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黒 亭/大盛ラーメン(1)

【 Data 】

熊本県熊本市西区二本木2-1-23 [MAP]

TEL:096-352-1648

営業時間:10:30〜20:30

定休日:第1・3木曜(祝日の場合は営業)

最終訪問:2014.08

五〇年を超える歴史を誇る熊本の老舗ラーメン店だ。私がこの店の存在を知ったのは、二〇年近く前に何かの所用で熊本を訪問した際に熊本空港の土産物屋に「黒亭」と銘打った豚骨ラーメンが置いてあり、馬刺しと一緒にそいつを買い求めて自宅で試食してみたところ、何とも言えず美味だった事による。

熊本駅から徒歩圏内に位置している事もあって、数年前にビジネスで熊本に立ち寄り熊本駅近くのホテルに投宿した際に私はこの店を訪問する計画を立てたが、あいにくホテルに到着する時刻が遅すぎたせいで、営業時間内にそこを訪問する望みは絶たれてしまった。

満を持して私がようやくこの店を訪れる機会に恵まれたのは、それから実に五年後の事だった。私は熊本観光ついでにこの店を訪問できるよう、ある晩の宿泊先を熊本駅近くのホテルに設定した。その日は定休日とされる第一木曜日にあたったが、電話をしてみると果たして何事もなかったかのように店は営業していた。私は歴史あるラーメンと共にビールを飲みたいばかりに、あいにくの雨の中を二〇分ほど歩いて店へと向かった。

店の前にはいつだって行列が出来ているという前評判とは裏腹に、ガラリと戸を開けるとちょうど食事を終えたばかりの垢抜けないホワイトカラー層の労働者たちが席を立つところで、私と同行者二人は殆ど待たされる事なく席に着いた。私は注文を取り来た訛りのきついアルバイト少年に、最もベーシックな「大盛ラーメン」と、それから「ビール(中)」を注文した。

まず五六〇円の「ビール(中)」が運ばれて来たのだが、それはジョッキでもグラスでもなくプラスチック製の使い捨てコップに注がれて運ばれて来たので、私は興ざめした。たしかにその方が何かと店側にとっては都合がいいのかもしれないが、仮にも地方特産の土産物屋の陳列棚にその商品が並ぶほどの有名店ともあろうものが、そこまでしてコストをケチるというのはその立場にまるで相応しくないやり方じゃないか。

続いて運ばれて来た私の「大盛ラーメン」は、いかにも熊本の豚骨ラーメンといった趣の美しい佇まいをした、その見た目からして食欲をそそらずにはおかない一品だったが、焦がしニンニクの散りばめられた美しい色合いのスープを一口啜った私は、見た目に反して物足りないその風味に困惑した。たしかに見た目は熊本ラーメンだが、よく言えば品が良すぎて、まぁ率直に言ってしまえばスープにまるでコクを感じない。

もちろんそうは言っても熊本ラーメンの基本は体現しているのだから決して不味いとは思わない。東京にこれと全く同じラーメンを提供する店があれば、私は労を惜しまず通い詰めるかもしれない。だがあいにく、本場・熊本でそいつを口にした私を心から満足させるには力不足というほかなかった。半世紀を超える歴史を誇る名店に五年越しの宿願を果たしてようやく訪問する事に成功した私の期待は、少しだけ裏切られた。

こうなるといつもなら大して気にならないような「粗」が妙に気になり始めてしまう。チャーシューは何だかパサついてるし、あまり上手に刻まれてない刻みネギの変に歯にまとわりつくような食感は鼻につくし、そう言えば接客はともかく厨房の中にいる従業員も全員があまりにも若々し過ぎて、全部アルバイトに見えてしまう、といった調子だ。

そして大盛とは言えシンプルなラーメンに八八〇円という価格設定が為されていることも、私をしてこの店に一種の「凡庸さ」を感じさせるには十分な事実だった。
黒 亭/味千ラーメン・大盛(2) 黒 亭/店舗外観


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