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秋田長屋酒場 秋田駅前店/ハタハタの一夜干し

【 Data 】

秋田県秋田市中通4-16-17 [MAP]

TEL:018-837-0505

営業時間:17:00〜24:00

定休日:無 休

最終訪問:2013.08

秋田の郷土料理と地酒は全て飲み食いできると豪語する、秋田駅前で営業しているチェーン居酒屋だ。チェーン居酒屋と言っても全国の駅前に展開して深夜まで店を開けて若者を過労死に追いやりながらどんな原料から作られたのかも分からないような胡散臭い冷凍食品の対価に客から金を取ってるようなC級居酒屋とは趣の異なる、東北地方を中心に地産地消をテーマに掲げてその地域の伝統を守る、というコンセプトの元に少数の店舗を展開している正当派だ。

秋田新幹線には自由席がないという衝撃の事実を知らずに、デッキに乗せられて運ばれるというありし日の黒人労働者のような扱いを受けてようやく秋田に着いた私は、さっさとビジネスを終わらせてホテルに戻るとこの店に予約の電話を入れた。そしてホテルを出ると突然大雨が降り出したので私は雨宿りがてら、少し遅れる事を告げるためにまた店に電話をかけなければならなかった。

この店が人気店である事実は事前のリサーチで把握されていた。私が危惧したとおり、私が入店した後ですぐに入って来た団体は満席を理由に追い返されていた。私が玄関にいた店員に丁重なもてなしを受けながらカウンター席に案内されていると、別の店員が私を歓迎する事の証として太鼓を鳴らした。だがその鳴らし方は少々事務的でもあった。

沖縄を始めて訪問した観光客が郷土料理屋に入店したとき、そのメニューに書かれた暗号のような料理名に困惑するように、秋田の郷土料理もその名前だけではそれがどんな料理なのか、人々には全く想像がつかないだろう。だがそんなのは事前に全て予習を済ませた上でこの店に臨んだ私には関わりのない事だった。私は、少しばかり燻した沢庵とでも言うべき「いぶりがっこ」、キャビアのような食感をした草の果実である「とんぶり」、魚の頭骨を巣に浸して柔らかくした「氷頭(ひず)」といった私の生活圏ではなかなかお目にかかれない珍品を選りすぐって注文し、そしてビールを片手にそれらの料理に舌鼓を打った。

印象深かったのはハタハタの一夜干しを炙ったやつで、ししゃものように頭からむしゃむしゃと頂くのだがこいつは美味だった。ギバサというヒジキの仲間にあたる海藻は、小鉢の中で納豆をそうするようにかき混ぜればかき混ぜるほど粘り気が増す。そいつの喉越しは何者にも例え難い素晴らしいものだった。ご当地では「あみこ茸」と呼ばれるアミタケの煮付けは想像以上に塩辛かったが、その食感と相まってビールの肴には打ってつけだった。

最後にきりたんぽの「味噌田楽」で〆た私に、カウンターの中で多少の演出を感じさせる訛り言葉を駆使しながら接客を担当していた婦人の店員がサービスとして味噌汁を差し出した。すぐ目の前にいるのだから手渡しでよかったのだが、それはわざわざ巨大なしゃもじのような木片の上に置かれた状態で差し出された。私は、この界隈の家々では夕食ごとにこうやって味噌汁を家族に出しているのだろう、と黙ってそれを受け取った。

支払は総額で六〇〇〇円ほどだった。それは私が欲張ってあれもこれもと注文した結果の金額としてはそう高いものではなかっただろう。何は是非注文しなければならない料理で、何は一度経験したならもう頼まなくてもいい料理なのかを学習した私が次にこの店を訪問したならば、私の支払いが四〇〇〇円を超える事はないだろう。
秋田長屋酒場 秋田駅前店/いぶりがっこ 秋田長屋酒場 秋田駅前店/とんぶり 秋田長屋酒場 秋田駅前店/ギバサ


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