| Home | Military | Trekking | Gourmet | Life | Contact | | |||
天文館むじゃき | |||
【 Data 】 鹿児島県鹿児島市千日町5-8 [MAP] TEL:099-222-6904 営業時間:11:00〜21:30 ※ 日・祝・夏期 10:00〜 定休日:無 休 ※ 年末年始除く 最終訪問:2013.09 |
|||
開聞岳のハイキングに出かけた私は山頂で一人のハイカーと親しくなった。彼は福岡に住んでいて翌日は仕事だっていうのに帰りは鹿児島市内に立ち寄って夕食をとるから私に付き合えと言う。彼はまず私をざぼんラーメンに連れて行き、それから「本当にオレが行きたいのはこっちなんだ」と言って私にこの店を紹介した。何でも昔この店を訪問したときに「白熊」とかいうカキき氷を食ったらその量が多過ぎてひどい目にあったので、そんな過去を今日こそ清算してしまいたいらしい。
鹿児島には何度も来てるって言うのに彼に教えられるまで私は全く知らなかったが、この「白熊」とかいうカキ氷は何気に「鹿児島名物」として広く世間に認知されているものらしい。そして「白熊」を提供している店は何もこの店だけとは限らないが、この店こそがその「白熊」を開発して世に広めた元祖であるらしい。まぁそんな肩書きはどうだっていい。要は美味いか不味いか、それだけだ。 店の前には記念撮影用と思しきかわいらしい白熊のオブジェが置いてあって、そこに私を案内したハイカーは母親に写真を撮ってもらっている見知らぬ小さな女の子に「オレにも撮らせろ」と言ってその女の子ごとオブジェを撮影した。それから「もういいですよ」と言って、彼の撮影が終わるのを待っていた私を誘い店内へと入った。 適当なテーブル席に着いてメニューを手に取ると「白熊」には「ベビーサイズ」というのがあると書いてあるので、ざぼんラーメンのスープまで一滴残らず飲み干し終えたばかりの私は「ベビーサイズを注文する事にするよ」と彼に言った。すると彼は「お前はオカマか?」とでも言わんばかりの表情で静かに私を見据えると「それはダメだ」と言った。私は彼に付きあって標準サイズの「白熊」を注文させられる羽目になった。 店員が持って来た標準サイズの「白熊」は、なるほどたしかに決して小さくない器に山のように氷が盛られ、全く私はとんでもない男と知り合いになったもんだと自分の運命を嘆かわしくすら思った。だが私は基本的にミルク味のカキ氷ってのは嫌いじゃない。私は彼と主に九州地方の登山事情に関する尽きない会話を楽しみながら、あっと言う間にその標準サイズの「白熊」をペロリと完食した。 「白熊」の語源とされる白いカキ氷本体にまぶされた様々なフルーツは初期の精神を既に失っていて、どう好意的に見てもそれらの織りなす模様は熊は愚かあらゆる生命体の顔にすら見えなかったが、カキ氷本体のそれと相混じってその食感に適度なアクセントをもたらし、その標準サイズのカキ氷を単調なデザートに堕落せしめないために貴重な貢献をしていた。ハイキングで疲れ切った身体にそのカキ氷本体の甘いミルク味のもたらした至福の感覚にいたっては、そいつを言葉でどう表現すればいいか、私には想像すら及ばない。 ハイカーの男もいつの間にか「白熊」を完食して積年の課題を果たしたかのようだった。私は初めてその店を訪問したので、最もスタンダードな「白熊」をチョイスする事にしたが、「白熊」にはチョコレートだの「コーヒー」だの「金時」だのと私の目を引く多彩なバリエーションが展開されていて、私はそれらをまで賞味できずに鹿児島を去らなければならない事が心底悔やまれた。何だったらざぼんラーメンには立ち寄らなくてよかったから始めからこっちに連れて来てくれればよかったのに、と思ったくらいだ。私は次に鹿児島を訪問したときにやり終えるべき新たな宿題を突きつけられて、翌朝鹿児島を後にした。 |
|||
−プッシー大尉烈伝−[美食編]に戻る >>> |
|||
Copyright (C)2011 Lt.Pussy All Rights Reserved.
|
|||