なるほどたしかに人気店のようで、二階の座敷席も含めて今日もひどく混雑しているらしい。美人女将は、料理を出すのが遅くなると思うが時間は大丈夫か、と私に確認した。時間がかかるのは一向にかまわないから待つだけの値打ちのあるサバ料理を食わしてくれ。

待ち時間に調べ物でもしようとタブレット端末を取り出してポケットルータの電源を入れるとやっぱり圏外だった。まったく大分って街はクソか?とイラつきながら、私は店の入り口の方に置いてあったその日の朝刊を読んで待ち時間を潰した。たしかに私が注文した「関サバ御膳」がいよいよ私の元に運ばれて来るまで優に三〇分はかかった。

結論から言えばその「関サバ」なんて一切れも乗ってない「関サバ御膳」は私を満足させるものではなかった。二五〇〇円という値段もさる事ながら「関サバ」でもないくせにサバ刺しのボリュームは猫のエサのようだった。ひょっとするとその界隈ではサバ刺しという料理はそのくらいのサイズで上品に客に出すのだという習わしでもあるのかもしれない。でも私は不満だ。サバのような大衆魚は過去に私が食して満足して来たそれのように「いくらでも食ってくれ」と言わんばかりに目分量で大味にカットされて漁師料理並に掟破りな感じで私に提供されるべきだ。

その他の面ではまるで非の打ちどころのない料理ではあった。つまりサバ刺しの鮮度はピチピチで、高速回遊魚らしき詰まり切った身のしっかりとした歯ごたえを感じる。「関サバ」というブランド魚ではないにしてもそれが上質な刺身である事は疑うべくもない。脇を固める小鉢料理も、いかにも和食の料理人が丹精込めて作りあげた風の繊細な味わいで、その辺の胡散臭い寿司屋や、まして街中の食堂で口にできるようなレベルのもんじゃない。だが私はとにかくサバ刺しのボリュームが不満だった。

「関サバ」というのはこの界隈の海域に於いて「一本釣り」によって獲られたサバにのみ与えられる称号だ。巻き網でまとめて獲るとサバ同士が乱暴に接触して質が落ちるので、あえてそのような一見非効率な漁法を用いるらしい。私が「関サバ」を初めて知ったのは、随分と昔に東京のべらぼうに高値の支払いを要求される由緒正しき寿司屋でそいつを握ってもらった時だ。私はそのとき初めてサバを生食したし、初めてサバという大衆魚がそこまで美味なものである事実を学習した。

「豊後サバ」の厳密な定義はよく分からないが、たぶんその付近で獲れれば何でも「豊後サバ」で、そして恐らくそれらは「巻き網で」効率よく獲られたサバだろう。だったら原価は全く違うはずだ。だからこの先も延々と例の貼り紙が店の入り口に貼られているようだったら、それは一見とても正直な素晴らしい店主の姿勢の表れにも見えるが、実は一時期「関サバ」で話題を呼んで客を集めておきながら、その後は数ランク下の料理を客に出して店主が「おいしい商売をしている」という見立てを裏付ける有力な根拠にもなるだろう。「関サバ」がいつだって獲れるとは限らないなら「豊後サバ御膳」という新メニューを適切な値段で加えればいいだけの話だからだ。
活魚料理処 関の瀬/関サバ御膳(2)


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