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盛楼閣/盛岡冷麺(1)

【 Data 】

岩手県盛岡市盛岡駅前通15-5 ワールドインGENプラザ2F [MAP]

TEL:019-654-8752

営業時間:11:00〜02:00

定休日:無 休

最終訪問:2013.08

盛岡駅前に店を構える盛岡冷麺の老舗だ。インターネット上では概ね好評を博している。その盛岡三大名物とすら言われる「盛岡冷麺」という名前の料理は、実際は二〇世紀半ばに北部出身の在日朝鮮人が生まれ故郷の郷土料理をベースにした「冷麺」を提供する店を盛岡で開業した事から始まった料理であり、厳密には盛岡の郷土料理と呼ぶには非常に歴史の浅い存在である事を私は強調しておこう。つまり私は南北を問わず朝鮮半島に存在する二つの政府を心から軽蔑しているが、朝鮮半島発祥の文化それ自体には一定の敬意を払うべきだと考えているという事だ。私は、基本的に中国人が嫌いだが、中華料理を始めとする古き良き先人が編み出した中国古来の文化に対しては敬意を抱いてもいる。それと同じ事だ。

とは言え、私は「冷麺」という料理そのものに魅力を感じてこの店を訪問したわけではなかった。冷麺という料理は一食にするには中途半端だが、焼肉屋で肉を頼むついでに注文するには単価が高過ぎる。この店の冷麺は九〇〇円というではないか。一杯あたり九〇〇円を徴収しておきながら私にそれを納得させるラーメン屋なんて世界中を探しても数えるほどしかないだろう。まぁ仮にその「盛岡冷麺」とやらがしょうもない料理だったとしても、初めて盛岡を訪問した私にとっての「授業料」だと割り切る事にして、私は盛岡の「三大名物」のひとつを賞味するために、この店の入口へと階段を上がった。

店に入るとレジを仕切っていた婦人がすぐに私を出迎え、私は店の奥のテーブル席に案内された。私は席に着くなり「盛岡冷麺」を注文した。辛さを聞かれるので、事前に得ていた情報を参考に「別辛で」と答える。辛味が別皿で運ばれて来るので自分好みの辛さに自分で調節する事が出来る。それから二、三〇分は待たされただろう。私の「盛岡冷麺」がボーイの手によって運ばれて来た。そのタイミングで私は生ビールを注文した。料理に手間暇かけてそうなそれなりの店では、生ビールは料理が到着してから注文するのが私の鉄則だ。この店でも私の鉄則は正しかった。

辛味を全く入れていない状態で、その冷麺のスープを一口啜って私は驚愕した。これまでに味わった事のないような、まろやかでありながら適度にあっさりした、それでいて舌に余韻を引きずるしっかりとした味覚がひんやりと伝わって来る、何とも形容し難い絶妙なスープだ。私は結局、それからこの店以外で「盛岡冷麺」を口にする事がなかったので、その素晴らしいスープはこの店独自の創意工夫によって生み出されたものなのか、「盛岡冷麺」と名がつけばみんな同じように私を唸らせるのかは知らない。だが少なくともこの店の「盛岡冷麺」のスープは、わざわざそこを訪れてまで口にする価値のある絶品だった。

その後、辛味を順次投入して冷麺を味わいつくす。率直に言って辛い料理の苦手な私が、運ばれて来た辛味を全て投入しても、あの素晴らしいスープの風味がそれに負けていないので、その辛味を味わう事が全く私にとって苦痛を伴う作業にならない。麺自体は、まぁプリプリしていて悪くなかったが、想像していた範囲を超える感動を私に与えるものではなかった。やっぱりこの店の「盛岡冷麺」はスープにこそその真髄がある。

麺の上にスイカが乗っている必要性はあまり感じないが、それらを含めてさぞ丹精を込めて行われる盛り付けを含めた一連の手作業の結果、この素晴らしい冷麺は客に提供されているのだろう。そう考えると九〇〇円という値段にも納得せざるを得ない。それにしても今まで私が色んな焼肉屋で口にして来たチープな冷麺は一体何だったのか、と不信感すら抱きながら、私はこの店の冷麺に心から満足して店を出た。
盛楼閣/盛岡冷麺(2)


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