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舞 桜/松茸一本焼き(1)

【 Data 】

東京都中央区銀座1-5-10 銀座ファーストファイブビル6F [MAP]

TEL:03-6675-9496

営業時間:[月〜木] 11:30〜14:00 [月〜木・土] 17:00〜23:30 [金・祝前] 17:00〜02:00

定休日:日曜・祝日

最終訪問:2011.10

私が外国へ旅立つ知人を送り出すためのささやかな会を開くのに相応しい店を探していて見つけた店だ。「王様」の呼称すら与えられるあのありがたい松茸を丸焼きにしてまるまる一本口にするなんて酔狂は、日本以外の国なんかに行っちまったら二度と経験できないだろう?

私が来店どころか電話をかけたのすら初めてだったにも関わらず、対応はとても親切だった。私はもともと松茸料理のフルコースでの予約を検討していたが、会の参加者の一人がこの店の提供している軍鶏鍋に興味を示したので、私は実に厚かましいとは思いながら、(参加者の予算の都合もあって)軍鶏鍋のコースに松茸の丸焼きだけつけてくれないか?と電話で尋ねた(もちろん松茸は別料金だ)。応対に出ていた女性は自分では判断できないと言って一度電話を切り、それから然るべき上層部の人間と相談をしたうえで「OK」の返事をするために私に電話をかけて来てくれた。私は幹事としての面目を保った。

店は銀座の雑居ビルにあって、提供している料理の内容の割には入りやすい雰囲気だった。店構えばかり高級感を醸し出して客を威圧しておきながら大した料理の出て来ないクソのような店とは大違いだ。予約をしている事を告げると、私たちは飾り気のない個室に通された。

まずはまちの刺身が供され、何品かの料理がそれに続いた後で、七輪がテーブルに置かれた。それから萩原流行似の料理長がお出ましになり、本日の松茸の出所や当節の気象状況などの簡単な説明が為された後で、いよいよ七輪の網の上にジャンボ松茸二本がくべられた。

私たちの視線が一様に網の上の松茸に注がれている間も、料理長殿の、現在の焼き加減や、それが完成するまでのプロセスについての丁寧な解説は続いた。料理長殿はとても正直だったので、焼いている途中の松茸を素手でひっくり返すという作業がどれほど苦痛を伴うものであるかについても正直に告白し、事実それをひっくり返す瞬間には「くそったれ!」とでも言いたげな顔をした。そしていよいよ料理長殿の巧みな指さばきにより、見事な「松茸一本焼き」が私たちの目の前で完成した。

黒こげの塊と化してしまったかのように見えた松茸だったが、料理長殿が適切なサイズに分割してくれると(もちろん素手で!)中は白いままだった。料理長殿は私たちがひと口めを口にしてそれぞれ述べる感想に概ね満足した表情を浮かべたうえで、かぼすを絞って汁をかけても美味いと言い残して去って行った。

松茸は香りを楽しむ食材と言われるが、それは本当にその通りで、口に入れて二回か三回も咀嚼すると、松茸は口の中に仄かな芳香だけを残して消えてしまった。私たちはまたたく間に松茸を完食してしまい、夢のようなひとときはあっと言う間に終わってしまった。もちろん松茸を前にして少々印象がかすんでしまったとは言え、軍鶏鍋やほかに提供された一品料理もなかなか美味だった事は付け加えておかなければならないだろう。

この店を公正に評価する事は私にとってとても困難を伴う作業だ。ひとつの考え方として、決して「気軽に」訪問できる価格帯とはお世辞にも言えないながら、本来高級店でしか口にする事が出来ないような食材を、大衆店のスタイルの下に、可能な限り安価に提供しようという姿勢が伺える点に、私は好感を抱いている。料理長自らがわざわざ客席に赴く事を一例として、接客も概ね丁寧だ。
舞 桜/松茸一本焼き(2) 舞 桜/甲州軍鶏極味コースより(1) 舞 桜/甲州軍鶏極味コースより(2)


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