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一番軒/塩ラーメン・大盛

【 Data 】

鳥取県米子市角盤町4-82 [MAP]

TEL:0859-34-1147

営業時間:19:00〜05:00

定休日:水曜日

最終訪問:2013.08

鳥取、島根観光の拠点として皆生温泉に宿をとり、そこに三泊した私が夕食のために三日続けて通ったラーメン屋だ。皆生温泉界隈にはあまり目を引く飲食店がないので角盤町あたりまで繰り出す事にしたわけだが、それだと車で移動する事になるので飲み屋はダメだ。一日目の夜、私はまさか三日続けて通う羽目になるとはつゆ知らず、この店を訪問した。

呑み屋街のはずれにあるその深夜営業のラーメン屋の周囲はほぼ真っ暗で、この店の黄色いネオンだけが怪しげな光を放っていた。引き戸を開けると故・市川團十郎(一九四六−二〇一三)似の店主と思しき男が愛想よく迎えてくれた。基本的に同じ年のころの女性と二人で店は運営されていて、その團十郎が調理場含めて完全に店を仕切っているのだが、たまにもっとエラそうな小柄な男が現れて團十郎に何やら指図をしていたようにも見えたので、実は團十郎はただの従業員だったかもしれない。

この店の「大盛」がどれほどのものかも知らずに私は塩ラーメンの「大盛」を注文した。ほかに客は数えるほどしかおらず、團十郎が早速仕事にとりかかってから五分もしないうちに私の塩ラーメンはカウンター席に陣取る私に差し出された。

それは何と言うか、とにかくほのぼのとした一種の懐かしさを感じさせる「塩ラーメン」だった。びっくりして飛び上がるほど「美味い!」という事ではなくて、少しだけ眉を動かしてから「ふむ、こいつはなかなか美味いね」と呟きながら頂けるタイプだ。モヤシやネギが惜しみなくどっさり入れられている点もノスタルジックな雰囲気を醸し出しているし、ホロホロしたチャーシューにはしっかりと味が沁み渡り、それを作った者の丁寧な仕事を印象づけた。「大盛」は結構なボリュームだったが、私はその安心感すら感じさせる「塩ラーメン」を完食し、スープも一滴たりとて残さず飲み干した。そして腹をちゃぷちゃぷ言わせながら支払を済ませて店を出た。

この素晴らしいラーメン店が深夜営業をしている事の利点は計り知れなかった。二日目、伯耆大山でのハイキングを終えて旅館に戻り、洗濯その他の後始末に追われるうちに遅い時間になってしまった私は迷う事なくこの店を再訪した。二日目は並盛りの「ラーメン」と半チャーハンに挑戦だ。相変わらず團十郎の仕事はてきぱきと素早く、席に着いて間もなく醤油ベースの「ラーメン」は提供された。こちらにもモヤシとネギがどっさり入れられていてホロホロチャーシューも健在だ。半チャーハンは半人前とは思えないボリュームだったが、こちらも奇をてらう事のないスタンダードな安心感溢れるチャーハンだった。私は二日続けて膨れた腹をさすりながら店を出た。

三日目はさすがに学習して並盛りの「みそラーメン」だけを注文した。やはりモヤシやネギはどっさりでチャーシューも素晴らしい。三種類のラーメンの中では塩ラーメンが最も私好みだったが、醤油も甲乙つけがたかった。みそは札幌界隈のそれに比べてややパンチが弱い。もちろんその事は、この店の「みそラーメン」が不味い、という事を全く意味しない。特筆すべきはその価格設定で、並盛り五〇〇円(「みそ」のみ六〇〇円)というのは、そのラーメンの質を考慮すると心から満足出来るものだ。

さすがに三日続けて訪問した珍客に團十郎も心を許してくれたのか、その日は團十郎も気さくに話しかけて来てくれた。私たちは鳥取界隈の気候や名産品、出雲大社の伝統行事にいたるまで様々な事について話し込み、最後に私は、もう東京に帰らないといけないので明日も訪問出来ない事がとても残念だ、と言い残し、團十郎やご婦人に私なりの最大の敬意を表してからその場を後にした。
一番軒/ラーメン・並 一番軒/みそラーメン・並 一番軒/半チャン title=


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