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logo_no_star 博多大砲ラーメン 本店
博多大砲ラーメン 本店/チャーシューメン

【 Data 】

福岡県福岡市中央区春吉3-12-37 [MAP]

TEL:

営業時間:17:30〜翌5:00

定休日:日曜日(連休の場合は最終日)

最終訪問:2007.06

博多で落ち合った知人が、中洲の方に「大砲ラーメン」というとんでもなく美味いラーメン屋がある、というので、私は彼についていくことにした。博多駅近辺のホテルから延々と歩かされて、私たちは行き交う人々で混みあう「国体道路」まで辿り着いた。果たして遠目に「大砲ラーメン」と書かれたネオンが見えて来た。延々と歩かされて明らかに不機嫌な私に何も言わせまいとするかのように、知人は満面の笑顔で「やっと着きました」というような意味の事を言った。

店に着いて中を覗くと、老夫婦が二人で店を切り盛りしていた。壁も扉もなく表通りに対して何もかもが剥き出しの造りをした狭苦しい店内の客席はカウンター席のみで構成されていて、しかも満席だった。当然、先客の食事が終わるまで店の外で待っていればいいのか、と思ったら、オーナー夫人から、人々が行き交う歩道に、しかも車道との境界線すれすれに置かれたビールケースを逆さまにしたやつに座ってラーメンを食ってくれ、という衝撃的な内容の提案がなされた。客を待たせるのは悪いと考えたのかもしれなかったが、いったい誰が、そのオーナー夫人は店の回転率を上げたいがために右手に人が、左手に車が行き交うような落ち着かない場所で客が食事をしなければならない目に合わせようとしたのではない、と言い切れるだろうか。

私が、「おい、ばあさん、あんなとこでラーメン食えって、お前あたまおかしいのかい?」とすごむ前に知人がいそいそとビールケースに着席してしまったので、私はオーナー夫人に意見を表明する機会を失った。私は行き交う人々で混みあう歩道のとんでもなく目立つ場所でビールケースをひっくり返して座っている珍奇な男ふたりを指をさして笑ったりするような奴が現れないように祈るしかなかった。

ほどなくして先客がうまい具合に二人、食事を終えて店を出たので、私はオーナー夫人に断るまでもなく店内に移動して空いた席に座りなおした。オーナー夫人は何か言いたげだったが(そう言えば後ろに何人か待っていた)、私は夫人が何か言いだす前に水を要求した。とにかく私はそのとき喉がからからだった。六月の蒸し暑い博多の道を延々と歩いてやって来たありがたいお客に水を出す事も忘れていたオーナー夫人はグラスを手に取り、・・・私は目を疑ったんだが、厨房の水道から直に水を汲んで私たちに差し出した。そのコップは氷も入っていないのに表面にうっすらと水滴がついていた。水が冷たいからでもグラスが冷えていたからでもない。すぐそばで茹でていたラーメンの湯気のせいだ。私はその時飲まされた水のぬるさを一生忘れないだろう。

別に私は一連の出来事を通して腹を立てる事はなかった。何というか、面白い店だと思った。もうこれ以上、客に来てもらいたくなくてわざとそうしてるのか?とすら思うくらい、接客のセオリーを完全に無視した店だった。肝心なラーメンのお味は・・・ その日あまりに強烈な出来事が起こり過ぎたせいで、私はこの店のラーメンがどんなラーメンだったか全く覚えていない。まぁ覚えてないのだから、少なくとも知人が言うような「とんでもなく美味い」ラーメンではなかったのだろう。

後日、東京で再会した知人が「彼女にもう一度確認したんですが・・・」と切り出した。聞けば「大砲ラーメン」を勧めたのは知人の彼女で、しかも彼女が勧めたのは「久留米大砲」という全く別のラーメン屋だった。私はもちろん人目も憚らず知人にあらん限りの怒声を浴びせて罵った。


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