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ふじたや/あなごめし(1)

【 Data 】

広島県廿日市市宮島町125-2 [MAP]

TEL:03-6225-2347

営業時間:11:00〜17:00

定休日:不定休

最終訪問:2009.10

率直に言って、広島の名物と言えば牡蠣かお好み焼きくらいしか思い浮かべることのなかった私が、瀬戸内海の漁師たちの間で先祖代々受け継がれて来たとされる「あなご飯」の存在を知ったのは、宮島観光のついでに何を昼食に頂こうかと思案しながらインターネットで調べ物をしていた時だった。宮島口の方に有名店があるらしかったが、スケジュールプランを立てている時点で、そこで昼食というのは少々早すぎた。私は、船に乗って宮島に渡った後に、インターネット上でも比較的評判の高いこの店で「あなご飯」を賞味する事にした。

店に着いたのは一時前だったが、すんなり入店出来た。前評判では行列待ちの覚悟も必要な人気店とあったが、全くありがたい。店に入ると、三組ほどの先客がいた。どの客も観光客に見えたが、とにかく店の雰囲気が静かなので、全員が、おそらく彼らがそうしていたいかどうかには関わりなく静かにしていた。それほど広くはない店内の奥はガラス張りになっていて、庭が丸見えだった。私は案内されて、そのガラス際にある木製の丸いテーブルを囲むように置かれた木製の椅子に腰を下ろした。随分とお洒落なテーブルと椅子だったので、伝統的な漁師料理を提供する店だってのに、私は何だかコーヒーでも飲みに来たような気分になった。

少し待ってから、私の注文した「あなごめし」が私の面前に置かれた。その時点では丼に蓋がしてあるので、いざ私に提供された「あなごめし」がどれほど豪勢なものであるのかを知る事は出来なかった。この店を訪ねる誰もが、その「あなごめし」の正体を覆い隠す丼の蓋を開けるその瞬間にこそ、ちょっとした緊張と期待感を感じずにはいられないだろう。私はそのときまで「あなご飯」の実物を目にした事はなかったが、その豊かな想像力で、例えば今までに私に提供された中で最も豪華だった鰻の丼なんかを想起しながら、おもむろに蓋を開けた。何と言うか「あなごめし」は、まぁ見た目は普通だった。

ガシガシと丼飯を箸で口の中に掻き込みたい衝動を抑え、店の雰囲気に合わせて可能な限り行儀よく「あなごめし」を頂きながら、そもそも形は同じでも鰻と穴子はまったく異質なものなのだという当り前の事に思いを馳せなかった自分を率直に反省した。つまり、濃厚な味わいでプヨプヨな歯ごたえのボリューミーな蒲焼きが乗せられた丼飯を思い浮かべながら「あなごめし」に接するというのは適切な態度ではない。繊細に蒸しあげられて丼一面に敷き詰められた薄味の穴子の真髄は、そのような姿勢とは全く違った形で向き合うのが正しい。そうでなければ、宮島くんだりまでのこのこ出かけて行って、何だか水っぽい単調な具の乗った丼飯を食ったっけ、という思いしか残らない。

「あなごめし」の二三〇〇円という価格が高いと感じるか安いと感じるかについて、私はコメントをする立場にない。地場産の穴子の提供に拘っているらしいので、そうであれば全く納得出来る範囲の価格設定だと私は思う。その中に含まれるはまぐりの吸い物は私好みだった。漬物もまぁまぁだ。
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