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おくに茶や/冷やしぜんざい(1)

【 Data 】

島根県出雲市大社町杵築南731 [MAP]

TEL:0853-53-2356

営業時間:10:30〜16:00

定休日:不定休

最終訪問:2013.08

出雲大社の巨大な鳥居の目の前にある甘味処だ。出雲という土地は地味に私の大好物である「ぜんざい」発祥の地であるらしい。神とか神話と名の付くものは全て人間の創作物である事を知っている私が冷やかし半分に出雲大社を訪問したとき、別にそこが発祥の地でなくても「ぜんざい」を出す店があると聞けば立ち寄っただろう。発祥の地だなどと大仰にアピールされてしまったなら尚のことだ。

遷宮とかいう要は何十年に一度かの小屋の掃除と補修のために出雲大社は例年よりも観光客で賑わっているらしかった。私がそこを訪問したのがまさに夏休みシーズンだった事も手伝って「神門通り」の店という店は混雑していた。インターネットでリサーチを済ませて当初ターゲットにしていた「ぜんざい屋」の店の前にも行列が出来ていた。四〇度近い猛暑の中でその行列に加わるというのは、私にとって自殺行為であるか、よくて頭の悪い選択だった。私はたまたま通りがかったとき待たずに入れそうだったこの店に飛び込んだ。

店に入ると、手前にある調理場に面したカウンター前には次に客に運ぶべき膳を待ち受ける殺気立った女性の店員たちが並んでいた。そいつをやり過ごして奥に行くとテーブル席がいくつか並んだ割と広々したスペースになっていて、多くの先客たちが寛ぎのひとときを過ごしていた。私は空いた席に座って注文取りに来た女性に「冷やしぜんざい」をオーダーした。

隣の席の田舎者風の団体客に次々と様々な甘味が届けられ、それを口にした団体客が嬉々として感想を述べる様子をとりとめなく観察していると、私の「冷やしぜんざい」が到着した。トレーの上には神楽坂あたりの甘味処で使われてそうな野球のボールほどもない小さなお椀とは違う人道的に真っ当なサイズのお椀と塩コンブの小皿が乗っていた。私は早速、お椀の蓋をパカリと開けた。

お椀の中には、さも窮屈そうに膨らんだ餅がひとつと、さらに何個か餅が小豆汁から顔を出して転がっていた。いいねぇ、なかなか食いごたえのありそうなぜんざいだ。その膨らんだ餅を早速箸で捉えてパクついたとき、膨らみの中には空気しかなかったので私が視覚的に認識したサイズが即ちその餅のサイズではない事が判明したが、それでも膨張前からしてその餅は十分に真っ当なサイズを有する餅だった。小豆の甘みもほどよい程度に抑えられていて実に私好みだ。これで六〇〇円なら何も言う事はない。それに引き換え一口でなくなってしまいそうなぜんざい一杯で一〇〇〇円近い金を取ろうとする神楽坂にあるような店には、いつの日か大国主大神(おおくにぬしのおおかみ)から恐ろしい天罰が下るだろう。

その「冷やしぜんざい」はとても私好みで私は大変満足したが、そこがぜんざい「発祥の地」である事にはあまり深い意味はなかった。つまりそのぜんざいは全国どこに行っても出てきそうなぜんざいと大して代わり映えはしなかった。私が小豆汁の最後の一滴まで啜り尽くして店を出る頃には、この店の前にも長蛇の列が出来あがっていた。
おくに茶や/冷やしぜんざい(2) おくに茶や/店舗外観


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