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logo_1star らーめん山頭火 旭川本店
らーめん山頭火 旭川本店/塩ラーメン&香味玉子

【 Data 】

北海道旭川市1条通8丁目348-3 ささきビル1F [MAP]

TEL:0166-25-3401

営業時間:11:00〜22:00

定休日:年中無休

最終訪問:2010.02

ビジネスのために二月の旭川に降り立つと一面が白銀の世界で、商業ビルに設置されている電光掲示板式の温度計が摂氏マイナス一二度を示していた。旭川出身の取引先の男とひと仕事終えた私がその男に、旭川のラーメン屋ってのはどうにも私好みの店がないんだが地元民としてどう思うんだい?と意地の悪い質問をしてみると、お勧めのラーメン店があるのでそこに連れて行く、とその男が言ったので、私はもしその店のラーメンまで私好みでなかったら、このさき旭川でだけは絶対にラーメンを食ってはやらない決意で彼の後を追った。

「山頭火」の名前は、過去に札幌で何度も目にした事があった。たしかすすきのあたりで大仰に目立つ看板を掲げて営業していたような気がするが、観光客相手のいかがわしいラーメン店の匂いがぷんぷん漂っていて私はその店の前を素通りした。「山頭火」が旭川発祥である事を私はそのとき初めて知ったが、それを私に話して聞かせる男はどこか誇らしげですらあった。これでもし不幸にもその店のラーメンが私の口に合わなくて、私が正直にその事を表情に表してしまったら、彼は二度と私とは口も聞いてくれなくなるのではないか、とすら思われた。

夕食にちょうどよい時間帯だったにも関わらず、店内はガラガラだった。男が「塩ラーメン」がお勧めだというので、私はそれに従った。「香味玉子」もつけるとなかなかの値段になった。私の中で、男がとても素敵なラーメン店を紹介した事について私に礼を言わせるためのハードルは限りなく上がった。

ほどなくして運ばれて来たラーメンは、塩ラーメンだというのにスープが白濁していて私は混乱した。おまけに真ん中には梅干しが添えられていて、それは私がかなり忌み嫌う「奇をてらった」タイプのラーメンに思われた。一般論はともかく、私はそのような邪道に走るラーメン店に対して全くよい心象を持たない。男の手前、あまりあからさまにそれを口にするのは憚られたので「へぇ、ちょっと変わったラーメンだねぇ」とだけ言って私は箸をつけた。

その「塩ラーメン」は全く悪くなかった。とんこつラーメンのくせに「塩ラーメン」を名乗るのはどうなのか、とは思ったが、名前が少々不適切でも料理そのものが美味であるなら私はとやかく言わない。しっかりとした味やコクを感じさせながら、あっさりとした口当たりの良さを併せ持つそのクリーミーなスープの不思議な魅力は、ほかでは見かけないこの店ならではのアイディンティティを感じさせた。私がそのラーメン店の質のバロメータとして絶対視するチャーシューも、決して手抜きをしたいい加減なものではなかったので、私は概ね満足感を感じながら「塩ラーメン」を完食した。最後の最後まで、梅干しがちょこんと乗せられている理由はよく分からなかった。

コストパフォーマンスについては並からそれ以下だ。観光客をターゲットに設定されたとしか思われないその値段だけの価値が、私が口にした「塩ラーメン」に本当にあるのかどうかについて、私は言及しない。それでも、その創作性に富んだラーメンはこの店でなければ口に出来ない以上、それだけの対価を払ってでもこの店を支持するファンがいたとしても全くおかしくない。


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